第6話

 日が傾き始め、窓からオレンジの光が畳を染めた。心を落ち着かせるために何度も深呼吸した。泣き疲れて眠くなってきた頃。

「大丈夫、ですか?」

 襖を10cmほど開けて覗いていたひなに声をかけられた。

「大丈夫、ですけど……。ずっと見てたんですか?」

「あ、いえ、今ちょうど様子を見に来たところで。」

 あわあわとするひなが、ぼやけた世界から現実に引き戻してくれるような気がして、笑みが溢れた。

「……ひなさん、俺配信やめます。」

「え?」

 唐突に告げられた宣言に目を見開いて驚くひなに構わず続ける。

「冬夜のために配信始めたんです。また会って話すために。でも、冬夜はもう、いないし、続ける理由がわからなくなっちゃいました。」

 この先何を目標にしていけば良いのかわからない。冬夜はこの世にいない。その事実だけで、配信する気力すら湧かなかった。

「……私は、聞きたいですよ。たとえつくしさんが兄に会うために配信を行なっていたとしても、楽しみにしているリスナーは多いと思います。」

 ひなは真っ直ぐにこちらを向いて、真面目な顔で話す。

 気持ちはありがたいけど、

「それでも、一度休みます。心の整理ができたら、また始めるかもしれません。」

 このまま喪失感を抱えながら、楽しい配信ができる自信がない。それに、配信を通して冬夜にみつけてもらうことを目標としていたのだ。一区切りつけるにはいい時期だと思う。

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