すぐに終わる異世界のおつかい!

いちのさつき

第1話 異世界に行けるようです。

 俺は死者になった。運悪く17歳という青春真っ盛りの年齢でだ。特に霊感のない野郎だから、真っ暗で終わりだと思っていた。仮に死後の世界があったとしても、川を渡り、閻魔の裁判を受けるものだと思っていた。だが……俺の場合はそうではないみたいだ。


「お前にはお使いをしてもらう」


 白い世界。そこにいる爺さんが訳の分からないことを言いだした。上半身裸で布を腰に巻き付けている程度。ネット小説でよくある神様とは色んな意味で違う。


「我らの世界で火を担当する神だ。今からお前には7つの祭壇に火を灯して欲しい。拒否権はない」


 マジかと思った。説明をもう少しして欲しい。肉体のない状態でどうやってやるのだとか、我らの世界とやらに行くにはどうするのだとか、疑問が山積みである。ただし、何か言ったら、そこで終わりそうだ。明らかに雰囲気がやばい。勘がそう告げているのだ。


「とは言え、場所が分からないのも問題であろう。案内人を付ける。フレイヤ。出て来るがよい」


 おー中々の美少女だ。赤髪の先が青い、ツインテールの子。150cmも満たない身長なのに……胸が大きい。白い生地のワンピースに金色の装飾が施されているストール。サンダルは拘束性が強い革製だろう。洒落や歴史に通じているわけではないからこれが精一杯の分析である。とりあえずテンションが上がるのは間違いない。可愛いとあれは正義なのだから。


「ん」


「いっだあ!」


 手で右手を叩かれた。容赦がない。肉体がないのに痛い。


「邪な考えはやめておくことだな。行くぞ。穂村」


 スタスタとフレイヤと言う案内人が歩き始めていた。放置プレイにも程があるのではないか。


「穂村。行くがいい。フレイヤに付いて行けば、我らの世界に辿り着く」


 そうそう。俺の名前は穂村一成。今から大冒険が始まる、主人公の名前だと思ってくれればいい。

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