第53話 クマ国 対 勇者パーティ

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「グヒヒ。わしはこの広く豊かな土地を奪い、王となるのだ。そして日本を、地球を変える。これぞ革命よおおっ」

「黒山が余裕だった理由はこれか。五〇発のロケット推進式グレネードなら、有刺鉄線ゆうしてっせん程度、ひとたまりもないはずだっ」


 黒山くろやま犬斗けんとくれ栄彦はるひこが勝利を確信したのも無理はない。

 元勇者パーティ〝C・H・O (サイバー・ヒーロー・オーガニゼーション)〟の団員達は、現代兵器が時代遅れの妖怪達を吹き飛ばすことを確信していた。

 されど、栄彦達はすぐに思い出すことにる。

 クマ国もまた、地球人類の常識から外れた異界であることに……。


「勇者をかたる悪党どもめ、思い上がるのも程々にしろ。獅子央ししおうほむらがこの世界を訪れ、地球との交流が始まって半世紀以上……。アメリカなどから貰った映画を見て、何度も予習したんだ。クマ国が何の対策も立てていないと思ったか?」

「アラララ! 御大将カムロ様に、ヒメジで鍛錬を繰り返した、ワシらコウエン隊の強さを披露ひろうしようではないか。法術隊、〝刑部大明神おさかべだいみょうじんの結界〟を起動せよ!」

「「ヒメジの地主神に願い奉る。この地を邪悪なる鬼より守りたまえ」」


 カムロの指示を受けて、白馬に乗った白髪混じりの老人を先頭に、犬耳、猫耳、さまざまな姿の獣人、妖怪達が錫杖しゃくじょうを立てて祈り始めると、軍勢の背後にある純白の要塞が光を発した。

 天守閣てんしゅかくから伸びる光は、有刺鉄線の手前三〇〇メートルに輝く盾を形成、四〇発を越えるロケット推進式グレネードを防いで見せた。

 爆風も小規模に抑えられて、有刺鉄線を揺らしたものの、地上に掘った塹壕ざんごうにはまるで届きもしない。


「地球から遠いクマ国まで無反動砲バズーカを持ち込んだ手並だけは見事だ。でも、バックブラストで居場所の割れる自殺兵器スーサイドウェポンなんて、遠距離で使うものじゃないな」


 総大将らしき牛頭仮面の男カムロに至っては、光輝く盾の外側にいたものの、迫る五発の砲弾を手で受け止めてしまう。


「ば、バケモノめ、いったい何をやっている?」

神通力じんつうりき、かな? 日本国から貰った漫画に、ムキムキの主人公が矢弾を跳ね返す技があっただろう? ああいうものだと思ってくれていい。じゃあ、お返しだ」


 カムロが軽く後押しするや、火を噴くロケット砲弾はくるりとUターンして、射手の元へと戻り始めた。


「いけない。黒鬼術士ソーサラー隊第三班は、防火と消火に集中しろ!」


 〝黒鬼術士ソーサラー〟であるくれ栄彦はるひこは、部下と共に対処しようとするも――。


くれ、貴様ああ。たかが班長如きが何を勝手に命令している? 守っている暇があったら敵を撃てよ、もっともっと撃つんだよ!」


 最上位指揮官である黒山くろやま犬斗けんとが、四輪車にふんぞり返ったまま見当違いの命令に終始したことで、大惨事となった。


「うわああああ、た、たすけてくれえええ。からだがやけるうう」


 ブーメランのように舞い戻った五発の砲弾には、広範囲を巻き込む焼夷弾しょういだんが混じっており、虎の子のサイボーグ〝戦士ウォーリア〟を含む主力部隊が爆死したのだ。

 

「このクズ共が、革命精神が足らんぞ馬鹿者がああっ。全員とつげえきっ!」


 黒山は、損失を補おうと無謀な突撃を命じ――。


「テロリストどもの処遇は、既に日本国と打ち合わせ済みだ。アカツキは八咫烏やたがらす部隊を率いて退路を断て。コウエン将軍はあとの指揮を頼むよ。降伏する者以外は、すべて討て」


 カムロは、冷ややかに包囲殲滅ほういせんめつを命じた――。

 両軍指導者の立ち居振る舞いは対照的で、ヒメジの里を巡る勝敗の天秤は、早くも傾こうとしていた。

――――――――

あとがき

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