第6話
日が傾き始め、窓からオレンジの光が畳を染めた。心を落ち着かせるために何度も深呼吸した。泣き疲れて眠くなってきた頃。
「大丈夫、ですか?」
襖を10cmほど開けて覗いていたひなに声をかけられた。
「大丈夫、ですけど……。ずっと見てたんですか?」
「あ、いえ、今ちょうど様子を見に来たところで。」
あわあわとするひなが、ぼやけた世界から現実に引き戻してくれるような気がして、笑みが溢れた。
「……ひなさん、俺配信やめます。」
「え?」
唐突に告げられた宣言に目を見開いて驚くひなに構わず続ける。
「冬夜のために配信始めたんです。また会って話すために。でも、冬夜はもう、いないし、続ける理由がわからなくなっちゃいました。」
この先何を目標にしていけば良いのかわからない。冬夜はこの世にいない。その事実だけで、配信する気力すら湧かなかった。
「……私は、聞きたいですよ。たとえつくしさんが兄に会うために配信を行なっていたとしても、楽しみにしているリスナーは多いと思います。」
ひなは真っ直ぐにこちらを向いて、真面目な顔で話す。
気持ちはありがたいけど、
「それでも、一度休みます。心の整理ができたら、また始めるかもしれません。」
このまま喪失感を抱えながら、楽しい配信ができる自信がない。それに、配信を通して冬夜にみつけてもらうことを目標としていたのだ。一区切りつけるにはいい時期だと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます