第17話 俺無双

 聖国の大魔法から獣人族を助けた俺は、獣人族の長にどうやら認められたようだ。

 ようやく堂々と戦場へ出られるようになった。


「堂々と飛べるのはやっぱり最高だな!」


 俺は気分良く、自陣じじんの上空を旋回せんかいする。


「文字通り羽を伸ばしてるねぇ」


「あの魔法はだいぶ負荷がかかっていたようだな。

 魔術師の動きが止まってる……」

「あの一撃でトドメを刺したかったんだろうね。

 おかげで獣人族がいきいきしてる」


 地上では聖国の兵士と獣人族が戦っている。


「白兵戦では獣人族のほうが有利にみえるな」

「そりゃあ、獣人族だもん!

 女の子でも大人の男なんて簡単にぶっとばせるよ!」

「そ、そんなに……」


 村に戻ったら獣人族は怒らせないようにしよう。


「それよりニック、賢者に言われた作戦を実行しよう!」

「あぁ」


 より上空へあがり、敵陣に突っ込んだ。


「フェニックスが来たぞ!」

「バリスタ用意!」


 下からの声に、ラミがニヤリと笑ったような気がした。


「さーて、こっちもやりますか!」

「ラミ、いくぞ!」


 俺はさらに速度をあげた。

 バリスタとよばれる置き型の弓から放たれる石や、矢をスイスイと避けながら、敵陣深くへとすすむ。


「さすが、特訓の効果でてるでてる!」


「パニックにならないから、余裕があって、周りをよく見れるよ。

 ヴォルフに感謝だな。……あの特訓はひどかったけど」


 数人の人獣族が連射する石をよける特訓は、かなりのスパルタだった。

 剛速球の石が休む間もなく飛んでくるのだ。

 昼だけじゃなく、夜もそれを行うからたまったもんじゃない。


 おかげでこの戦場では、とても身軽にさけることができる。


「人獣族も獣人族くらい力があるからね。

 人獣族は頭も使うからそんなに暴力的じゃないかな」

「怒らせたら怖いな」

「あははっ!あ、バリスタみっけ!」


 敵陣のはしっこに、バリスタは隠すように設置してあった。

 大砲のような角度になるよう、ななめに設置された土台。

 土台に設置された、大きな弓に箱をくっつけたような形の発射台。

 その発射台へ二人の兵士が、大きめの石をセットしている。

 そして土台に設置された歯車で、つりざおのリールのように糸を巻いている。


「やば!ニック、発射しそう!」


 いま発射されると直撃だ。

バリスタは城壁を破壊するほどの強力な武器だと、賢者に聞いている。

獣人族たちにむけて発射されると、壊滅かいめつしてしまう。


「あれか!破壊するぞ!」


 急転直下で武器へとつっこむ。

 聖国の兵士がはなった矢は、ラミの加護で防御。

 俺はバリスタ目がけて火をふきながら飛んだ。


「うわぁぁぁ!」

「フェニックスだ!逃げろ!」


 逃げる兵士は無視して、バリスタを燃やしつくす。


「武器庫も燃やしたい。ラミ、探してくれ」

「りょーかい!野営地も燃やそう。補給を断つとあとが楽だよ」

「食べ物を燃やすのはもったいないな」

「勝つのが先でしょ!」

「そんなもんか。ん?」


 かなり遠くから、でっかい声で獣人族がなにかを叫んでいる。


「ちょっと聞きにくぞ」

「ニックもたいがい義理堅いよね〜」


 俺は時間のムダだがちょっと戻った。

 無視すると、めんどうなことになりそうだからな。


「フェニックスー!食いものは燃やすなよー!!!」


 獣人族は、もったいない精神で生きているようだ。


「わかったー!」


 俺もありったけの声でこたえる。

 獣人族が手を上げたので聞こえたようだ。


「とりあえず武器庫と飛び道具を壊そう!」


 ラミはあっさりと考えを切りかえた。


「お前の切りかえの早さ、嫌いじゃないぞ」

「んん?ありがとう?」


 いくつかあったバリスタを破壊した。

 バリスタがなくなれば、俺の独壇場だ。

 上空で狙いをさだめ、敵陣へつっこむのくり返し。

 弓兵も炎でなぎ払えば簡単に勝てた。


「フェニックスだ!焼かれるぞ!」

「逃げろ!」

「くそ!聖女のお告げは絶対なんだぞ!?」


 ちりぢりになる聖国の兵士たち。

 それを追うのは獣人族の役割なので、俺たちはやらない。

 獣人族も調子よく、聖国を押し返している。


「いやっほーう!ニック強い!最強!最高!」


 軽々と敵兵を焼きはらう俺を、ラミが上機嫌にほめる。


「ラミの防御のおかげだよ。なにも気にせずにつっこめるからな」

「やだ!照れるー!」

「それより、よく酔わないなぁ。

 俺、結構なスピードで急降下きゅうこうかしてるぞ?」

生贄いけにえは、ニックのものだから大丈夫なんだよ!

 っていうか、ボルケニアから出たときに気づかない?

 あんな上空を飛ぶんだよ?

 寒いし苦しいって分かってるのに、私平気だったじゃん!」


 くそ、墓穴ぼけつを掘った。

 ラミは明るい口調だが、確実に責められている。


「うっ……。寒いのは俺の体温で大丈夫だと思ってたんだよ。

 あとは、気にしてなかった……ごめん」

「だろうね〜。ニックはうっかりだから、そうだと思った」


 あんまり気にしてなさそうで良かった。

 ……良くないんだろうが反省は、今やることを片付けてからだ。


「フェニックスだ!」

「くそ!歯が立たない」

「逃げろー!」


「逃げてもいいが武器は燃やす!」


 俺は地面スレスレをすべるように飛んで、兵士の武器を燃やす。

 兵士まで燃やしているかもしれないが、さっさと次のターゲットに狙いを定めているので、そこまで気にする余裕がない。


「フェニックス!魔術師を止めてくれ!」


 獣人族からの依頼に、文字通り飛んでいく。


「わかった!魔術師が復活したのか」


 次の魔法弾を、放とうとしている魔術師たちをさがす。


「よし!見つけた」


 魔術師相手なら、手加減せずに火を吹ける。

 ありったけの力で炎を吐いた!


「うわぁ!」

「なんて火力だ!」

「この威力を何発も放てるなんて、バケモノだ!」


 魔術師の結界を力ずくで破壊して、ダメージを与える。

 この戦場で、俺にかなうやつはいない。


 最高の気分だ!



 ◆◆◆

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