魔の50超え

 インド洋制圧により東は日本、南はマダガスカルまで行動範囲が拡がり、イタリアは船舶不足に悩むようになった。


 戦前は西は移民先として南米のアルゼンチン、東はソマリア産の塩を輸出していた日本まで商船が行き来していたが、ムッソリーニの突発的参戦により保有船舶の1/4を喪失。


 唯参戦と引き換えに航行可能な海域も地中海に限られた為、日常生活に支障が出る事はなかったがスエズ打通以後ボロが出始めたのである。


 スエズ以南のアフリカ側の港湾は殆どが英軍に破壊され、エジプトで王政を倒しイラクから難民が流れ込んできた元凶である枢軸側に対し、英国の承認の元成立したサウジアラビア王国は中立を謳ってはいたものの対応は悪かった。


 イタリアの船舶は元々航続距離は長い訳ではなく、長距離輸送に適した船舶も航路毎喪った事に加え、地中海から長距離輸送に転用された物も寄港先の状況が上記の理由により悪かった為船員、船体共にダメージを与えつつあったのだ。


 喪われた船舶は海底にあるか拘留されたまま朽ち果て、解放された船員も食糧事情及び衛生上の問題から体力が回復していなかったので本国から応援が回航されたのだがタイミングも悪く、40℃を超える事は稀で乾燥した夏に慣れた地中海船隊にそれぞれ50℃、50%を超える気温、湿度の紅海の夏が迫りつつあった。

 

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