和製プランナーのダンジョンマスターサポート記
れれれの
立地の悪い雑魚ダンジョン篇
第1話
新人ダンジョンマスターであるセラフは窮地に陥っていた。
「冒険者が来ない!」
セラフは人より変生した吸血鬼である。一般的に吸血鬼と言えば日光やニンニクに弱く、蝙蝠や霧に化けられる半不死の生物だ。セラフも御多聞に漏れずその一人であった。
彼女がダンジョンマスターになったのは九ヵ月前。ただの村娘だった彼女は狼の魔物に生贄として捧げられて死亡した。
その時の恨みつらみが彼女の身体をただの死体から邪気の籠った魔物へと変容させた。
その後、右も左もわからぬ状態であったが、彼女は金色の羽を備えた神の使徒を名乗る人物にダンジョンを作るためのコアと制御装置を貰う。
どうやらセラフ自身は無自覚に神と契約していたそうで、ダンジョンマスターに就任することを条件に魔人への蘇生が叶ったのだ。
ところが、彼女は識字さえままならぬただの小娘。何も考えずに、歩いて三時間はかかる生まれ故郷の森の奥地の洞窟にダンジョンを構えてしまった。
結果、誰も来ないまま無為に時間が過ぎた。
ダンジョンマスターには『特権』、厳密に言えば物質の生成・領域内のオブジェクト配置・既存領域の改装の特殊な能力があるのだが、そんなものが無料で使えるわけでもなくDP≪ダンジョンポイント≫と呼ばれる通貨が必要で。さらには一年に一回、神への貢物として人間が領域内で生み出すDPを捧げなければならない。
新人であるセラフは稼ぎ方も分からずに右往左往、九ヵ月も無為に過ごしてしまい気づいたときには崖っぷち。首が回らない状態だったのである。
「どうすんのよこれ…」
貢物を捧げられなかった場合にはとても酷い罰が待っているらしいと件の使徒は言っていたことを覚えているセラフ。
せっかく生き返ったのにまた死んでしまうのは嫌だと必死に打開策を考えるが、悲しいかな教育など受けていない村人にそのようなものが浮かぶわけもなく。一人ごちる。
「終わりよ…」
頭を抱え、フロアが二つしかないダンジョンの自室で蹲るセラフ。
その時、ダンジョン内に侵入者が現れた警告音が鳴る。セラフはバッと大の字になって飛び上がり、自室のダンジョン内を監視できる映像機器を見る。
そこには人間が古ぼけたダンジョンの一室で突っ立っていた。
髪は黒、彼女が見たこともない上等な服を着こなしており目鼻立ちの整った男性だ。
異質だ、馬鹿のセラフでも分かる。あの異質っぷりは神の関係者に違いない。セラフは急いで映像装置の音声機能をオンにした。
万が一ただの変人だった場合は餌にしよう。そう思い、声を出す。
「人間、貴様何者だ」
すると、男はホッとしたように張り付いた笑顔を浮かべ。
「神からの契約によりアナタ様のサポートをするべく派遣されてきた『袷≪あわせ≫』と申します」
セラフは生き返った時ぶりに神に感謝を捧げた。
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