『天才少女』と『変態少年』が繰り広げる放課後頭脳戦。
絢郷水沙
第一章:数当てゲーム
01:プロローグ。絶対に譲れない闘いがそこにはあった。
「いいや、絶対にこっちだ!」
特別棟の四階、『数学演習室』の札が掲げられた教室に二人の男女の声が響く。
声の主の一人は、学ランを着た短髪の青年――
その部長の発言に怪訝な眼差しを向けるのは、彼の向かいに立つ少女。
「いいえ、絶対にこっちです!」
肩甲骨のあたりまで伸ばした黒い髪をツインテールにしている彼女の名は、
そんな二人が今、放課後の部室にて何やら“とある派閥”に関して討論を繰り広げていた。
「絶対にこっちですって! それなんて、その……形が卑猥というか……」
「ヒワイってなんだよ」
「ですから──ッ!」
言いかけて頬を少し赤らめたチロは黙ってしまう。と、そこへ。
「失礼します……」
扉を開けて入ってきたのは一人の少女。
彼女の名は
そんな彼女は、うつむきがちにのっそりと部室に入ってきた。なんだが気分を悪そうにしている。
「オッスースズ! ねえ聞いてよ、センパイってばさ───」
チロは鈴を見るなり愚痴りだす。愚痴の内容はさっきまでの雀との言い争い。鈴の方はため息をつきながら、
「あ……、うん……。そうなんだね……」
と曖昧に受け答えしている。心ここに在らずという感じだ。
「おう鈴。ていうかどうした、顔色が悪いぞ。何かあったのか?」
雀がそう気にかけるも、
「へ? あ、いえ……、なんでもないです。気にしないでください」
と鈴は近くの机に鞄を置く。その間もチロは鈴のそばで愚痴を続ける。だがしかし、どうやら上の空の鈴の耳にはその言葉が届いていないようだった。
「でさーセンパイはこっちがいいとかって言うんだけどさ、普通こっちじゃない? てかさ」
「いいや絶対こっちなんだって!」
再び言い争い始める二人を尻目に、一人ため息をつく鈴。
「もう! なんでわかってくれないんですか!」
「いやいや、それはこっちのセリフで!」
「あのー、お二人さん」
ふいに鈴に声をかけられ、二人はすっと黙った。鈴はそんな仲のいい二人に、沈んだ声ではあるが、どこか楽し気に提案した。
「そんなに譲れないなら、ここはひとつ、『ゲーム』で決着をつけてみませんか?」
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