第9話

私の周りには無数の欠片がキラキラと輝いている。


ねえ、おじさん。今なら言えるよ。私、お母さんに愛されていたよ。ってかさ、親がいないわけないじゃん。どうやって生まれるのよ。


私ね、路上で歌い始めたんだ。そしたら高校生に絡まれてさ。もう最悪。お金なんてまだ全然入れてもらってないよ。楽しそうでやったわけじゃない。なんでだろう、って私もよくわかってなかった。私きっとお母さんに見つけてほしかったんだ。会いたくて仕方なかったから。思い出せなくても、記憶にあったんだろうね。声できっと、お母さんは気づくって。


生きてるうちに会いたかったよ。


おかしいの。私、生きてるほとんどの時間、どこか死にたかった。だってさ、普通に大変じゃん。施設でて高卒で働くの。職種とか絞られてるしさ。どういう未来になるか、ある程度卒業していった人みればわかるし。


なんで生きなきゃいけないんだろうって思ってた。楽しいことなんて一つもないって。理不尽なことばかりで、ただただ現実を耐えないといけないんだって。


あんなに辛かったはずなのに、私の周りには今こんなに欠片がある。


この欠片、なんだろうと思ったら幸せの欠片だった。ほとんどすごく些細なの。プリン食べてたり、ただ美香と帰っていたり、歌を歌っていたり、ただ名前を呼ばれただけなんて欠片もある。


そんなんでよかったんだよ、幸せなんて。それだけでもこんなに光に包まれたんだよ。


バカだな、私。死んで当たり前なんて。もっと美香と話したかった。あの気持ちが大きくなったら透に告白とかしてみたかった。お母さんをいつか探しにいきたかった。


生きたかった。まだ生きていたかった。生まれたことに感謝できるところまで生きていたかった!!!



スクリーンに文字が出てきた。


「貴方はもう一度、生きたいですか?」


それは生まれ変わりたいかを問う質問なのだと、魂でわかった。


生まれ変わるんじゃなくて生き返らせてほしい。でもきっと、それは許されないのだろう。




スクリーンの奥の光に、私はこの時になってようやく気付いた。あの大きい大きい光。


あれは地球だ。


ラッキー、宇宙飛行士にならなくてもこんな特等席で地球を見られるんだ。なんてね。それでも、ああ、なんて綺麗で、なんて大きいんだろう。何億人の人があそこで生まれて死んでいったんだろう。


胸の奥から尊さが溢れていく。美香、ずっと私の側にいてくれてありがとう。私の代わりに怒ってくれて、気にかけてくれて、いつも抱きしめさせてくれて本当にありがとう。透、私に沢山の音楽とギターと恋を教えてくれてありがとう。


お母さん、私を産んでくれて、愛してくれて本当にありがとう。


またあなた達に会いたい。お互い生まれ変わりの後でいい。もう一度会えるなら。会って今度こそありがとうを言えるのならば。




はい、生まれ変わります。

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