第6話 命を懸けて一戦
月 の 黒い 風 の 高い 殺人 の 夜 、 百 脈 の 島 の 中 で 沖 突 し 始め ます。 月 は 静まり返っ ていて、見えない 力 で 空気 を 凝縮 しているようだった。
禿頭 の 大男 は、眼に 殺伐 としたような 陰気 な 顔 をして、 山 のように立っていた。
柳 瑛 瑶 の 息 は 深く 、 表情 は 重かっ た。 柄 を 握っ た手は 力 が 入り すぎて 青白く 見えた。
筑 基期の 強豪 相手 には、「 久 守 必 失 、じっとしていてはいけない」と 油断 を 許さ なかった。
「 今日 は、この 奇術 の 能力 を 試し てみよう」ここに 柳 瑛 瑶 を 念じ て、 秘術 を 以 て 全身 の 法力 を 催 発し 、 霊威 を 振 働 して 筑 基 初期 の 境 に 迫る !
秘術 が 廻る と、 彼女 の 白い 肌 は、にわかに血の 色 をあらわし、たちまち 紙 のように 白く なって、この 秘術 は、 私 の 全身 の 血気 を、 法力 のように 逆さ にして、 今 、 一 戦 に 当っ た。
嬌 喝 して 宙 に 躍る と、その 前 には 霊力 をもって舞う 霊剣 が 霞み 、 波 が 岸 を打つ 音 がした。
「 滄浪 独 淨 、」 柳 瑛 瑶 は 十 指 綻 蓮 、 両手 の軌迹に 繁雑 な 法 訣 を 描い て、すぐ 一喝 した。
剣 を 前 にして、身を 后 ろにして、 人 剣 は 一体 のように、 一 発 で 最強 の 技 。その 姿 は 九天 から 逆さま にぶら下がり、 深海 の怒 竜 となって 男 に 襲いかかる 。
禿頭 の 男 は 鼻 を鳴らし、「 蛮夷 の 修 が、血を燃やす 秘術 を 心得 ているとは、不 完全 だが、その 通り だ」
「くたばれ」 禿頭 の 男 が 刀 を 前 にして、 沛然 は 法力 で 全身 を 貫き 、 空 を衝いて駆け上がったが、 両者 は 近づい た 刹那 、「血 影 元 魔 斬 」と 一喝 した。
「死ぬのは お前 だ!」
刀剣 相 接し て 四 野を 振 働 し、威 能 倒巻 十 里 風雲 !
一方 は 秘術 をもって 発 を 催す が、 短 期間 には 筑 基 初期 に比して 一縷 の 生命 力 を 発揮 し、 一方 の 境界 は 安定 して 余裕 をもっているが、それも 存立 せず、 双方 の 異種 格闘 技は、 一時 的 には 膠着 状態 を 呈し た。
すれちがった 瞬間 、 禿頭 の 男 の目にすっと 冷たい 穂先 が 光っ た。 左手 の 霊力 が 凝縮 し、 掌 を刃にして 上 の『 柳 瑛 瑶 』に向かって 空 を切った。
「まずい!」
目に見えぬ 数 の 刀 気が、 彼女 の 首 を衝いていき、 殺伐 とした 勢い になった。「 柳 瑛 瑶 」は 驚愕 し、あわてた 対応 に 白い 服 に 赤い 色 を 重ね た。
「この 秘術 はもう 限界 だ。このままではいけない。 柳 瑛 瑶 の目は 凶暴 な 色 をしていた。
その 指 は 自分 の 胸 に 連 点 の 数 をつけ、かろうじて 精 血 を追い込み、 左手 の二 本 の 指 を 揃え て血を引いて 刀身 の 先 から 剣先 まで撫で上げた。
刀身 が血を飲み、 途端 に 刀身 が 震え 、 剣 吟 が止まらなくなった。
「この 最後 の 一撃 で、死ぬか死ぬかを分けよう」
その 禿頭 の 男 は、 相手 の 顔 の 凄 さにゆがんでいるのを見て、 女 は 自分 に負けず 劣ら ず、と 感心 した。
「 送っ ていこう」 即座 に 法力 を 怪異 の 刀身 に 注ぎ込み 、 勢い をつけて 宙 に 沈む 。
『 柳 瑛 瑶 』は怒 竜 のように 轟き 下っ て、 神秘 の 男 のように 山 を抜いて、気は 万里 を呑む。
二度、 激しく ぶつかり合った 刹那 、目に見えない 勢い が 広がり 、 山崩れ や 石 が割れた。
空中 二人 はまるで 彗星 のように 地面 を衝き、 島 は 轟然 として 震動 し、 家屋 はことごとく 破壊 され、 谷 全体 が 砕け て五 丈 もの 深 さに 沈ん でいった。
巨 坑 の 底 で 柳 瑛 瑶 、かろうじて身を 支え てよろけて起きて、 内 傷 の 下 でなんと 生臭い 赤い 口 を吐いた!
左肩 には、目に触れる 傷口 から血が 流れ 、手にした 霊剣 は 半分 しかなく、 全身 の 法力 も 一 、二に足りなかった。
ところが 数 尺 の 彼方 に、 禿頭 の 男 のたくましい 体 が立っていて、その 胸 の 右 半分 の 霊剣 が 体 を透かして 通り過ぎ ているのに、 妙 に血が出ない!
「な・な、あいつは・・ 俺 に 剣 で 貫か れて・・死ななかった!」
「 汝 の 修 を 境 にして、これほどまでに 我 と 戦っ たことを夸りに、 汝 、 怨み を込め!」
男 は 胸中 の 剣 を抜き、 足踏み しながら、手にしていた刃を振り上げ、 猛然 と 斬り落し た。
切っ先 に 命 を 奪わ れて、 柳 瑛 瑶 はすでに 無力 であった。
追いつめられた 瞬間 、
一 本 の 飛剣 が 雷 の 速 さで 戦局 に 突入 し、 男 の 首 を取って去っていった。
一瞬 、 大男 ははっとしたが、落ちかかっていた 刀 が 方向 を変えて、 一瞬 、 頭 の 上 に 現われ た。
「ポン」。
衝撃 の 音 が 夜空 に 響き 渡り 、 怒り のあまり 顔 を上げると、 空 を切り裂いて 巨大 な 穴 の 中 へ 突進 してくる 人影 があった。
「 賊 だ、 先輩 を 傷つけ てみろ!」
宙 にいた 応 逸 明 が 一喝 し、 右手 を 爪 にしたかと 思う と、たちまち 炎 が 充満 し、それを 下 へ押すと、 茶碗 の 口 ほどの 火玉 が五、 六 個、 はげ頭 の 男 に向かって投げつけられた。
「また 一人 死ぬんだ!」 地面 に立っていた 禿頭 の 男 は 軽蔑 したような眼をして、蚊や 蠅 を 追い払う ように、その 火の玉 を 叩き消し た。
応 逸 明 はその 隙 を 狙っ て、「 柳 瑛 瑶 」をギリギリまで追いやった。
「 姉 さん、 安心 して 息 を 整え て。あとは 私 に 任せ て!」
「気をつけてくれよ。この 人 はかなり変わってる」
「うん」
応 逸 明 の 背中 を見ながら、 柳 瑛 瑶 は 心 の 中 で 黙考 し、すぐに 薬 を飲んで 回復 を 急い だ。
応 逸 明 の 歩く 速度 はいよいよ 速く なり、やがて 走り だしたが、 走り ながら 少し 離れ た 刀身 に手をかけると、火のように 光る 長剣 が 巻き返っ てきた。
二人 は 急速 に 接近 し、取っ組み合いになったが、 禿頭 の 男 のほうは、すでに 一 度は 対戦 しているが、 体内 の 法力 は 充分 で、 品 階 も 修為 も、 格闘 の 経験 も 一 枚 上手 であった。
しかし 応 逸 明 は、 最小 限 の 代価 を 払っ て 殺し を避けることができた。
対戦 中 の 応 逸 明 を見ても、火 属性 の 法術 や符籙の 数々 に 加え 、 突然 の 剣技 に 禿頭 の 男 はうんざりしていた。
禿頭 の 男 は 少し 離れ たところで 息 を 整え ている 女 を見て、どうやらこの 島 の 異常 はこの 門派 の 注意 を引いているようで、 目的 は 達成 しているのだから、これ 以上 つきあうのは不 心得 だ、とひそかに 思っ た。
禿頭 の 男 は 刀 を 振り回し て 応 逸 明 を 追い返し 、そのまま 宙 に飛び、 強力 な 法力 を 刀身 に 結集 させた。
応 逸 明 は、 彼 の 全身 の 霊力 が 激 働 しているのを見て、 何 かすごいことがあるのではないかと 警戒 した。
するとその 禿頭 の 男 は、 少し 離れ たところで 息 を 整え ている「 柳 瑛 瑶 」に向かって、 空 を 隔て て 一 振りした 後 、 急速 に 空 を切って去っていった。
「まずい!」
目を閉じて 息 を 整え ていた『 柳 瑛 瑶 』は、 刀 の 音 に気づいていないようだった。
焦っ た 応 逸 明 は、歯を食いしばって 全身 の 法力 を 運 働 させたが、なんと 后 発 の 先鋒 が 彼女 の 前 に 突進 してきて、すでに 屏 となって、その 大 迫力 の 刀 気に立ち向かった。
衝撃 のあと、目を閉じて 膝 を組んでいる 女 が無事であるのを見てほっとした 応 逸 明 は、血を吐き、目を 真っ黒 にして、 背中 に二 尺 ほどの 傷 を 骨 までつけて 倒れ た。
二 日目の 朝 、 水平 線 の 上 では 太陽 が 昇り 始め て 万丈 の 光 を 放ち 、 夜 を 追い払っ た。
応 逸 明 が目を覚ますと、 芝生 の 上 に 横たわっ ていた。 少し 手前 で焚き火の 残り火 が 熱 を 発し ていた。
彼 は 周り を 見回し て、 柳 瑛 瑶 が 遠く ない 所 でじっとしているのを見つけて、 旭日 がゆっくり 升 るのを見ていて、 日光 は 彼女 の 体 に 一面 の 金色 の 赤い とても 美しい です。
起き上がろうとすると、 背中 に火のような 痛み が 襲っ てきて、 牙 を剝いた。ふと見ると、 服 の 胸 のあたりに、 白い 布 がいくつもくずれている。
結び目 の 布 には 金 の 模様 や 襞 がたくさんついていて、 背中 には 痛み とともに 涼し げなものがあって、気を 失っ たときに手当てをしてくれたのだろうと 思っ た。
「お目覚めですか」そして 柳 瑛 瑶 が 口 を 開い た。「わからないことがあるんです。どうやって 島 中 に 入っ たんですか?」
応 逸 明 は 軽く 笑っ て、「 姉 さんは 昔 は 清 習ばかりしていたから、 宗門 のことはほとんど知らなかった」と言って、 彼女 の 右側 に 並ん で立った。
日を追うごとに、 逸 明 と「 柳 瑛 瑶 」の 談義 に 応ずる 。 彼 自身 の 身分 や 百 脈 島 の 事情 はもちろんのこと、 宗門 の 密談 やエピソードも 数多く 語ら れている。
「ご 応 弟 さまに、この地のことを 宗門 に知らせる 方法 があるでしょうか」
佳人 の問いに、 逸 明 は 少し 唸っ たが、「ええ、もちろんあります」と 納得 した。
それから二 枚 ずつの符を 空 にあげ、 二 つの符を 一 つずつ 離し て、 二 つの 方向 に 馳 け去った。
柳 瑛 瑶 はそれを見て、 踵 を 返し て 島内 に向かって 歩い て行った。「 昨夜 は 時間 が 迫っ ていました。 今 からもう 一 度 詳しく 調べ てみましょう」
彼女 の 声 はあの日のように 冷たかっ たが、 応 逸 明 が 耳 にし 始め た 頃 の 寒 さは 少し は引いていた。
彼 はふと 相手 の 裾 の 右 に 布 が 一 枚 欠けているのを見た。 白地 に 赤い 紋 の 刺繍 靴 が目立つ。
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