第8話 アルデシリアの「目」
「せ、聖女殺害!?」
ジャッジの口から放たれた衝撃の言葉。
俺が人殺しなんてする訳…いやまあ暴漢たちは殺しちゃったけど、アレが"聖女"なわけないし…。
「え?この方があのアリアネ・ファンデンベルク!?何かの間違いじゃ……」
「いや、髪が短くなってるから気づかなかったけどあの手配書と同じ顔だわ!聖女選に敗れた腹いせに、ライバルのロンバート家をボコボコにしたっていうとんでもお嬢様!まさかアルデシリアに居るなんて!」
「はあ!?手配書!?なんじゃそりゃ!?濡れ衣だよ濡れ衣!」
ロンバード家と言ったら、アリアネが魔術の才能を持っていなかったお陰で代わりに聖女になれた"ジーナ・ロンバード"が居る家か。
え?それで、俺がアイツらをボコボコにしたことになってるの?意味が分からないよ?
「しらばっくれるのはよせ。私の魔術の前では誤魔化しなど通用しな……ん?」
「どうしたの?ジャッジ」
訝しげに首をひねるジャッジに対してフィーラが声をかける。
「……【
「だからそうだって言ってるだろ!今から俺に起こったこと全部説明するから、取り敢えずこの鎖解いて!」
「…ああ」
鎖は煙が掻き消えるようにフッと消える。
どうやら俺の訴えにジャッジは素直に応えすぐに魔術を解いてくれたらしい。
…なんだかよく分からないが、彼のデウサイアルなる魔術によって図らずとも俺の潔白が証明されたのだろうか。
先ほどユーバックが言っていた「ジャッジ様の魔術が発動したということは不法入国は紛れもない事実」という言葉と合わせて考えると、彼の魔術には真実を暴く何かしらの力があるのかもしれない。
身体を拘束する鎖もなくなり自由になったところで、俺は3人に今までのことをすべて話した。
今日成人を迎え魔術適性検査を行ったこと、そしてその結果が最悪だったことにより家を追放されたこと、追放先でこの魔術に目覚めたこと、などなどだ。
「ちょっと……帝国が発表してたのと全然違うじゃない!」
「帝国の発表?」
「ええ、つい3日前に帝国は『アリアネ・ファンデンベルクがロンバード家の寝込みを襲撃し、多数の死傷者を出した。次期聖女に決まっていたジーナ・ロンバードは行方不明で、帝国上層部は恐らく同氏によって殺害されたと見ている。そしてこの凶行の動機は"勅撰聖女"に選ばれなかったコトによる乱心』……と言った内容のお触れを出したんです。これと共に、貴女の手配書も周辺国家に張り出されました」
あいつら俺が居ないのを良いことに滅茶苦茶やってるじゃん…。
しかし、3日前というのがどうにも解せない。俺が森に転送されたのはどれだけ長く見積もっても30分前くらいなものだ。
転送完了時間を弄るような細工がなされていた、とかであろうか。
3日かけてゆっくりと転送している内に裏で色々な準備をする…うん、あり得そうだな。
ただ、俺の転送先に暴漢を用意していたのを考えるとアイツら視点では既に俺を始末したことになっているはず。
つまり周辺国家になした指名手配はただのポーズ。
「私たちはこんなに本気なんですよ~」と知らしめる為だけにやった、形だけの手配書だ。
「ファンデンベルク家の奴らめ、魔術を使えないという理由だけで実の家族を追い出すだけでなく、聖女殺人の罪を擦り付けることまでするとは。とんでもない外道一家じゃないか…」
不快感を凝縮したような冷ややかな口調でジャッジはそう呟く。
「…わかってくれたか?」
「ああ、理解したよ。そしてすまなかった。私としたことが虚偽の情報にまんまと踊らされていてしまったらしい」
「私もごめんね?アリアネちゃん……」
ジャッジは深く頭を下げ、それに続くようにフィーラもペコッとお辞儀をした。
俺が逆ギレのまま人様を殺める荒くれものだという誤解はどうやら無事解けたらしい。
「…そして無罪だと分かった以上、お前は私たちの保護対象だ。不当な理由で国を追われた少女を放っておくわけにはいかん」
「保護対象?」
「そうだ。お前の身柄は"
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