File060.分け前

 パーティのプールを除いてみんなで報酬を分けています。私の取り分が少しばかり多い気がするのですが、どうしてでしょう?

 「マーキスお兄ちゃん、私の分が少し多いように思うのですけど?」

 「ああ、ワイバーンの運び賃だ。アリスちゃんがいてくれたおかげで、3匹とも全ての素材を持ち帰れたからな。」

 「そうね、馬車も壊れてしまったから、討伐部位を持って帰るにしても結構大変だったはずよ。」

 「そうだぞ、遠慮無く受け取っておけばいいんだぞ。」

 結局押しきられてしまいました。

 「次からは私もパーティメンバーなんで同じ額にして下さいよ。じゃないと素材を持って帰りませんからね。」

 「ああ、わかったよ。次回からな。」

 今回はもらっとけって事ですか。そこまで大きな依頼も多くないでしょうし、分け前が大きく変わることは少ないでしょう。



 「さぁ、分配も終わったし、本格的に飲もうか?」

 マーキスお兄ちゃん、私も引き込むつもりですか?別に嫌いじゃないですけど、エマお姉ちゃんの視線が痛いのです。

 「1杯だけお付き合いしますね。」

 「ああ、わかったわかった。1杯だけな。」

 1杯で済まないのでしょうね。あとでエマお姉ちゃんに助け出して貰いましょう。イリスは絶対に飲んだらいけませんからね。



 「アリスちゃん、こっちに来てお話ししない?」

 エマお姉ちゃんが助け船を出してくれましたね。なんとか3杯目で抜け出せそうです。

 「エマお姉ちゃん、ありがとうございます。」

 「アリスちゃんも、マーキス達に付き合う必要なんて無いんだからね。」

 「でも、少しくらいは付き合いも必要かなって・・・」

 「本当にアリスちゃんはいい子ねぇ~」

 「エマお姉さん、お姉様は渡しませんよ・・・」

 イリス、顔が赤いですよ。ひょっとしてお酒を飲んだんじゃないでしょうね?

 「イリス、何を飲んでるの?」

 「ブドウジュースですよ。」

 ブドウジュース?これ、ワインを水で薄めたやつじゃないですか。これだけで酔っ払うんですか?イリスは相当弱いですね。

 「エマお姉ちゃん、イリスを先に寝かせてきますね。」

 「ふふっ、そうね。もうダウン寸前だものね。私も手伝ってあげる。」

 イリス、明日はエマお姉ちゃんに謝っておいてくださいね。結構迷惑かけてるんですからね。


 「エマお姉ちゃん、ありがとうございました。イリスが迷惑かけちゃって・・・」

 「いいのよ、少しくらいのことは。マーキス達に比べれば・・・」

 そういえば翌朝なんてぐでんぐでんになってたりしましたね。

 その後、エマお姉ちゃんと色々お話をして寝ることにしました。キティお姉ちゃんは結局帰ってきませんでしたね。イリスを1人で寝せておいて、私はエマお姉ちゃんの抱き枕のようです。もう慣れたからいいんですけどね。



 「おはようございます。」

 「あら、アリスちゃん早いのね。」

 エマお姉ちゃんこそ、ずいぶんと早く起きてましたよね。

 「エマお姉ちゃんも早起きですね。」

 「うん、そろそろキティが帰ってくるかなって。」

 そういえば昨日は帰ってきませんでしたからね。夜通し魔法の実験をしてるんでしょうか。


 「あれっ、お姉ちゃんにアリスちゃんも。もう起きてたの?」

 「キティ、一晩中魔法の研究をしてたの?」

 「そんな、一晩中じゃないわよ。1時間ほど寝たわよ。」

 キティお姉ちゃん、多分それは一晩中というのですよ。

 「やっぱり一晩中やってたんじゃない。心配するから連絡するとかしなさい。」

 「うん、ごめん。私ちょっと寝るね。」

 一晩中研究をしてれば眠くもなるでしょう。

 「奥の部屋はイリスちゃんが寝てるから、手前の部屋で寝なさい。」

 「わかったわ。奥の部屋でイリスちゃんを抱いて寝るわね。」

 ぜんぜん聞いてませんね。イリス、今日はキティお姉ちゃんの抱き枕になっていてくださいね。

 「エマお姉ちゃん、2人だけですけど朝ご飯にしませんか?」

 「そうね、どうせマーキスとロッドはまだ潰れているでしょうから。」

 エマお姉ちゃんとゆっくり朝食です。パンとスープとサラダですか。今日はベーコンも付いているのですね。ちょっと豪華ですね。

 「エマお姉ちゃんは今日の予定はあるんですか?」

 「私は特にないけど、アリスちゃんは何かあるの?」

 「ちょっと市場を回ろうかなって思ってます。」

 「また食材探し?」

 「ええ、お米もまた少し買っておきたいですし、その他の食材も探したいですから。」

 「アリスちゃんのご飯は美味しいものね。私も一緒に行ってもいいかしら?」

 「もちろんいいですよ。」


 食後はエマお姉ちゃんとゆっくり市場巡りですね。まずはお米を探しましょう。それから、おにぎりの具を探しましょう。何かあるといいのですけれども。






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カクヨムのコンテスト用に書き下ろした作品です。


人形の館 ~人材派遣って人形を貸してもいいですよね?~


カクヨム

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