第六部/第三章 もうひとつのヒーローパーティ?

第427話 〝豹威館〟攻防戦開始

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 西暦二〇X二年八月下旬。

 鉛色髪の巨漢青年、石貫いしぬき満勒みろく率いる冒険者パーティ〝G・Cグレート・カオティックH・O・ヒーローズ・オリジン〟は、最大戦力であるビキニアーマーを着た女傑セグンダこそ欠いていたものの、一〇〇台の蒸気バイク部隊と、大型バスに似た移動基地ホバーベースを動員。

 異界迷宮カクリヨの第八階層〝残火ざんかの洞窟〟に建てられた三つの城の一つ、南の支城、〝禁虎館きんこやかた〟から、北の支城、〝豹威館ひょういやかた〟に向かって総攻撃を仕掛けた。


「今日の愛機も絶好調だぜ!」

「「いやっふうううう!!」」


 満勒達がまたがった蒸気バイク以外は共通の装備もなく、思い思いの格好で暴走族のように走り回るの攻勢に対し――。


「冒険者組合のイヌどもが攻めてきたぞー」

「恐れるな。奴らなんて、元は我らに買われた奴隷のガキじゃないか!」

「そうだ。わ、我々には難攻不落の三つの陣地がある!」


 六辻ろくつじ剛浚ごうしゅんの親衛隊である身分を示す、柿色のユニフォームと、翼が描かれた腕章を巻いた元勇者パーティ〝SAINTSセインツ〟の団員は、〝豹威館〟の外周に作られた三つの防衛陣地、すなわち〝弓兵地獄〟、〝要塞地獄〟、〝堕天使だてんしの楽園〟に籠って迎撃した――。


「ヒャハっ。最初の陣地は弓兵地獄だったか? 〝禁虎館〟を落とした時と同じレースコースなら楽勝だぜ」


 満勒はオルガンパイプに似た排気口から煙をたなびかせ、驚異的なドライビングテクニックで蒸気バイクの車体を小刻みにジャンプさせながら、見張り台から射られた矢を回避する。


「うわああっ。信じられないドライビングテクニックだ!?」

「まるでウサギじゃないかあ? 矢が、矢が当たらないよお」

「怯えるな。我らには同盟した七罪家と〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟が贈ってくれた新兵器がある」

「これこそ防衛の要。新生弓兵地獄の切り札、〝式鬼・野鉄炮のてっぽう〟よ!」


 満勒達の前に立ちはだかったのは、五〇体に及ぶカンガルーのように二足歩行するイタチめいた格好のモンスターだった。


「なんだあれ?」

「「BABAN!」」


 野鉄炮と呼ばれたカンガルーに似た獣達がいななくや否や、獣の口から無骨な銃身が飛び出して、弾丸が放たれた。


「……た、たしか野鉄炮とは、口からコウモリを吐く、タヌキやムササビに似た妖怪の名前だったか。あの異界迷宮カクリヨのモンスターは、それにちなんで名付けられたのだな。サイボーグ技術を持つ元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟でもないのに銃を使うとは驚きだ」


 出雲桃太の親友、くれ陸喜りくきこと黒騎士は、元々銃に慣れ親しんでいたこともあり、敵の新戦力登場も平然と受け止めた。


「「銃って、あの銃? ひいいい」」


 されど、銃弾が荒地に穴を空けるのをみた他のバイク隊員達は、揃って恐慌状態に陥ってしまう。


「う、撃つな。撃たないでくれ」

「「あ、あああっ」」


 中には、転倒するものや、下車して泣き出す者まで現れるほどだ。


「なんだ、いったいどうした? 満勒大将、私が前に出るから皆を一度なだめてくれ。満勒……?」

「あ、銃……」


 黒騎士は、自軍の大将を見て言葉が詰まった。

 たとえ想い人の祖平そひら遠亜とあにストーカー扱いされようがひるまなかった満勒までもが、銃を見て我を失っていたからだ。


「「そうか、そうか。売られた先で銃に撃たれたか?」」

「「ギャハハ、撃てえ、奴隷のガキどもを撃ち殺せええ」」

「「お前達のような出来損ないのモルモットは、俺達エリートに使われるのが宿命なんだよ」」


――――――――――

あとがき

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