第168話 オウモからの新装備提供

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出雲いずもクン。この蒸気鎧パワードスーツも〝鬼神具きしんぐ〟の一種でネ。着込むことで〝鬼に変身する〟んだヨ。でも、機械仕掛けのせいか、大自然から恵みを得る〝かんなぎの力〟とは、噛み合わせが最悪みたいだネ。一歩も動けないとは、驚いた……」

「そんなああ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲いずも桃太とうたはメカメカしいパワードスーツに並々ならぬ興味があったのだが、まるで動かすこと叶わず……。

 開発者であるクマ国の過激派政治団体〝前進同盟ぜんしんどうめい〟の指導者オウモにも適性がないと告げられて、がっくりと肩を落とした。

 その一方で、同じようにテストした瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平そひら遠亜とあは何事もなく起動に成功した。


「オウモさん。私は動かせるみたいだけど、しっくりこないからいい。それより、今使ってる鞄が壊れそうだから、分けて貰えたらありがたい」

「祖平サン。報酬ほうしゅうがただの鞄では〝前進同盟ぜんしんどうめい〟の沽券こけんに関わるネ。よし、内部空間を鬼術でじ曲げて、大量の物資を輸送用可能なスーツケースを作ってみよう。道具や薬を大量に持ち運べるし、戦闘時には遠くまで放り投げる機能もつけた特別製を用意しようじゃないか!」

「びっくり。それでお願いします」


 かくして遠亜も新たな力を手に入れた。

 オウモは桃太にも何か装備を渡そうと悩んでいるようで、ロッカーの前でうんうんと唸っていたが……。

 やがて鱗状に加工した金属片を繋ぎ合わせ、洋服のジャケットに似せた青い鱗鎧スケイル・アーマーと、鎖を編み込んだ同色のズボンを取り出した。


「お仕着せの装備で悪いけど、ひとまずコレを使ってくれ。他に何か使えそうなものは……、そうだっ、アレがあったじゃないか!」


 オウモは物資倉庫へ慌ただしく飛び込んで、今度は緋色に輝く手袋を持ってきた。


「出雲クン。このグローブは、〝日緋色孔雀ひひいろくじゃく〟という。カムロしか使いこなせなかったいわく付きの品だが、キミならばどうかと思ってね」


 桃太とうたは、オウモから緋色に輝く手袋を受け取ってしげしげと眺めた。


「俺に使えるでしょうか? 名前から察するに〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟が掘っていた日緋色金ひひいろかねが使われているんですよね?」


 桃太の態度から、オウモも〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟が年端もいかない子供達を誘拐し、働かせていた強制労働施設のことを思い出したのだろう。

 彼女は、紫色のフルプレートアーマーをガチャガチャと鳴らしながら補足した。


「念のため言っておくと、カムロは人使いの荒いブラック君主だが、クマ国は〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟のように、さらった子供を無理矢理働かせるような真似はしていないからね」

「わかってます。だからこそ俺は、カムロさんの元を飛び出したんですから」


 桃太は師匠であるカムロの制止を振り切って、自ら戦場に飛び込んだ過去がある。

 そんな経緯を知ってか知らずか、オウモは深々と頷き、鎧に包まれた肩をすくめた。


「あんにゃろうの話はここまでにしておこうか。日緋色金ひひいろかねだが、高熱や冷却、あるいは物理的な衝撃を受けた際に、干渉する特質があるんだヨ。クマ国の蒸気機関は〝時に反射し時に拡散する〟この金属の性質を利用して作られた」


 オウモは、自らが着込んだ紫色の全身鎧をポンポンと叩く。


「吾輩達が作りあげた蒸気鎧パワードスーツの装甲にも、衝撃反射機能を搭載とうさいしているワケだが……、桃太君に渡した手袋、〝日緋色孔雀ひひいろくじゃく〟は、その始まりとなった試作品プロトタイプなんだ」


――――――

あとがき

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