第14話 タマミで止まらないラーブ

 任せたって言ってラウルちゃん行っちゃったけど、どうしよう。


 この人絶対に止まらないじゃん。


 今もなんかベタベタと触ってくるし。ここ多分ダンジョンだよ? 危機感持たなくていいの?


「ねえ、可愛いね。どこに住んでるの?」


「さ、さあ?」


「困った顔も可愛いね」


「あ、あはは」


 どうしよう。本当にどうしよう。


 助けないとって思ったけど、助けてよかったのかな。


 これはこれで敵なんじゃないかな。


「そんなことはありません。祈りが届くほどの人材はなかなかいないのです」


「おっ! わかってるじゃん。って声変わった?」


「あ、今のは」


「大丈夫ですよ。彼女にもすでに神を割り当てました。これにより、状況は理解してもらえるでしょう」


「そういうこと。よろしくね」


 私の神様の言う通り、目の前の女性の背後に新しい神様の姿が現れました。


「すごい! 声が聞こえる!」


 目の前の女性はキョロキョロと辺りを見渡しています。


 やっぱり、ついてる本人には見えないんだね。


「あたしはあなたの神様! ここにいる三人は魔王を倒すために神から力を与えてもらってるんだ! あ、三人目はあなた」


「私!?」


「そう!」


 急なことなのにキャッキャッと子供のように喜んでいる。


 さっきまで走り回ってたのに元気だな。


 私なんて、庇ってくれた冒険者の人たちがいなかったら、生きてたかどうかも怪しいのに。


「気にすることはありませんよ。対処できるかは人それぞれですから」


「神様」


「それに、今の状況について詳しいのはタマミの方です。目の前の女性に説明してあげましょう」


「はい!」


 私は自分の神様に説得される形で女性に話す決意して、一歩前に踏み出しました。


「あの!」


「なあに? 私に付き合ってくれる気になった?」


「神様は信じてくれたみたいですけど、私たちがここに来た理由を聞いてもらってもいいですか?」


「いいよ! もちろん協力するよ!」


「まだ何も言ってませんよ?」


「いいのいいの! どうせ誰もいなかったら逃げきれなかったんだし、私のことは好きにしていいよ」


「いや、何もそこまでは求めてないです」


「何? 何考えちゃったの?」


 なんだろう。この人とコミュニケーションを取るのはすごい疲れる。


 ずっと楽しそうだけど、ずっと手のひらの上で踊らされてる気分。


「タマミ。頑張って」


「はい」


 固まってる場合じゃない。


「あ! まずは自己紹介からかな? 私はラーブ・ロンベリアあなたは?」


「タマミ・ユーレシアです」


 それから私はラウルちゃんから聞いたことをラーブさんに話しました。


 妹を失ったこと、神様の力で生き返ったこと、魔王を倒そうとしてること。


 そして、私が協力してることも。


「そっか。なるほどね。じゃあ、あの子が私の気を引くために、こんなところへ連れてきて、助けて風を装ってるわけじゃないのね」


「え?」


「冗談冗談。真剣にしないで」


「でも、そうですね。私はそもそもダンジョンなんて入れないのに、どうして気づいたらダンジョンにいたんだろう」


「真剣にしなくていいのに」


 ラーブさんはふざけて言ったみたいだけど、これは重要なことな気がする。


 でも、ラウルちゃんも神様に連れられたみたいだし、そもそも今まで見たこともないし。


 いや、勇者パーティが来たことはあったから、その時にいたのかな? あれ? それっていつだっけ? 全員いたっけ?


「ラーブさんはここに来るまでの記憶ありますか?」


「ないよ」


「何も?」


「うん。ああ、もちろん記憶はあるよ? でも気づいたらここにいて死神と追いかけっこしてた」


「ですよね」


「タマミちゃんも?」


「はい」


 なんだろう。本当に気づいたら来てた?


「多分そうだと思いますよ。タマミが一人で来ることはあり得ない。誰かと来ることもあり得ない。おそらくラーブも。なら、これは誰かにやられた。悪意の行動。だからこそ私たちは人間に協力して、事態を解決しようとしてるんだと思います」


「ラウルちゃんの神様が真っ先に動いたのか」


 そうか。魔王と関係があるかわからないけれど、魔王以外の悪も倒すためにラウルちゃんは神様と協力して戦ってるんだ。


 私もできるなら協力しよう。


 それに、今のままだとラウルちゃんがラーブさんにそそのかされちゃう。


 妹思いなくらいだから、勢いで困ってることを装われたら騙されちゃう。


 ラーブさんは悪い人じゃないだろうけど、冗談でおかしなことすぐに言うから。


「何? 私の顔に何かついてる?」


「いいえ、ラーブさんにも神様がついたなら、何か力を渡されたんじゃないかと思って」


「力? そうなの?」


「もちろん! ラーちゃんにピッタリのスキルだよ!」


「今あるのとは別?」


「うん! そーれ!」


 なんてテンションの高い神様だ。


 落ち着いてるだけが神様じゃない、いろいろな神様がいるんだな。


 でも、ラーブさんの信じる神様だと言われると納得できる気がする。


 なんて、私が神様に気を取られていると、ラーブさんの手元に気づくと今までなかった何かが握られていた。


「何これ」


「それがラーちゃんの力! ゴニョゴニョゴニョ」


「それはすごい! まさに私ピッタリの力!」


「でしょ? ラーちゃんのことはなんでもわかるからね」


「さっすが神様!」


 全然聞こえなかったんだけど。


「私もです」


 どうやら、神様同士でも常に意思の疎通ができてるわけではないらしい。


 それとも、ラーブさんの神様があえて隠してるのかな?


 どちらにしても、固そうなものを握ってるから、死神から逃げ回っていた身体能力と合わせて戦うとか。


 ラウルちゃんもいるし、私も二人の強化はできるみたいだから、これで百人力だね。


「それじゃ、何か困ってるみたいだし協力しに行っちゃおう!」


「賛成!」


「あ、ちょっと」


 神様に乗せられてラーブさん走ってラウルちゃんの方に行っちゃった。


「大丈夫かな」




 ことのあらましを話した私はラウルちゃんに頭を下げた。


「ごめんね。見ててって頼まれたのに」


「いや、タマミは悪くない。これは仕方ない。けど、この状況はよくわからない」


 ラウルちゃんはそうして、死神から放たれていた光が収まった足元を凝視してるんだけど、私もよくわからない。


 なんだろうこれ。


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