もしイタリアが頑張ったら~30年代編その2~

 35年、エチオピアがイタリアの侵略を国際連盟に提訴。


 英仏が仲裁に乗り出したがムッソリーニは強硬姿勢を変えず、情勢が悪化した頃チャコ戦争が終結。


 自動車業界では規格統一が終了したが生産能力は米国の3%に満たず、M11を採用した頃イタリアに対する経済制裁が行われた。


 が、独がLD転炉により製造した粗鋼と開発したばかりの溶接技術をイタリアに提供する事を決定。


 再軍備宣言以後機械化を進めるに辺り、優秀な無線技術と欧州最大の油田、世界シェア二割のボーキサイト鉱脈を持つイタリアの機嫌を損ねたくなかったのである。


 10月末、独と技術交流の際マルコーニが提携先にヒュルスマイヤーを指名。


 ドイツ側はテレフンケンではない事を不思議がっていたが、英国にヒュルスマイヤーがレーダーの雛形を出願した事を知ると顔色を変えた。


 36年スペイン内戦が勃発。


 フランコを支持するイタリアはCR32、Z.501等の飛行機、飛行艇や再武装したL3、M11を始めとする戦車を送り込み共和国派の装備するI-15、I-16やBT−5、T-26と死闘を演じた。


 空の戦いではI-15を圧倒、相手が一撃離脱を採用するまではI-16に対し優勢だった。


 地上では大部分を占めたL3は射界が取れず、乗員が少ない欠点を再確認したが平野部では優秀な無線機とドイツ仕込みの照準器、集弾性の高いブレダ又はオチキス機銃を装備しエチオピア侵攻の経験者が操作するL3がBT−5を撃破した事があった。


 相手は高初速の戦車砲を備えていながら照準器の性能と兵の練度が低く、L3が小型なのもあって600m以下でなければろくに命中しなかったのである。


 M11は距離を問わず全ての敵戦車と対等に渡り合えたが速力、装甲防御力が不足。


 強化を促す事になる。


 翌37年はイタリアにとって厄年となった。


 3月のグアダラハラの戦いでは3倍の兵力と敵と同等の戦車砲を持ちながら突進する軽戦車を防ぎ切れず惨敗。


 空ではナチスドイツがBf109を投入すると戦闘に参加した航空機の中で最優秀の機体となり、それと戦い生き残ったパイロットがI-16を駆り一撃離脱戦法を使い始めると速力の劣るCR32はじわじわと消耗し始めた。


 そんな中、教え子のウーデットを通じて搭乗したバルボはBf109の特性に惚れ込み自国での生産を望んだ。


 しかし、


 脚の間隔と操縦席が狭く、視界が悪い事。


 翼とエンジンの構造が複雑で量産に時間がかかり、両開き式の風防は開閉に苦労する事から単葉機マッキ200と保険も兼ねて従来の複葉機CR42の開発がスタート。


 上記の理由から自国の軍事技術を不安視したムッソリーニはスペインへの人的支援を打ち切り、ドイツを参考に改革に着手。


 チャコ戦争ではドイツが支援したボリビアが敗北している事から反対の声も有ったのだが、これは独から供与されたLD転炉一号機が稼働を開始した事も影響している。


 外交面でほぼ孤立する中先の軍事面の不安と鉄の生産量が従来の6倍になったとの報告を受け、ドイツへの傾斜と国内に目が向いたのである。


 撤兵が終わった7月にマルコーニが死去。


 ムッソリーニは相次ぐ悲報に途方に暮れたという。


 38年、前年末の伊独日三国防共協定締結により提供された爆撃機、無線機の返礼として日本から八九式重擲弾筒と九七式中戦車が提供された。


 フランコ派を共に支援していた関係でイタリアは八九式重擲弾筒について知っており、口径を45㍉に減じて採用。


 ブリクシアと異なりクッションが消えた事で操作時の疲労度は上がるが、運びやすさは重量が1/3に減った事で改善され、製造コストも削減に成功。


 M14戦車と九七式中戦車を比較し、過給器付き空冷ディーゼルも入手。


 リビアや南米の戦訓から冷却能力を強め、砂塵にも強くなった。


 経済分野では独のファルベンがイオン交換膜の元となる樹脂の工業生産を開始。


 アフリカ開発の追い風となった。


 日本からは農林10号が贈られ、病害虫に弱い欠点はあったが機械化に向き、小麦戦争と銘打って増産に励んでいたイタリアにとっては有り難い物であった。


 秋に独が対戦車砲を提供。


 元はチェコ製だったようで、試験中だった40口径の物より3.4口径長く重いが強力だった為これを採用。


 独日からの武装と機関が反映されるのは翌年を待つ事になる。

 

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