第370話 攻勢

370


「出雲さん。先ほどの戦いで冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の実力を知りました。思うように戦ってください。我々ヤタガラス隊が助力します」

「ありがとう、葉桜さん。吸血竜ドラゴンヴァンプは、このまま倒す!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたと、彼の級友である焔学園ほむらがくえん二年一組の研修生。そして、葉桜はざくら千隼ちはやが指揮する鴉天狗達は、共同戦線を展開。

 全長五メートルに達する怪物、吸血竜ドラゴンヴァンプにとりこまれ、自らの部下を喰らおうと暴れる七罪ななつみ業夢ぎょうむを止めようと奮戦する。


「サメッ、水弾と水柱を受けるサメエっ」


 先陣をきったのは修道服に似たサメの着ぐるみをかぶる銀髪ぎんぱつ碧眼へきがんの少女、建速たけはや紗雨さあめだ。

 彼女は、空中から水の弾丸を、地面から水の杭を生み出して吸血竜に波状攻撃をかけ、弾幕で高速移動を阻止した。


「ナイスアシストだよ、紗雨ちゃん。アタシも〝砂丘デューン〟を使う。戦闘機能選択、モード〝剣牙ソードファング〟!」


 次に、サイドポニーの目立つ少女、やなぎ心紺こんが、砂状の自立兵装を変化させた刃を竜の翼にぶつけて動きを止め――。


「さらに鬼術・長巻改ながまきかいと、鉄線の出番」


 続いて瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平そひら遠亜とあが白いスーツケースから取り出した衝撃をまとわせた杖と、ワイヤーを射出して、爬虫類に似た鱗で覆われた竜の手足を封じた。

 

「いまだ、やるぞおおっ」

蛇切丸へびきりまるがなくとも、日々の鍛錬は裏切らないっ」


 桃太は右手に巻きつけた衝撃刃でカメレオンに似た長い舌を千切り、千隼は錫杖しゃくじょうで眉間の鱗にひびを入れて――。


「うおおおお。出雲がやったぞ。そのデカい壺ぶっ壊してやるぜ」

「ヤタガラス隊も葉桜隊長続け!」


 冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟とクマ国の防諜部隊ヤタガラスは、力を合わせて、国喰らいの大蛇に剣、槍、斧、錫杖を叩きつけて、吸血竜ドラゴンヴァンプが背負う壺のような器官を破壊した。


「GAAAAAA!」

「わたしの生徒たちに手は出させません!」


 異形のドラゴンは砂丘の杭や鉄線を引きちぎろうと暴れ狂うものの、担任教師の矢上遥花が鬼神具、夜叉の羽衣である赤いリボンでより厳重に拘束――。


「これで終わりですわっ。鬼術・光刃三千こうじんさんぜん!」

「七罪業夢。昔馴染みのよしみじゃ、最期くらいは看取ってやる。ありったけの地雷をくらええい」


 鬼勇者の一人である、赤いお団子髪が目立つグラマラスな少女、六辻ろくつじうたが空から光刃の雨を、因縁の深い昆布のように艶のない黒髪のスレンダーな少女、伊吹賈南が地上から地雷の嵐を浴びせかけ、翼を穴だらけにした。


「GYAAAAAA!?」


 吸血竜ドラゴンヴァンプはラッシュに耐えきれなかったか、大声でうめきながら負傷した翼や壺に似た部位を爆発させる。


「や、やりましたか?」

「違う。意図的に自爆しおった。これは人間の発想ではない。まさか、もう業夢ではないのか?」


 賈南が異常を見抜くも、すでに遅い。

 ドラゴンヴァンプが自爆したことで飛び散った赤黒い血液は、雹となって地球の研修生とクマ国の鴉天狗に降り注ぐ。


「うわあああっ、痛いですわああっ」

「ああっ、この雹、血を吸っているのですか」


――――――――――

あとがき

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