玉の肌

@pc03

第1話 前半

彼女のことが好きだ。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの反対だ。

彼女のことが好きになったら、一挙手一投足が愛おしく感じる。

セーラー服の映える陸上でよく日焼けした肌、ガタイのいい筋肉のついた肩回り、少し傷んでそうな短めの髪に、親しみやすさを覚えさせるそばかす。

常に陽気でひまわりみたいな人だ。


彼女は可愛い。

ちなみに、これが私個人の意見でないことをここで明示させてもらおう。

十人いれば七人は彼女に好印象を抱くはずだ。


今までは、そんな彼女の後姿を見ているだけであった。

しかし、私は、ひょんなことから

彼女と文化祭の準備を行うことになったのだ。


何たる栄光!!

常日頃から募らせていた好意が実を結んだ瞬間である!!


などと喜んでいたのだが、

これまで一度も喋ったことのない相手と一緒になったところで、

会話が続くわけが無く、一週間がたってもあまり進展が無い。


そんな中、個人的にいい思いをした体験について語ろうと思う。

あれは、二人で各クラスの出し物の書類を確認していた時のことだ。


好きな映画とかあるの?

机で向かいに座っている彼女に私は問いかける。


……シャイニング

そう少し恥ずかしそうに言った彼女に対して、

私はめんたまが落ちるくらい眼を開いたアホ面をさらしていた。


なぜなら、その映画は私のお気に入りの映画でもあったからだ。


いいよんね!あの映画!

私は食い気味に、飛びついて答えた。あの時の私のテンションの上がり具合は、異常だろう。なにしろ、難攻不落の城塞のほころびを見つけたのだから。


しかし、急に血相を変えて、良く知らない男が食いついてきたので、怖かったのであろう。彼女の表情は、少し困惑して、おびえているように見える。


いけない。いけない。オタク特有の興味のあるものは熱く語るを抑えなければ。

私はボンド。ジェームズボンド。彼女をエスコートするのだ。

そんなことを心で思いながら、彼女と私的には楽しい時間を過ごした。

成果は上々。会ったら会釈する程度の仲から、冗談として、コンプレックスをつついても許されるくらいまでにはなった。(ちなみに、彼女はそばかすがコンプレックスらしい)


お互い仕事があらかた片付いて、私は帰路へ。

彼女は一回部活に顔を出すといって別れた。


その後私は、もう一度彼女と作業を行った教室に戻ってきた。

彼女の残り香を堪能する為ではない。

自転車のカギを落としたためだ。

この教室に来る時には、持っていたのでここで落としたのであろう。


しかし、小一時間探していても見つからない。

辺りは薄暗くなってきており、時はまさしく逢魔が時。

中々見つからないので、だんだんとムキになってきた。

制服の膝が汚れるのが嫌だが四つん這いになって探した。

こんなところを誰かに見られたら大変だなと、のんきなことを考えながら床をなめるように探していたら、教室の扉が開いた。


私は咄嗟に頭を下げた。


ここは第二理科室である。机は普通教室のものとは違い、机一つが細長く四人掛けなので、頭を下げれば見つからない。

それに加えて、私が今いるのが教室の中でも左奥であり、開いた扉からは丁度一番遠いところになっている

別段、やましいことをしていたわけではないが、

放課後。空いている教室で、それもその教室の隅で四つん這いになっている男子高校生。


やばいやつだろ。

いくら正当な理由があったとしても、こんな姿を人に見られたくない。


しかし、急に頭を下げたものだから、誰が入ってきたのかまでは分からなかった。

できれば、すぐに出て行ってもらえるとありがたいのだが、出て聞く気配がしない。

そうなると、誰が入ってきたのか気になる。


ゆっくりと机同士の間から人がいるであろう場所に目線を向ける。

本日二度目のめんたまが飛び出すかと思った。


彼女だ。

それも制服を脱いでいる。


ここからは、私の仮説のなのだが、

部活に行くにあたって制服から練習着に着替えなくてはならない。

しかし、部室棟とグラウンドの間に学校があり、端から端まで行くには割と距離がある。

そこで、荷物を持って部室棟に行き、そこで着替えてグラウンドに行くよりは、

教室で着替えてから、そのまま荷物を持ってグラウンドに行く方が効率と考えたのではないかと考察する。


そんなことはどうでもいい。

意中の相手が目の前で着替えているのだぞ!


彼女の目の前にセーラー服が脱いで畳んである。

どうやら、これから白いインナーを脱ぐようだ。両腕を交差して、両の手をそれぞれのインナーの裾に当てた。

そこから、するりと腕が上がりインナーの裏地が表に顔を表す。

腕とは反対に日焼けしていないお腹は白い。

無駄な脂肪がなく、鍛え上げられているがどこか柔らかさを感じるお腹。実に背徳的だ。

そのまま腕が上がり、顔を隠す。それと同時に黒いスポンサーブラが目に入る。

胸は年相応なのだろう。腕を上げて後ろに反っているので、肋骨が主張されていて実に官能的。個人的にはここがグッと来た。


彼女の動きがそこで止まった。

何故か見ている私が、固唾を飲んだ。


体を縦横に動かしている。

どうやらうまく脱げないらしい。

んーんーと可愛いらしい声を上げながら、ズルズルと頭をインナーから抜いて服を脱いだ。一仕事終わった風の顔である。



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