第21話 魔法初体験


「あのっ、ザックさんは、清潔(クリーン)とか洗浄(ウォッシュ)とか、できるひとです?」


「ん? ああ、洗浄(ウォッシュ)できるぜ。むしろ得意だな」


「よろしければ、ワタシにその、洗浄(ウォッシュ)かけてくれませんか? もちろん、相応のお礼はしますので」


「おお、いいぜ。オレの妙技をみせてやる」


ザックさんはそう言うと右手を私に向けて呟いた


「洗浄(ウォッシュ)発動」


ジュワッ


一瞬、そんな音と共にワタシの体を何かが覆う


膜のような、ベールのような


1秒にも満たない間の出来事でした



(おお? 一瞬シュッとした、と思ったら、・・・あれ? もう終わり?)

(何か思っていたのとちょっと違う、期待外れ、とまではいわないけど・・・)


一瞬の清涼感はあったものの、すぐに元に戻ってしまった感じ


(何だろう、この残念感・・・)

(もっと、お風呂上がりのような清涼感を期待していたんだけど・・・)


確かに何か綺麗にしてくれたのだろうとは思う


しかし、スッキリ感が足りないというか、洗い切れていないというか


例えるなら、しっかり洗い流すのではなく、洗剤つけて拭き取っただけような感じ


汚れは取れたのかもだけど、何かもろもろ残ってしまっている、そんな感じ



(これはアレかな? 洗うことは洗ったんだけど、ちゃんと濯いでいない、みたいな感じ?)

(思ってたのと何か違うよ、これ)

(むぅ~っ、これじゃない感、半端ないっスよ!)


未知の魔法に対する憧れと、お風呂に入ってスッキリしたい願望がごちゃ混ぜになり、


洗浄(ウォッシュ)に対する期待値が異常に上がっていたワタシ


その期待が大きかった分、実際に体感して、逆に抱いてしまった大きな不満



(・・・まあ、乙女の尊厳は最低限守られたってことで、良しとしましょうか・・・)

(今日のところは、この辺で勘弁しといてあげるわい!)


なぜか上から目線の感想で締めくくるワタシなのでした




「ザックさん、洗浄(ウォッシュ)ありがとうです!」

「ところでですが、お礼はどんなモノがいいです? やっぱりお金とか?」


「ん? お礼くれんのか?」

「くれるってんなら何でもかまわねぇが、できれば金より、飲み食いできるモノの方がありがてぇかな」


「なるほど・・・了解です。それじゃ、ちょっと準備してお渡ししますね」


(【買い物履歴】でザックさんへのお礼兼、物販の商品となりそうなモノでも物色しましょ)

(ザックさんにお礼の品を渡して、そのリアクションによって物販商品も決めちゃおう!)


ザックさんへのお礼と言っておきながら、ザックさんを使って色々リサーチする気満々なワタシでした




「ちなみにザックさん、この管理小屋? の隣って、空いてます?」


「ん? まぁ、空いてるっちゃあ、空いてるが、もしかして、隣に寝どこでもこしらえるのか?」


「ハイです、だって、安全でしょ?」


「まぁ、出入り口付近だし、目立つから、安全っちゃあ、安全だか、人の出入りがあるから忙しないぞ?」


「イイんです。むしろ、それがイイんです!」


お前は某サッカー狂の解説者か! というツッコミを頂きそうなくらいの即答でした



ワタシが何を目論んで、管理小屋の隣を占拠しようとしているのか


それは、安全の確保と商売なのです


人の出入りが多く、目立つ場所で商売をはじめれば、それだけ多くの人に商品を見てもらえると思ったのです


管理小屋のお隣ということで、ついでに安全も確保しつつです


正に、


一石二鳥


一挙両得


こういうことには、意外と頭がまわるるワタシでした


(二兎を追う者は一兎をも得ず、なんてことにならないように、頑張ろっ!)

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