第92話

 ロイ達がまだ盆栽大会をしていた頃──


 わたくし、茨ヶ丘に引っ越して色々考えたのですが、この街に足りないもの。それはズバリ、海の幸ですわ!


 特に新鮮な魚介をふんだんに使った海鮮丼なんてどうでしょう! 市民の皆さんにも調査してみましょう。


「マオさん、マオさん!!!」

「どうした、アンナちゃん。そんな急に押しかけて来て」


 マオさんというのは訳あって元傭兵で街で保護している人だ。異国からの移民として、非常に気が合うのだ。


「魚って食べたこと有りますか?」


「ああ、川魚なら小さい頃、国で食べたぞ」


「では、美味しかったですか!?」


「そうだな……不味くは無かったかな」


「では、美味しいのは食べて無いのですね」


「まあ、そうだな」


「やはり、これは一刻を争う事態ですわ!それでは!失礼いたしました!」


「……一体全体、どうしたんだ」


 また別の友人にも聞いてみる。


「彩さん、彩さん!!」


「あら、アンナちゃん。御機嫌よう」


 彩さん、元軍人で若々しい。動作も綺麗だ。


「これは彩さん!御機嫌よう。彩さんは海の魚って頂いた事ありますの?」


「ああ、アンナちゃんは海洋資源制限条約が発足したあとの生まれだったね。勿論あるよ」


「おお!どんな感じでしたの?」


「とても美味しかったわ。おじいさんとグアムで釣りをした時に美味しく頂いたわね」


 なるほど。やはり美味しいのですね。わたくしも食べてみたいですわ。


「なるほどですわ。わたくし、この街に海鮮を流通させようと思いましたの!」


「ははは、それは難しいんじゃないかなー。NOEsノーイスが監視してるし、船の用意もしなきゃいけないしね」


 うぅ。それもそうか。今の海は海洋保護団体が管理しているのだ。下手に手を出せば国際問題だ。


「あ!そうだ!呉に知り合いがいるから武装船の手配は出来るわね」


「じゃあ、合法化するだけですね!」


「じゃあ、知り合いの学者に頼んで、法的解釈を曲解して何とかできないか頼んでみるよ」


「良いんですか!?」


「まあ、私もお魚好きだしね。市長にも話してみるよ」


 実現可能性が見えて来たので、一度お家に帰ります!それにしても、彩さん良い人ですね!お母さんみたいで安心感しますわ!

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