File057.人体実験
自分でも治癒魔法をかけていたせいか、数日で痛みや腫れは引きました。まだ、しっかりとくっついたわけではないので、しばらくは安静が必要ですね。
「ねぇ、アリスちゃん。骨がカルシウムってもので出来ているって事はわかったけど、そのカルシウムのことを教えてくれるかしら?」
あれから毎日のようにキティお姉ちゃんの質問攻めです。私だってそれほど詳しいわけじゃないんですよ。なんとなくこんな感じだったかな?程度のものです。カルシウムが何かと言われても答えられないじゃないですか。
「そこまで私も詳しくないですよ。そう言うものだって思っておいてください。」
「詳しく知っていれば治癒魔法の効き目も高くなるかと思ったのに・・・」
「多分ですけど、治癒魔法の効き目って目で見える範囲のものじゃないかと思うんです。」
「目で見える範囲?」
「ええ、初級だと怪我の表面しか治せませんよね?」
「そうね。切り傷とかは治せるけど、傷が深いと止血程度ね。」
「中級になれば目に見えないところでも治せるようになって、上級だとさらに奥の方まで治せるって。身体の内部をよく知っていればどこを治せばいいかわかるじゃないですか。」
「ふーん。面白い考え方ね。でも、そう言われれば納得も出来るわね。」
キティお姉ちゃんの興味の対象が、身体が何で出来ているかからどんな構造なのかにシフトしましたね。構造くらいならなんとなく解ります。理科室の人体模型の説明で済みますから。
帰りも、オークを狩ったりしながら帰りました。なんでって?ワイバーンの肉ばかりじゃ飽きるからですよ。それにもったいないじゃないですか。売ると結構な額になるそうですからね。
まぁ、3匹もいるのですから1匹くらい食べてもいいと思いますけどね。
「あと3日ほどで町に着くからな。そうしたら上級の治癒をかけてもらおうな。」
「ロッドお兄ちゃん、しばらくほっておけば治るのですからそこまでしなくても大丈夫ですよ。」
「その辺りはちゃんとしておいた方がいいと思うぞ。治すところはちゃんと治しておく。あとで痛い思いをするのは嫌だろ?」
何かあったのでしょうか?怪我を治すことに感しては何かと口うるさく言ってきます。
「わかりました。町に着いたら上級の治癒をかけてもらってきますね。でも、高いんですよね?」
治癒魔法は結構高かったように思うのですよ。
「子供が気にするなって。ちゃんと治しておけよ。」
また子供って言いましたね。もう大人なんですから、子供扱いしないでください。
「ねぇ、ロッド。この辺りってゴブリンが出たわよね?」
「ん?ああ、森の浅いところに出るって話だな。駆け出しの奴らがよく討伐に来てると思うぞ。」
「1匹、捕獲できないかなぁ?」
ちょ、ちょっと、キティお姉ちゃん。何を言い始めるんですか。まさかここで解剖とかやるなんて言いませんよね?
「キティお姉ちゃん、生きたまま解剖するの?」
「う~ん、ちょっと違うかな?」
「何をやるつもりなんですか?」
「切り刻むって意味では解剖とにたようなものなんだけど、治癒魔法をかけたときどこまで治るか見てみようかなって。」
怖いこと考えますね、たとえ相手がゴブリンだからと言って切り刻んでは治癒をかけて、また切り刻むなんて怖いじゃないですか。まぁ、人間でやらないだけましなのかもしれませんが。
「ゴブリンにも治癒魔法ってかかるんですか?」
「ええ、かかるわよ。普通はかけないけど、実験ではよく使われるのよ。」
人型ですし、モルモット代わりでしょうか。あまり見たくはない光景ですね。
ロッドお兄ちゃんが生け捕りにしてきましたね。かなり傷ついてはいますがまだ生きてますね。気に縛り付けて動けないようにしてから実験ですか。
「アリスちゃんも一緒に見ててね。」
「えっ、私も一緒にいるんですか?」
「もちろんよ。アリスちゃんにも治癒魔法をかけてもらいたいもの。私の治癒魔法との比較にね。」
キティお姉ちゃんに変なことを教えてしまいましたか?町に戻ってから人間で確認するなんて言わないでくださいよ。
ゴブリンについては付き合いますけど、人間相手は絶対に付き合いませんからね。
「さすがに人間とは身体の構造が違うのかしら?効き目があまり変わらないわね。」
「私もゴブリンの身体なんて知りませんからね。」
「町に帰ったら・・・」
「付き合いませんよ。」
「まだ最後まで言って無いじゃない。」
「人間で試すって言いたいんですよね?」
「そうよ、魔法の発展のためだもの、犯罪者を使わせて貰おうかと思ってるわ。」
本当にやるつもりだったんですね。確かに魔法の発展のためと言えば聞こえはいいのですが、残酷なことをするのにかわりはありませんからね。
「私は嫌ですよ。人を切り刻みながら治癒をかけるなんて。それがたとえ犯罪者だったとしてもです。」
「ふぅ、わかったわよ。今回は止めておくわ。」
今回は止めるけど、次はやるかもしれないと言うことですか。キティお姉ちゃんの魔法に対する情熱はわかりますけど、人体実験だけは止めましょうよ。
********** 宣伝のコーナー **********
カクヨムのコンテスト用に書き下ろした作品です。
人形の館 ~人材派遣って人形を貸してもいいですよね?~
カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/16817330647858637456
応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます