変える、変えろ、変えた、変わる。セカイは、それでも輪り廻る

世界が変わる時は大体、強い力や権力が動く

シアと…/世界を変えなければタロァには会えないのに、私だけでは世界を変えられない臆病で弱い私に来たT…

 最近、殆ど1人きりだからおかしくなっているのかも知れない。

 でも、なるべく一人で居続ける。おかしかった身体が少しづつでも元に戻る。すると心も少し楽になる。

 この選択は正解だと思いながら。積み重ねるんだ、一つ、また一つ。


 人と食事に行かない、おかしくなるから。

 家には帰らない、ママもおかしいから。

 レビさんが昔使っていた倉庫の様な建物の一室で梱包材を使って寝る。

 スーパーのおつとめ品を食べながら考える。

 シャワーは付いてるし、下着は100円の店で買った。化粧や服はどうせスタイリストが現場で見繕う。


 私の見てきた世界、生きてきた世界が狂っているのは確かで、しかし私は世界の変え方を知らない。

 昔はタロァと同じ世界を見て、その後、野山を駆けていた時は、おばあちゃんの庇護があった。

 高校からは同級生や周りに合わせ、仮面を被り母親や大人の望む世界を、私はずっと人の見せる世界を聞いて生きてきた。

 結果、仮面は私の心まで染み込み今や狂った常識を基準に生きている。

 

 今更気付いたとしても周りにフテりながら、逆らってるようで、結局生きていくためには親や事務所に従うしかない、それしか生き方を知らないし出来ない、子供と同じだ。弱い…


 タロァも精一杯、我慢して生きていたと思う。

 血縁無く、その経験から親しくなることを恐れ学校でも孤立し、おかしくなる限界の手前で、私に迷惑かかるからと突き放した。

 あの人はどこかで一線を超える事を望んでいる人だから。

 私だって知ってたから…私の周りに集まってくる棘を殺しかねない勢いで見ていた事を。

 なのに私は…太郎が壊れる直前まで何もできなくて…駄目だ、悪い方に…

 とにかく…私が変わらないと… 


「フッフッフッ、30、フッフッフー…フッフッフッ50、フッフッフッ…」


 失った体力を取り戻す為の筋トレ…腕立てをしながら考える。

 モデルや女優の道は私には無理だ、何かの仮面をつけると、私は影響を受けすぎる。

 これから先、別の事務所に行けば歌手になる可能性もある。それで芽がでなくても人生は続く。

 どんな人生だって耐えられる様に、つよく、したたかに、続ける、永く。

 悪夢の様な夢、妄想…それでも心が弱くなれば、タロァに殺して欲しいと言われる程に愛されるならば…あれでも…と悪い方に考える…アレは最悪だ、あんな結末は絶対に…




『お前、その腕立て、筋肉○付のケ○ンと同じ奴だよ。それじゃあバランスよく筋肉つかないよ』


 ?


 幻聴?私の腕立てしている背中から声がした?

 確かに途中から腕だけ使っている感じがしたけど…身体が喋っている?


『お前は誰と競争してんの?1人なのに回数沢山出来ましたっていう自己満腕立てかな?顎の先端にスイッチはないぞ?』


 おかしい!?やっぱり私の上で何かが喋ってる!?

 私は転がるように部屋の隅に飛び、振り返る。

 私が今まで腕立てしていた場所…そこには…


 首から下がテカテカした紺色の全身タイツにスタイルの良い、頭のおかしそうな女性が、鋭い目つきでこちらを見ていた。


 手甲の付いたグローブに足甲の付いたブーツ、口元は目より下を覆うような仮面と長いマフラー、全身にビニール紐みたいな紐が亀甲縛りのように巻かれて腰帯の後ろの所で大きく蝶々結びのようになっている安い感じのコスプレ女が腕を組んでこちらを見ている。


『アイドルというのはスーパーのおつとめ品を食ってこんなボロ屋に住んでいるのか…驚きだ、ウンコしない以来の衝撃だな』


 誰!?事務所の人間!?レビの知り合い!?


「誰ですかっ!?何処から入ってきたんですか?」


『え?誰ですか?じゃなくて…え?…タ…じゃない…たいま…ちょっと待って…』


 太腿のホルダーから素早くスマホを出し電話をかけている…どうする?今のうちに逃げる?


『ちょっとさ、ちゃんと話しつけといてくれないと困りますよぉ…え、旦那通してないから?だってさー、絶対にオレ行かせるの反対するじゃん?オレだってアイドルの知り合いいるんだぜってドヤリングしたいじゃん?…あーはい、分かった、りょーかいでーす』


 電話を切って10秒程無言で電話を見ているおかしな人…こんな知り合いは私にはいないけど…


『待たせたな!オレはお前の知り合いのヘビみてぇな名前のやつ経由で紹介されたTだ!恋愛師範れんあいマスターT!得意な恋愛はNTRだ!』


「T…?それに…NTR…ってなんですか?」


『NTR…つまり寝取られだな!』


 自信満々に説明するT…この人の得意な恋愛が彼氏を寝取られる事?…私は寝取られたくない…それに恋愛師範って……あ!?



 思い出した…レビにお金を借りた時…




 意識が朦朧とした中、自分が汚れた事を知り、最初に逃げ出した場所がレビの事務所だった。 


『ねぇ…レビ?誰かママや事務所の息のかかってない所で伝手はない?このままじゃ私…おかしくなる!抜け出せなくなる!レビの所でもいいから!』


『ワタシ、シゴトシッテンダロ?ソレニメンドーゴトハ、ゴメンダネ。ツテ?ッテナ、ネーヨ』

『アァ、フトキャク、イルな、ヒトリ。チョ、マテ』


 そして電話持ってから消えて数分後…


『ウハハ!ハナシツイタゾ!レンアイマスター!テー!、ヲ、ヨコストイッテル(笑)レンアイマスターナノニ、ダンナシカ、ツキアッタコトナイ、ヤツラシイ(笑)デモ、セカイヂュウノヒト、ナグリタオセルシ、ダレモ、レンアイマスターヲ、コロセナイッテ、イワレタ(笑)イミワカンネ(笑)』


 何それ…全然意味分からない…


『チカイウチ、イクッテヨ!アッタラオシエテクレ!ヤバイヒト(笑)』


 笑い事じゃないのに…とりあえず私自身が思いついた自活の為の場所と、現金…頭を下げてお願いした。

 返さなくて良いから、変な人に会った報告だけで良いからと言われた。

 

 そして私の前に立つ女の人…だけど…何をしに?



「貴女が…恋愛師範…Tですか?思い出しました、すいません。しかし…何をしに来たんですか?…ヒッ!?」


 急にTの目がクワッとなった!?私は怯んでしまった…


『何をしに!?お前はラーメン屋で入って来た客に、店員が『何しに来たんですか?』って客に聞く店を見たことあるか!?いや、オレ言われた事あるな、スープだけ100円でくれって言って…えーっと…だから…』


 何か話が見えない…と、とりあえず…


「あ、あの、恋愛マスターっていうぐらいだから恋愛相談…すれば良いんですか?いえ、して良いでしょうか?」


『厶?やっと理解したか…そうだ、相談しろ。特にNTRに強いからな、そこのところ、注意しろよ』


 なにを注意すれば良いか分からないけど…誰かに自分の本心を伝える事を大分してこなかった私は…溢れてしまった…

 そして私は、全てを一方的に話した…

 レビと違い誰とも繋がっていない第三者、何処かでこの人は誰にも言わないだろうという安心感…

 いや、壁に向かって懺悔するように…自分の事、家族の事、仕事の事、最近の不調、そして…タロァの事…私の気持ちも一緒に全部…


 話していて分かる。分かってしまった…

 心の何処かで頑張ると思っても、諦めてタロァとサラを祝福する事が良いと、どこかで思っている…

 でも、まだ諦めてないんだ…サラと付き合ったと聞いても…諦めきれないよ…タロァ…


 私は話しながら涙が出てしまった…涙ながらに話し続ける私をTは黙って聞いていた…人に話して…自分の気持ちが整理出来る事もあるんだと思った。


「わだじ、やっぱりダロァ…諦めだくないでず…ねぇっ!どーずればいいでずが!?ねぇぇ!わだじィ!?」


『ウオォッ!?』


 気付けば掴みかかっていた、必死だった、ずっと…ずっと一緒で…ずっと待って…高校で勘違いじゃないって気付いて!こんなに好きで!タロァだってそうだと思ってて!大事にしてくれてっ!なのに汚れて!汚して!


「わだじっ!いま!だろぁっ!だろぁのごどおもって!エッヂィごどずるど!おもいだずんだ!あぐむを!ばじべでは!だろぁがよがっだよ!あげだがった!もうイゲない!だろぁぞばに、いげなっアっ!?」


 掴んでいた手を掴まれたと思ったら転がされた。


『キサマァッ!長くて意味分からない話からいきなり襲いかかって来るなっ!ビックリしてちょっと漏らしただろうがっ!オレのメンタルも考えろよっ!エッチってお前処女だろうがっ!触ったら分かんだよアホがっ!旦那といい貴様といい今の奴らは尻穴ばっかり馬鹿かよっ!』


「え?あ、ぁあ…グズ…すいません、ちょっと思い出してたら…」 


 何の話かわからないが転がされてちょっと冷静になった。   


『だからな…えーっと…良く分からないけど良いんじゃない?諦めなくて…それよりさ、記者会見とか開いてアイドル辞めて高校生に戻れば良いじゃん…。『好きな人!タロァ君と付き合います!』って、駄目なの?』


「あ、えーっと…母とは縁を切るつもりでやっても今三年なので高校生活は難しいと思いますし、卒業後、その後も響くと思いますが…契約の関係で私の所にもタロァの所にも怖い人が来ると思いますしマスコミも…後、一応アイドルでは…ない…かと…」


『え?アレ出来ないの!?公開一般人告白!…そっかぁ…オレの作戦が…じゃあ怖いの何とかしたらできんの?いや、マスコミかぁ…後、噂な…噂は怖いよな、NTR的に。』


 何かよくわからない事で悩んでらっしゃる…でも、話していて思った。違う世界に入る事、世界が違う事、それは果てしなく遠くに、そして大きな壁があるという事。

 私の事を叩く人達…シアラは成功して何でも手に入ると勘違いしている人は沢山いる…残念ながら一部を除き成功している様に見えるだけで、大概が私のように雁字搦めで動けなくなるだけなのだ。

 莫大なお金は動く、しかし入ってくるのは雀の涙。

 この道で長く大成すれば別なんだろうけど…ただ、私は生まれつき外見が好まれ、何となく年齢の割に演技が出来るだけの人…この道で大成出来るとは思っていない。多分、早熟なだけ。


『うーん…じゃあ…最初にコイツのいる事務所を潰そう。物理的に。何だっけな、なんか薬出回ってんだよな?アレやってる奴、大体おかしくなるし、近いうち、オレ達そいつら全部襲うから…騒ぎになったらなし崩し的に辞めれないかな?んで、とりあえずコイツは対魔忍になってその男に会いに行く…男側の確認も忘れないとは出来る女だなオレ…ちょっと待って、合ってるかどうか分からない…それ絡めたらバレるじゃん、もしかしてオレ、後でメッチゃクチャ怒られるんじゃない?…』

 

 1人でブツブツ何か言っているが…潰す? 

 何かこの人と同じ様なテカテカの全身タイツを袋から出し始めた…


『まぁ、良いや…とりあえずじゃあコレ着ろ。今からそのウルトラタロァマンみたいな奴に会いに行く』


 は?



※時間かかったわりにこんなラブコメです、Tは深くは参加しません(土下座)

ここから視点が変わりまくります。

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