弟に王位と婚約者をとられた王子は旅に出る
@masaki213856
第1話
私は何を見せられているのだろうか?
「シルビア・アネーモ公爵令嬢!!僕はずっと貴方を想っていた。どうかこの気持ちを受け取ってはくれませんか?僕は貴方を必ず幸せにします。」
「サイモン様・・わ。私も貴方の事をずっとお慕いしていました。こんな私でよろければ喜んで貴方の元へ行きます!!」
「アネーモ穣・・」
「シルビアとお呼び下さい」
「シルビア!!」
「サイモン様!!」
そうして抱き合う私の婚約者と弟・・なにこれ??
★★
私の名はエドワード・フォン・クリスタリア
この国クリスタリア王国の第一王子である
本日私は自身が通う王立学園の昼食休憩の時間に溜まっていた生徒会の仕事を片付ける為速足で生徒会室に向かっている最中、学園の裏庭へと向かう愛しの婚約者、シルビア・アネーモ公爵令嬢の姿を見かけた為後を追った。
理由?生徒会の仕事や王子としての公務が忙しく、疲れた子の心を愛しいシルビアの笑顔で癒してもらおうと考えたのだ。
そうしてシルビアの後を追い裏庭のベンチに座っているシルビアを見つけた私は声を掛けようとした時だった。
「アネーモ穣」
「殿下・・・」
私のいる方の反対側から現れたのは私の一つ下の弟、サイモン・フォン・クリスタリアだった。
サイモンの姿を見るや笑顔をほころばせるシルビア
その後二人は仲睦まじい様子でベンチに座った。
まあ?自分の婚約者と弟の仲がいいことは嬉しいことだ
きっとシルビアは私の事でサイモンに相談しているに違いない
もうすぐ私の16度目の誕生祭がある、シルビアはサイモンにプレゼントの相談をしているのだ。うん。
誰に言っているのかわからない説明を心の中でする私・・
だが私の存在に気づいていない二人は私の希望をこ悉く壊していく
最初に口を開いたのはサイモンだった
「僕は不安なんだ。本当に王としてみんなを導いていけるのか」
弟のサイモンはとても優秀だ
魔法も剣技も優秀で、政治面にも強い
国王である父はそんなサイモンに目を掛け王太子の地位を就けた
対する私は魔法も剣技も人並み、政治方面にはそれなりに自信はあるがサイモンと比べると見劣りする。
「殿下・・」
「この場ではサイモンと呼んではくれないか?」
「ですが」
「頼む」
「・・・わかりました。サイモン様」
サイモンの懇願にシルビアは折れた
いやにあっさりしていた様な気がしたが今はそれどころではない
不安を口にするサイモンの手をシルビアが握っていたからだ
私のシルビアの手がサイモン《別の男》に触れている
その事がとてもむかむかした。
その後もサイモンが不安を口にし、シルビアが励ますというやり取りが続く
そしてついに
「サイモン様の不安もわかりますわ。私も不安なのです」
「アネーモ穣も?」
「はい」
シルビアは意を決したように口を開く
「エドワード様はお優しい方です。ですが私はあの方を好きになることが出来ないのです」
「なっ!?」
シルビアの発言に思わず声を上げてしまった私はすぐに手で口を押え物陰に隠れる。幸い二人には聞こえてなかった様子。ホッと息を吐いた私にシルビアのナイフが突き刺さる。
「あの方はサイモン様に少しでも近づきたいのか執務などを精力的に行ってきました。その事自体は大変すばらしい事だと思います。ですが執務や公務ばかりで私と接して頂く時間が短く、時たま思うのです。この方は私を愛してくれえているのか?と」
めちゃくちゃ大好きですけど!!
驚いた・・シルビアがこんな不安を抱えているなんて・・
これからはシルビアに寄り添わなくては!!
若干、気になる部分はあったがそれはこの際無視しよう。
大切なのはシルビアだ
「それにあの方はなんだか頼りなく感じてしまうのです。私は結婚するならサイモン様のように頼りがいのある方と添い遂げたいですわ」
え・・?
今なんて?
「・・実はずっと私はサイモン様の事をお慕いしていました。本当は婚約だってサイモン様としたかった!!何度お父様に訴えた事か!!なんで私の隣にいるのがあんな、とりえもない出来損ないの王子なのですか!?私は、私はサイモン様とこの先を歩んでいきたい!!貴方の横で笑っているのが私ではないなんて、我慢できませんわ!!」
「アネーモ穣」
シルビアの言葉に私は胸を押さえてうずくまった
そんな・・
私たちの婚約はアネーモ公爵家からの希望でなったのではなかったのか?
アネーモ公爵家からはシルビアが強く希望したと聞いている
その話を聞いて私は嬉しかった
父や母、そして周りの貴族や配下達、そのすべてが弟のサイモンに傾倒していた
誰も私を見てはくれなかった
そんな中ただ一人、私を必要としてくれたのがシルビアだった、そう思っていた。
だから私はシルビアに恥ずかしくない男になろうと公務や執務に励んだ
確かにサイモンには勝てないかもしれないが少しでも君に相応しい男になりたかった。
そのシルビアにまさかあのような事を言われるとは・・なんと滑稽だろうか?
私は地面に膝を付き、泣いているのか笑っているのかわからない顔で二人を見ていた。
そして場面は冒頭に戻る。
二人は抱き合った
長く深く、ようやく想いが通じ合ったのだそれを再確認するかのように
そして少し離れ、二人は唇を
「っ!!ファイアボール!!」
そこで私の心は限界を迎えた
私は炎の玉を発動し二人に投げた
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