第10話 あの音は安眠の大敵


「ぷぅ~~ん」


真夏の夜の風物詩

悪い意味で聞きなれた音

いわゆるモスキート音

(でも、いつも聞く音より大きくてちょっと低め?)


低音ボイスのダンディな蚊でもいるのかと周りを見渡すと、10メートルほど離れた道端に黒い靄のようなモノが見える

目を凝らすと、その靄の正体が蚊であることが分かった

(あれって、蚊柱?)

田舎のどぶ川近くの木の下で散見されるヤツ

オスの蚊が数十から数百群れているヤツ

うっかり自転車で突っ込んでしまうと、目や口や鼻の中に数匹もらってしまう、おぞましいヤツ


「なるほど、ここで殺虫スプレーの出番、ということですな!」

少女の甲高い声でオッサンのようなセリフが口を衝く

【買い物履歴】画面の[あなたにお勧め]機能の有能さに驚きつつ、納得のチョイスにガッテンするワタシ


すかさず足元にある殺虫スプレーを手に取り、ビニール包装を破る

そして右手で構えて蚊柱に向かって歩き始める

もちろん、ビニール包装はポイ捨てなどしない

環境に対しては意識高い系なワタシなのである


1メートル手前まで来たら停止し、右自然体で射撃用意


「う~ちかた、はじめ!」

ぷしゅ~


某ワ〇コさんが一杯飲んだ後に発するキメゼリフにも似た音とともに、白い霧状の薬剤が蚊柱に襲い掛かる

すると、着弾? とほぼ同時に、ポトリポトリと墜落していく蚊たち

(ん? 効き目絶大?)

ノータイムで落下していく、蚊というには少々大きいサイズの虫を見ながら考える

(異世界の蚊は殺虫剤に対して免疫がないのかな? そして、デカい!)


1分ほど殺虫スプレーの噴射が続くと、1メートルほど先には、黒い絨毯のように、人の親指程の大きさの蚊の骸が無数に横たわっていた

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