気がきく魔王様はお好きですか?※カクヨム甲子園中間突破

タカ 536号機

この魔王…やりおる!

 俺は、扉に手をかける。緊張してきた。

 でも、ここまでこれたのはみんなのおかげだ絶対に勝ってみせる!


 俺は決意を新たに扉を力強く開いた。


 バァンンン!!


「ふ、待っておったぞ、勇者よ」


 そこには、圧倒的な魔力を遠くからでも感じることのできる。

 まさに魔王と呼ぶべき風格を備えた堂々たる姿の魔王が玉座についていた。


「魔王! 俺はお前を倒すために来た!

 ここで会ったが100年目お前は必ず倒す」


 そういうと俺はすぐさま魔王に向かっていく。こういうのは、引いちゃダメだ。

 少しでも躊躇したら圧力に屈してしまうのだ。


「あっ、そこ段差があるから気をつけた方がいいよ」


 俺はピタッとブレーキをかける。ホントだ。

 あと少しで転ぶ所だった。


「でも、なんで教えてくれたんだ?」


「いや、勇者がこけたら格好がつかないでしょ? 勇者ならそういうとこも気をつけないと」


 なるほど、確かにそんな勇者は嫌だな。


「全く、勇者なら民が憧れる存在であろうとしてください。僕が気づけなかったら危なかったんですからね」


「気をつけます」


 これはぐうの音も出ないほど言う通りだった。魔王といえど敬意を払わねば。


「魔王相手にそう言うことを言っちゃダメです。勇者は正義、そのポジションを忘れないように」


「いや、その理論だとあなたガッツリアウトなんですが!?」


 激しく自爆する理論だった。


「いや、魔王は余裕を持って勇者の相手をするものなので間違ってないんですよ」


「なるほど」


 確かに魔王って余裕で油断とかしてくるもんね。

 そして、魔王が剣を構える。

 いよいよか、魔王を俺は討つ。


「そこは、「みんなこの世界を救ってみせる」とかも思考の中に入れると共感ができると思いますよ」


「心の中まで読めるの!?」


「自分なにぶん魔王ですので」


 ちょっと恥ずかしながら言う魔王。

 ま、まあそう言うことなら。

 みんな俺がこの世界を救ってみせるから!


「行くぞぉぉぉ」


「おっ、その掛け声は勇者ぽくっていいと思います。その調子で頑張ってください」


「ありがとうございまぁぁぁぁぁす」


 俺は剣を振りかざし魔王に接近する。

 首を狙う。魔王といえど首を切られたら終わりのはずだ。


 ガキィ!!! な、なにぃ、魔王は小指で俺の剣を受け止めていた。


「勇者とはこんなものかぁ?」


「くっ」


「はい、そこで一旦後ろに下がって体勢を整える動きをしてください。その方が勇者っぽいです」


「分かりました」


 俺は、策を練り直すため一旦引く。


「ん? ちょっと待ってください」


「どうしたんですか?」


 引こうとしたら魔王さんに止められた、どうしたんだろう?


「その剣じゃ私を倒せないんですよ」


「えっ!?」


 これは、王国から支給された伝説の剣のはずなんたけど?


「私には魔王城から南西に5キロ先の精霊の森の中を進んで奥の隠れ道を進んだ所にいる伝説の精霊が打った剣しか効きません、一旦引き返さないと倒すことができないので引いてください。

 これは、道中のメモです。ポケットにでも入れておきますね」


 そう言うと魔王さんは俺の右ポケットに地図を入れてくれる。


「あっ、感謝はしちゃダメですよ? 勇者っぽさがなくなりますので」


「勿論、分かってます」


「あと、世間体も考えますと…魔王を倒したんだけど伝説の剣じゃないとトドメをさせないから戻ってきたと民には伝えるのがいいでしょう。僕も部下に話を合わせるように言っておきます」


 口には出せないから心の中で言っておこう。

 本当に何から何までありがとうございます。


「じゃあ、取りに行ってきますね」


「我を倒したとでも思っているのか? 我には伝説の剣でないとトドメをさせないぞ?」


 早速演技を始めてくれる魔王さん、マジ感謝。


「あ、あと言い忘れてましたが間違っても民の前で「魔王さん」なんて言葉使わないように注意してくださいね」


 本当に何から何までありがとうございます、


 俺は魔王を倒すために魔王城を出て精霊に会いに行くことにした。

 魔王倒すどぉぉぉ。



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