第161話 甚大な被害をこえて

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 四鳴しめい家と元勇者パーティ〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟によるクーデター蜂起ほうきから二週間が経った……。

 西暦二〇X二年六月二二日。


『キシシシ。これが新時代の神、四鳴啓介と神鳴鬼ケラウノスの神威かむいである!』


 オレンジ色髪の青年、四鳴しめい啓介けいすけ神鳴鬼かみなりおにケラウノスが干渉し、各地で電気異常や停電が頻発ひんぱつしたことで、日本中が大混乱に陥った。

 まず信号機が誤作動を起こして交通事故が多発。

 救援にかけつけた消防や病院なども巻き込まれ、被害は二次三次と再現なく拡大し、とめどない血が流れた。


「悪党ども、俺の子供を返せ!」

「母さんがいったい何をした!」


 されど、日本国内の世論を恐怖を煽ろうとした啓介の暴虐ぼうぎゃくは、人々の怒りに火を点けた。


「四鳴家と〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟をテロリスト団体として認定する!」


 日本政府や国会も放置してはおけず、珍しく早期鎮圧に乗り出したことで、四鳴家と取引のあった企業や経済グループも、完全に〝S・E・I〟と手を切ることとなる。


「四鳴家なんてテロリストと商売だなんて、冗談じゃない!」

「〝S・E・I〟との付き合いはこれまでにさせてもらう」


 四鳴家が囲っているつもりだった企業は、次々に〝S・E・I〟からの独立を宣言。犯罪に手を染めた関係者をことごとく警察に突き出した。


「くそがああ。愚かな奴隷ども。オレ達を誰だと思っている?」

寒門かんもん如きが、我々を捕まえるなど、許されるはずがない!」


 八大勇者パーティで一番の経済力を誇った四鳴グループは、瞬く間に崩壊を始めた。

 しかしながら、海外勢力の意向をくんだ野党の介入で、自衛隊という切り札は封じられたままであり、警察も電気機器が不具合を起こすため、捜査は困難を極めた。


「日本政府は、冒険者組合に神鳴鬼かみなりのおにケラウノスと〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟の鎮圧を要請する」

「ぼ、冒険者組合は、日本政府に全面的に協力するんだな。でも、うちにも跳ねっ返りはいるんだ、な」


 五馬いつま家と八闇はちくら家は、獅子央ししおう孝恵たかよしが主導する冒険者組合の方針に協力したものの……。

 六辻ろくつじ家と七罪ななつみ家は、亡国の危機でなお、またも日和見ひよりみに徹した。


「獅子央に五馬、八闇。目障りな連中が、四鳴と共倒れになるなら喜ばしい」

「そうなれば、冒険者組合の握る利権はわれらのものだ」


 このようなサボタージュを重ねた結果、六辻と七罪の両家は、衆望を大きく損ねることとなった。


「アイツらも四鳴や〝S・E・I セイクリッド・エターナル・インフィニティ〟と同じろくでなしだ!」

「なにが八大勇者パーティだ。悪党の集まりじゃないか!」


 もはや日本国内の勇者パーティへの期待は霧散むさんし、その評価は地に堕ちていた。

 このような情勢下では、四鳴家を討つなど夢のまた夢だ。


朱蘭しゅらん様。これじゃあ、四鳴家の一人勝ちになっちまうぜ」

「キハハハ。こんなこともあろうかと、既に〝前進同盟ぜんしんどうめい〟にケラウノスを討伐してくれと依頼し、金も支払い済みだ。放置すればクマ国にも被害が出る以上、連中は必ずや四鳴を殴りつけてくれるさ。この隙に吾輩わがはい達は、弱体化した七罪家に根を張って、一葉いちは家と〝J・Y・Oジュディシャス・ヤング・オーダー〟を立て直すよ!」

「へいへい。やっぱアンタは恐ろしい女だよ」


 情報収集から戻った部下、奥羽おおう亜大あだいから恐怖の視線を向けられるも、一葉いちは朱蘭しゅらんは首を横に振る。


「ふん、でなければ孝恵たかよしに足元を掬われる。ほむら学園の始業式からわずか二ヶ月で、あやつは八大勇者パーティの支配を崩しやがった」


 彼女は、獅子央ししおう孝恵たかよしの福々しい顔の背後に、亡き〝英雄〟獅子央ししおうほむらと、行方不明の〝魔女〟獅子央ししおう賈南かなんの横顔を幻視していた。


獅子央ししおう賈南かなんが去って目が覚めたのか? 惚れた女の影を追うからこそ強くなったのか? どちらにせよ、今の孝恵たかよしは侮れん」


――――――――

あとがき

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