第53話 

 春が来た。八尾山の雪は解け始め、土も柔らかな黒に染まりつつある。いよいよ本格的な稲作が始まるのだ。農地改造で新しくなった田んぼは、水が張られていてとても綺麗だ。苗代も出来上がっている。


 そう言えば、「日陰」はフェスティバルの際に海外のリッチなお酒好きに目を付けられ、海外で流行バズっているらしい。なんでも日本に憧れる外国人が買っているそうだ。市長と大吉はウハウハと言っていた。


 今回は田植え機を使う予定だ。もちろん、人力で行う所も出てくるだろうが、それはそれでいいだろう。


「ロイさん。今日はよろしくお願いします」


 今日の助っ人は雫である。田植機を操縦するのを志願していたので操作してもらうことにしたのだ。AIによる補助で殆どアクセルを踏むだけで出来るので大丈夫だろう。田植機に雫が乗る。

 音を立てながら、苗を撒くためのリールを回す。


「やっぱり!凄いですね!」

「えぇ、全く凄いですよね」


 機械が自動運転をしている。二人は大声で会話する。


「いやーそれにしても、稲作は重労働ですね」

「まあ先進技術を使っているので昔ほどではないですがね」


 ロイがそう言う。まあそうなのかもしれないが。やはり楽なものは無いのだろうか?雫は少し考える。

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