自慢の息子

 その勇ましい姿になっているモノを見て、俺と衣緒お姉ちゃんは思わず声を合わせた。


 匂いで興奮したワケでも、噛まれて興奮したワケでもない。正真正銘、衣緒お姉ちゃんの体で興奮したのだ。


 それを俺と衣緒お姉ちゃんが同時に理解すると、二人同時に掛け布団を剥がして、向かい合うようにしてベッドの上に座った。


 座ってみるとやはり、ズボン越しでも息子が大きくなっていることが簡単に見て取れる。テントを張っていると表現するのが適切かもしれない。


「わあ……おっきくなってる……触ってみてもいい?」


 衣緒お姉ちゃんは俺の息子をマジマジと見つめる。

 そんな熱心に見つめられたら恥ずかしいじゃないか……と思いつつも、息子は立派な姿になっているので、ちょっとだけ誇らしい気持ちもあった。


「別にいいけど」


 俺も気分がいいので、息子に対するお触りに許可を出す。

 衣緒お姉ちゃんはこわごわとした様子で、俺の息子を人差し指でちょんとつついた。


「おお……硬い……いつものふにゃふにゃじゃない」


「いつものふにゃふにゃって言うな。ってかそんなに俺の息子のこと触ってたっけ?」


「うん。さりげなく」


「マジか……全然気付かなかったわ」


「ふにゃちんだもんね」


「女の子がふにゃちん言うな」


 そんな会話をしている間も、衣緒お姉ちゃんは俺の息子をちょんちょんとつつく。

 なんだかこれだけつつかれていると、もっと強く弄ってくれないだろうかと、もどかしい気持ちになってくる。

 息子が元気になった時は、あれをこうすれば気持ちよくなれるらしいが、俺にはまだ詳しいやり方が分からない。


「奏美と鈴乃にも見せに行こ」


 衣緒お姉ちゃんは珍しく瞳をキラキラと輝かせながら、そんな提案をした。


「な、なんで?」


「私の体で興奮したって自慢したい」


 衣緒お姉ちゃんが胸を張ると、バスタオル越しのおっぱいが強調される。息子が元気になっている今の状況だと、衣緒お姉ちゃんが胸を張っただけでもドキリとしてしまう。どうやら俺と息子は心が繋がっているらしい。


「それもいいかもな。俺も久しぶりにたったって自慢したいし」


 まだまだ元気が有り余る息子を見ると、奏美お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんに見せるまで持ちそうだ。

 俺と衣緒お姉ちゃんは目を合わせて頷いてから、部屋をあとにした。


 そしてどうしてか衣緒お姉ちゃんは、俺の手を握って先を歩く。これじゃあまるでお姉ちゃんに手を引かれる弟の図だ。まあそれで間違いないんだけどさ。


 衣緒お姉ちゃんに手を引かれるがまま、奏美お姉ちゃんの部屋の前にやって来た。衣緒お姉ちゃんがコンコンとドアをノックをすると、数秒も待たずに奏美お姉ちゃんが出て来た。


「衣緒お姉ちゃんどうした……ってなんでバスタオル一枚? それとなんで手繋いでるの?」


 情報量の多いこの状況に戸惑いながらも、奏美お姉ちゃんは「変なの」と笑った。

 奏美お姉ちゃんは上下青色のパジャマを着ている。バスタオルは着ていなかったようだ。


「瑞稀くんを見て何か気付かない?」


 衣緒お姉ちゃんが前のめりになって、奏美お姉ちゃんへと尋ねた。

 奏美お姉ちゃんはキョトンとした顔をしながらも、俺のことを舐め回すように見て……ある場所で視線を止めた。


「えっ、たってるじゃん。マジ? 本物?」


 俺の息子に本物も偽物もあるか。俺の息子はこの世で一人だけだ。

 俺が「本物だ」と言うと、奏美お姉ちゃんは腰を屈めて、マジマジと息子を見つめる。そして興味津々な顔を作り、こちらを見上げた。


「ねえ、これ触ってみてもいい?」


 なんでこの姉妹たちはすぐに触りたがるんだ……。

 普通、男性の大事なところは触りたくないんじゃないのか……?

 なんて思いながらも、俺は大きくなった息子が誇らしいので、首を縦に振る。


 許可が下りてすぐに、奏美お姉ちゃんは俺の息子を頭から三本の指で摘んだ。ちょっとだけ力が強かったこともあり、想像以上の気持ちよさに俺は腰を引いてしまう。


「あ、ごめん。痛かった?」


 奏美お姉ちゃんは俺の息子から瞬時に手を離して、俺の顔色を伺う。

 気持ちよかった……なんて言えるワケがないだろ。でも息子を強く握られると気持ちいいんだな……ということを知ってしまった。癖になりそうだ。


「いや、痛くはない」


「そっか。それならよかった」


 奏美お姉ちゃんは目を細めると、また俺の息子を摘む。摘んだりなぞったりするので、またどんどんと息子が元気になる。


「なんか大きくなってない?」


「そりゃあそれだけいじってたらな」


「あ、アタシのせいなんだ」


 奏美お姉ちゃんはおかしそうに笑うと、ようやく息子から手を離してくれた。

 奏美お姉ちゃんのせいでさらに大きくなった息子は、ズボンの上から見ただけでもエグさを増した気がする。


「んで、これをどうしてアタシに見せに来たの?」


「これ、私の体だけで興奮したんだよ」


 衣緒お姉ちゃんが「えっへん」と胸を張ると、奏美お姉ちゃんは目をギョッとさせた。


「マジで? 噛んだとか匂い嗅がせたとかじゃなくて?」


「うん。抱き着いたら、たった」


「え、すごいじゃん! 普通に女の子の体でたつなんてすごい成長だよ! うわー、ついに瑞稀くんにも性欲が戻ったかあ……衣緒お姉ちゃんの体エロいもんなあ……」


 しみじみとした声を紡ぎながら、奏美お姉ちゃんはじーっと息子を見つめている。

 そんなにじっと見つめたら恥ずかしいからと、計らずも息子を隠してしまう。


「このあと鈴乃にも見せに行く」


 するとポツリと、衣緒お姉ちゃんが呟いた。


「あ、そうなの? じゃあアタシも着いて行くかな。鈴乃の反応面白そうだし」


「絶対に顔赤くする」


「それは絶対だね。大騒ぎされなきゃいいけど」


「鈴乃なら大騒ぎしかねないから、少しだけ注意かもね」


 衣緒お姉ちゃんと奏美お姉ちゃんが盛り上がっている間も、俺の息子はまだまだ元気な状態だ。

 女の子の前で息子を大きくさせて恥ずかしくないのかと問われれば、ちょっとだけ恥ずかしい。しかしそれよりも、普通の女体だけで大きくなった息子に誇らしさを感じている。

 恥ずかしさよりも誇らしさが勝利した瞬間だった。


 でもこの姿で廊下を歩くのは気が引けるので、片手で息子を隠しながら歩こうと思ったのだが、その手を奏美お姉ちゃんに握られてしまった。

 両手ともお姉ちゃんと手を繋いでいるので、俺の息子は呆気なく晒されることとなった。


 その状態のまま三人で廊下を進み、鈴乃お姉ちゃんの部屋の前に到着した。

 今度は奏美お姉ちゃんが、ドアをコンコンとノックする。


 中から「はーい」と声が聞こえて来ると、すぐにドアが開いて鈴乃お姉ちゃんが顔を出した。鈴乃お姉ちゃんも、上下ピンク色のパジャマ姿だ。バスタオル姿じゃなくて安心した。


 そして部屋の前に三人も立っているので、鈴乃お姉ちゃんは何事かと怪訝そうな表情を作った。


「え、なにかあった? ていうかこれどういう状況? 三人で手繋いでるし、衣緒お姉ちゃんバスタオル一枚だし……」


 何か嫌な予感を感じたのか、鈴乃お姉ちゃんはドアの影に隠れようとする。しかし奏美お姉ちゃんはドアを無理矢理に開いて、にっと笑顔を作った。


「瑞稀くんを見て何か気付かない?」


 奏美お姉ちゃんの笑顔を怪しく思いながら、鈴乃お姉ちゃんは俺のことを頭からつま先まで見て行く。その途中で、鈴乃お姉ちゃんの視線がある場所に止まり、途端に顔を赤くさせた。


「な、ななな、なんでたってるの!? すごく大きいし……えっ……なにごと……?」


 目を白黒とさせながらも、鈴乃お姉ちゃんの目線は息子に釘付けだ。

 するとまたも、衣緒お姉ちゃんが「えっへん」と胸を張る。


「私の体に興奮したの。こんなに大きくなるまで」


「あ、アタシも触って大きくするのに貢献したから」


 衣緒お姉ちゃんに便乗する形で、奏美お姉ちゃんも胸を張る。二人ともおっぱいが大きいので、胸を張っただけで迫力が増す。その光景にまたも俺の息子は反応しようとするので、これ以上大きくなったら痛みを伴いそうだからと、必死に違うことを考えて気を鎮める。


「変態なことしたんじゃなくて?」


「うん。抱き着いただけ」


 変態なことって言うなよ。それじゃあ俺が変態みたいじゃないか。

 でも今日でその変態ともおさらばだ。俺は女の子に抱き着かれただけで興奮する、普通の感性を手に入れたのだ。


 鈴乃お姉ちゃんは「ほえぇ」と声を漏らすと、俺の息子の前で身を屈めた。これはまさか……。


「これ、触ってみてもいい……?」


 やっぱり触るのか。なんでこの姉妹はそんなに俺の息子を触りたがるのだろう。

 でも悪い気はしないので、俺は「ああ」と頷いてみせる。


 鈴乃お姉ちゃんは恐る恐るといった様子で手を伸ばし、まるで鉄棒を掴むように「えい」と俺の息子を握った。

 その想像を遥かに越えた快感に頭がおかしくなりそうになる。このまま乱暴に扱って欲しいが、きっとそれをお願いすると姉弟では居られなくなってしまいそうなので、気合いだけで耐える。


「うわ、意外とがっつり掴むんだね」と奏美お姉ちゃんが。


「鈴乃、大胆」と衣緒お姉ちゃんが。


 驚き声を上げる二人に、鈴乃お姉ちゃんは「えっ」と変な声を漏らしてから、俺の顔を見上げた。


「もっと優しく触った方がよかった?」


「い、いや、別にいいけど……」


 本当は快楽に溺れるところだったが、耐えられたので良しとしよう。

 鈴乃お姉ちゃんはほっと胸を撫で下ろしながら、俺の息子から手を離した。もっと握ってて欲しかったけど、言えるワケがない。


 鈴乃お姉ちゃんは腰を上げて、「意外と硬いんだね」と感想を口にした。そう、俺の息子は意外と硬いんだよ。自慢の息子だ。


 そこでふと、冷静になってみる。

 大きくなった自分の息子を、お姉ちゃんたちに見せて周り、握られたりつつかれたりする……なんなんだこの時間。俺には別にやることがあるだろ。


「なあ、俺たち何してるんだ?」


 冷静になった上でそう問いかけると、お姉ちゃんたちは同時にこてんと首を傾げた。

 全員が我に返ったことが面白かったのか、奏美お姉ちゃんが「くはっ」と吹き出すようにして笑い出す。


「ほんとに何してるんだろ。瑞稀くんがたっただけで大騒ぎするとか、アタシたちバカじゃん」


 お腹を抱えて笑う奏美お姉ちゃんに釣られて、鈴乃お姉ちゃんもクスクスと笑いだした。


「わたしに言わないでよ。部屋で宿題やってたら、いきなり瑞稀くんのチン……んんっ……を見せられたんだよ? わたしの気持ちも分かってよ」


 一緒になって笑う奏美お姉ちゃんと鈴乃お姉ちゃんを見て、今度は衣緒お姉ちゃんも柔らかな笑みを浮かべる。


「でもこれで、瑞稀くんの自信になったよね」


 確信するような笑顔に、俺はドキリとさせられた。

 たしかにこの息子の姿は誇らしい。それと同時に、自分にも自信が持てるようになった気がする。

 男として、大事なものを取り戻した気分だ。やはり俺と息子は一心同体なのだな。


「ああ、ありがとう、みんな」


 だから三人に向かって感謝を述べると、奏美お姉ちゃんにぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。


 自分にも自信がついたところだし、気を取り直して莉愛を助け出す方法を考えなくては。


 でもその前に、この立派になった息子をどうにかしなくちゃな。


 そんなことを考えながら、立派になった息子をそのままに、俺は姉たちと別れて自分の部屋に戻ることとなった。

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