第3話

そんななか僕は、あの子の自殺について以外、考えることができなかった。何で自殺なんて…。そればかり考えてしまう。自殺とは決まっていないことぐらいわかっていたけれど、僕は冷静では無かった。

…やっぱり、あいつらのせいか。

そうとしか、考えられない。

「なあそこの…静中、だっけ。少し聞きたいことがある」後ろの転校生が話しかけてきた。

「え、うん。僕は静中勇斗。よろしく。で、聞きたいことって?」

「ああ、宜しく。質問なんだが、本当にいじめは無かったのか?」

「え…」一瞬、また怒りを思い出す。

「女子は無いと言っていたが」

「あったよ。女子が知らなかっただけだ」

「そうか。無いにしてはさっきの反応がおかしいと思っていた」反応ってなんのことだろう。そんな僕の疑問を見かねたように思原くんはこう言った。

「それは、気にしないでいい」

「わかった」まあ、言いたくないことぐらい、あるだろう。

「それよりお前は、いじめのせいだと思っているのか」

「それ以外、見つからない」

「そうか。あれはいじめによる自殺じゃないぞ」

え?頭が混乱した。

「だったらなんなんだ。自殺するほど思い詰めてたってことなんだろう?違うのか」

思ったより声が大きく響いた。抑えられない。教室が静かになっている。

「違う。そもそも、自殺ですらない」

思原の言葉は、静かな教室に、よく響いた。

「じゃあ、なんなんだ」

「それは、まだ言えない。まだはっきりとわかっていないからな」

「じゃあ、何で断言できるんだよ」

「それは、言えない」思原は、飽くまで無表情を貫いている。

「言えないことばっかりだな」

なのにこの言葉で、思原の顔が少し歪んだように見えた。

「そうだ。だから調べる」

「ハッ。だったら調べてみなよ。そんなの無理だと思うけど」

 自分でも、何故こんな強気な言葉が出たのか、わからない。

「分かった。じゃあ、屋上への入り口を教えてくれないか」あれだけ否定しても構わず接してくる思原に、少し驚く。

「‥あっちの階段を上ればいける。でも今は入れないと思うよ」

「それでもいい」

 ちょうどチャイムがなり、思原は教室を出ていった。僕も頭を冷やすため外へ出た。教室はざわめいていた。

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