第39話 アドバイス


正味2時間ほどの営業時間を恙なく終えたワタシのお店、小銀貨ショップのプレオープン


多少のゴタゴタはありましたが、上出来だったのではないでしょうか


(大金貨ももらっちゃったし、もう営業しなくてもいいくらいだよね?)


お貴族様のご来店には少々驚きましたが、


怪我の功名? 災い転じて? そんな感じで爆益をいただいちゃいました




閉店作業を始める前に、まずはお世話になった恩人にお礼を言わなければです



「ジェニー姐さん、さっきはありがとうございます」


「ん? さっき?」


「御者のおじさんのお誘いのヤツと、エラそうな従者さんです」


「ああ、アレね?」

「あなた、隠しているつもりなんでしょうけど、収納系のスキルを持っているのでしょ?」


「ハイです」


「収納系はどこでも重宝されるけど、変なのに目をつけられやすいから要注意よ?」

「今後もアレコレ勧誘されるでしょうから、普段から気をつけなさいね?」


「了解です」


「それと、本来はあまり遭遇しないのだけれど、お貴族様には気を付けなさいね?」

「権力者っていうのは、対応を間違えると大変よ?」

「今回は何とかなったけれど、今後は、どうなるか分からないわよ?」

「そこのところ、どう考えているのかしら?」


「え? えぇっと・・・」


「何も考えていないのね?」


「は、ハイです・・・」


「あまり横からごちゃごちゃ言いたくないけれど・・・」

「正直見ていて危ういのは確かだから・・・」

「まあ、人生の先輩からの助言だと思って聞いてちょうだいね?」


「はい」


「目立つことをすれば、それなりにリスクが付いてくるわ」

「それが魅力的なモノであればあるほど、悪意や欲望、権力といったものを引き寄せるの」

「そのリスクを回避する方法や太刀打ちできる手段がないのなら、ある程度自粛するべきかもね?」

「ゴブリンの群れの前で無防備に騒いだら、全て奪われるだけよ?」



ゴブリン云々は正直よく分かりませんが、


たしかに、目立ち過ぎることがよろしくないことは分かります


今回は何とかなりましたが、それはジェニー姐さんがいてくれたから


ジェニー姐さんという権力に対抗できうる人が、ワタシに代わって交渉してくれたから


ワタシひとりだったら、どうなっていたことか


お貴族様が権力を振りかざしてきたら、小娘ひとりなんて、ひとたまりもありません


(実際、あのいけ好かない従者さんにLED照明を奪われそうだったしね)




そんな風に反省していると、ジェニー姐さんから思わぬご提案です



「それで、物は相談なのだけど、スキニーちゃん」

「あなた、私の助手やらない?」



人生の先輩からのアドバイスだったのが、全くの想定外のお話になっちゃいました



「へ? ワタシがジェニー姐さんの助手です?」


「そう。あなたにもらったあの薬、とても良いモノだったわ」

「もし、他にも良い薬があるのなら、お願いしたいのよ」

「見かけ上、助手という形をとるけれど、薬師である私に、スキニーちゃんが薬を卸す」

「そして私が薬師として薬を患者に処方する」

「つまり、スキニーちゃんは薬師の助手という形で間接的だけれど、薬を販売しない?」

「この形なら、スキニーちゃんが直接表立ってアレコレしなくて済むでしょ?」

「だから、今日みたいなリスクは回避できると思うのだけれど、どうかしら?」

「もちろん、薬以外のモノを薬師の助手として、販売してもいいわ」




何だか素晴らしいお誘いを受けてしまいました


ワタシは直接お客さんとやり取りせずに済みますし、


それでいてジェニー姐さんの助手として販売に関与できます


ジェニー姐さん的にもメリットがあるようですし・・・


(アリなんじゃないでしょうか!)



プレオープンで大金貨を稼いでしまった今、


ガツガツ商売する必要性も感じないですし、


それに元々コミュ障気味なワタシです


むしろ、こちらからお願いしたいご提案です



よって、お返事は、快諾あるのみ



「よ、よろこんで!」




なぜか居酒屋の新米バイトさんのような返答になってしまったワタシなのでした


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