File035.トロルの討伐

 5日間にわたる護衛依頼もやっと終わりです。町が見えてきました。

 「次の護衛依頼は2週間後になるがいいかな?」

 「マーキスお兄ちゃん・・・」

 「ああ、この子達も含めてまた受けさせてもらうよ。」

 「マーキスお兄さん、ありがとうございます。」

 イリスはさん付けで呼ぶんですか・・・エマお姉ちゃんとキティお姉ちゃんはどう思うんでしょうか・・・お姉さんでも良さそうですね・・・あの2人は妹が出来ることの方が大事なようです・・・呼び方じゃないんですね・・・


 「マーキスお兄ちゃん、護衛依頼までは何をするんですか?」

 「まぁ、2週間あるからな、簡単な依頼をいくつか受けるか?」

 「そうね、2人の実力も把握しておきたいしね。」

 エマお姉ちゃん・・・妹が欲しいと言っていないときは普通なんですね、すごく頼もしく感じますよ・・・

 「そうだな、2人はオークは倒せるんだったね・・・この近くの森にトロルが出るって話だ。ちょっと行って狩ってくるか。」

 マーキスお兄ちゃん達のパーティではトロルはちょっと倒してくる程度の物なのですか。普通はかなり強い魔物と認識されているはずですが・・・

 「今回は、前衛が俺とアリスちゃん、後衛にイリスちゃんとキティが入ればいいよな。エマとマーキスは待機で。」

 ちょっと待ってください・・・私がメインで戦うんですか・・・勘弁してくださいよ・・・

 「私が前衛ですか?」

 「そうよ、アリスちゃんは前衛職でしょ?」

 「後衛の方がいいなぁ・・・」

 「ちょっと待て、アリスちゃんは前衛で剣士だって聞いてたが、ちがうのか?」

 「お姉様は何でもやりますよ。魔法も使いますし・・・」

 「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 変な沈黙はやめて下さい・・・確かに魔法も使いますよ・・・それに基本は剣士ですがこのメンバーで私が前に立つ必要ってないでしょう・・・

 「なぁ、アリスちゃん・・・戦力把握のために必要なんだ。正直に答えてくれよ・・・本当に魔法が使えるのか?」

 そこまでしなくともそのくらいちゃんと答えますって・・・

 「その・・・ちょっとだけ使えますよ・・・」

 「ねぇ、マーキス・・・アリスちゃん達ってすごくない?」

 「ああ、まさかアリスちゃんが魔法も使えるなんてな・・・隊列を考え直さないといけないな。」

 「そうね、マーキスとロッドが前衛でその後ろにアリスちゃんとキティ。最後列がイリスちゃんと私ね。」

 「ねぇ、アリスちゃん・・・回復魔法も使えたりするのかな・・・」

 「使ったことがないので分からないです・・・」

 キティお姉ちゃんにはそう言っておきましょう・・・多分使えます・・・回復術士なんてスキルがありましたから・・・きっと使えるんだと思いますよ・・・

 「そう・・・そこまで万能じゃないのね。安心したわ・・・」

 いえ、結構万能かもしれないです・・・

 「隊列としてはそんなところだろうな・・・アリスちゃんには遊撃で動いてもらった方が良さそうだな。その辺りも色々覚えてもらわないといけないがな。」

 遊撃ですか。確かにその辺りが一番いいのでしょうね・・・



 トロルの討伐に来てます・・・ちょっと森に入ったところとか言ってませんでしたか?もう森に入って3日目ですが・・・

 「ロッドお兄ちゃん、ずいぶん奥にまで入ってきましたね・・・」

 「そうだな、Dランクじゃここまで入ることはないからな。」

 そうですよ・・・私達はDランクなんですからこんな所まで連れてこないで下さい・・・

 「しっ・・・音をたてるなよ・・・」

 マーキスお兄ちゃんがトロルを見つけたようです。ここからなら先制攻撃ができそうですね。

 「アリスちゃんにイリスちゃん。2人ならどう攻撃する?」

 「お姉様に一撃入れてもらってから私が魔法を使います。」

 「ちょっと待って、アリスちゃんがつっこんだところにイリスちゃんが魔法を放つの?」

 「お姉様の遠距離攻撃が先です。接近戦は最後ですね。」

 「アリスちゃんの遠距離攻撃って・・・魔法じゃなくて?」

 「お姉様の魔法は強すぎるので・・・」

 イリス・・・色々言えないことがあるって言いませんでしたか・・・そんなにペラペラ喋ってどうするんですか・・・

 「なぁ、アリスちゃん・・・2人のやり方でまずはやってみてくれないか・・・」

 ほら、マーキスお兄ちゃんが変なことを言い出すじゃないですか・・・それに面白い物を見るような目で見てますよ・・・


 「仕方ないですね・・・イリス・・・後で覚えてなさい・・・」

 「えっ・・・お姉様、私何かしましたか?」

 しましたよ・・・ちょっと喋りすぎです。口は災いの元って事を教えてあげます。



 トロルは再生能力があるって聞きますからね、とりあえず頭を飛ばすつもりで撃ちましょう。

 なんとか当たりましたね、頭には当たりませんでしたが肩に当たったみたいです。

 「イリス・・・」

 「紅く燃えさかる紅蓮の炎よ、我が槍となって敵を貫け・・・ファイヤーランス。」

 もう唱えはじめたましたか・・・いいタイミングです。それでは私は剣を抜いて走り込みましょう。遠間から1度武技を放っておくべきですね。1発で倒せるとは思いませんし・・・

 「ソニックブレード・・・」

 イリスのファイヤーランスの直後に当たりました。後は踏み込んで、切りつけましょう。

 トロルが再生能力持ちとは言っても火には弱いのですね・・・なんとか倒せたみたいです・・・

 「ちょ~っと、詰めが甘いかな?」

 ファイヤーランスがもう一本飛んできます・・・エマお姉ちゃんでしょうか?あっ・・・トロルが起きてきます・・・倒し切れてなかったようです・・・それで詰めが甘いですか・・・確かに確認しませんでしたね・・・


 「まぁ、何というかだなぁ・・・お前ら本当にDランクか?」

 マーキスお兄ちゃんと反省会です・・・まずは私が討伐確認を怠ったことですか・・・それと、イリスが次の魔法を用意していなかったことですね・・・

 まさに経験不足がでてしまったという感じです。それでもDランクとは思えないような実力だそうです・・・

 「さっさと必要な依頼を受けてCランクに上がらないとな・・・」

 「そんなに簡単に上がれる物なんですか?」

 ロッドお兄ちゃんがそんなことを言うのでちょっと聞いてみましょう。

 「アリスちゃん達の実力でCランクにしないのは冒険者ギルドの損失だよ・・・」


 そんなものなんですか・・・こんな感じで私達の実力判定の依頼は終わりました・・・結論・・・「十分使えるからこれからもよろしくな。」だそうです・・・




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