第165話 鮮血
165
西暦二〇X二年六月三〇日午前。
「……正門、裏門共に破られ、屋敷は消滅。もはや
本丸で指揮を執っていた
「矢上先生は、生徒達を連れて脱出してください。ここからは大人の役目です」
「待ってください。〝
「貴女は今、レジスタンスの指揮官ではなく教師のはず。優先順位を間違えないでください」
そんな若き指揮官と彼の仲間達は、ケラウノスの恐怖を前にしても、怯むことはなかった。
「
冒険者の中には恐怖のあまり失禁する者や腰を抜かす者もいたが、それでも笑顔で武器を掲げた。かくして……。
「総員、北の岩場に向かって走れ。研修生達を守るぞ!」
「うおおおお、やってやらあ」
絶体絶命の危機の中、
「俺達の命に替えても子供達は地上へ送る」
「ぐはあああっ」
テロリストに堕ちた〝
「駄目なんだサメ、簡単に生命を諦めるものじゃないサメエエ」
〝鬼の力〟が持つ狂気に汚染された犠牲者は、文化的なアプローチによって正気を取り戻すことが可能だ。
「AAA、わ、わたしは、なんで、こんなことをっ」
「GRUUUU!?」
紗雨は、巫女としての力を笛の音で増幅させ、敵軍の動きをにぶらせて仲間の撤退を支援しつつ……。
手足にまとわせた浄化の水を当てることで、灰色の鎧を着た〝
そんな紗雨の活躍が、目についたのか?
「そこのガキ、見覚えがあるぞ。邪魔なんだよおおおっ」
清水砦の屋敷跡に陣取った、神鳴鬼ケラウノスから伸びる糸がびかびかと輝き、紗雨に向かって赤い八本足の虎が群れをなして殺到する。
「さ、サメエエッ?」
啓介が更に強大な鬼の力で操っているのか、もはや紗雨の奏でる曲や浄化の水すら、阻むことが叶わなかった。
「出雲君のためにも、この子達だけは守るっ」
「やらせるものかっ、ぐわあああ」
「幸保さん、みんなっ。
――――――
あとがき
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