由奈子とやらは、たまにギャルっぽくなく

 なるんだよなー。

 

 ま、そんな事どうでもいいか。

 

 ってか、さっきオレ…ギャル抱きしめちゃ

 ったな。

 オレデブだし汗臭かっただろうなー。

 きっと今頃キモくさとか言って笑われてん

 だろーな。

 

 ははは…


 しかも、由奈子ってやつはやたら男にあた

 りがきついんだよなー。

 

 数日後の放課後

 あー、はらぺこー。

 歩くのだりーと思いながらも仕方なく下校

 中。

 

 由奈子とやらが絡まれていた。

 

 …

 

「いいじゃん。遊ぼうよー。オレギャル好き

 なんだよ」

「やめてください」

「えー、どうせ暇じゃん」

 

 …

 

 

 このまま通り過ぎようとしたけどやっぱり

 オレは…

 

「あの、この人ギャルじゃありません。それ

 にオレデブだけど空手得意。どうです?お

 相手願います」

 と言いながらジャンプして構えた。

 デブだからジャンプするとドスンってなる。

 

 その効果があってか、見事に撃退すること

 に成功した。

 

「あ、オレら今からバイトだった。」

 と言いながらそそくさと帰って行った。

 

 なのでオレも帰ろうとした。

 

 すると由奈子とやらが、目をウルウルさせ

 ながら

「あ、ありがとう。やっぱりすごいね」

 とお礼を言ってきた。

 

 …やっぱり?

 

 いつもは、友達とギャーギャーうるさいく

 せにこういう時、意外と弱いな。

 

 オレは軽くうなずいてその場を立ち去った。

 

 …オレなんでさっきこの人ギャルじゃあり

 ませんなんて言っちゃったんだろうな。

 

 …はぁ。

 ジャンプしたからはらぺこ。

 

 家に帰りバームクーヘンを頬張る。

 はぁ。

 ほんのりかおるバニラの風味がなんとも言

 えない癒しだわ〜。

 そしてモサモサになった口の中に水を流し

 こむ。

 

 これがまたたまらないのだ。

 

 

 それから数日後。

 またあの由奈子とやらが下校途中にいた。

 

 多分帰る方向が同じなんだろう。

 

 でも、なんでしゃがんでるんだ?

 

 近くまで歩いて行くと…

 

 ニャー、ニャー。

 猫が鳴いていた。

 

 あ、由奈子とやらは野良猫に捕まったんだ。

 

 …そのまま放置して帰ろうとしたけどやっ

 ぱりダメだ。

 

「その猫、野良?」

「えっ、うん。そうみたい。どうしよう」

 すごくかなしそうな顔の由奈子…とやら。

 

 

 オレは猫を抱き抱えた。

「うちに猫一匹いる。だから増えても大丈夫

 だから」

 と、オレは振り向きもせず由奈子とやらに

 言った。

 

 すると、

「ありがとう‼︎」

 と、お礼を言われた。

 

 …なんか学校にいるギャルの由奈子とたま

 にギャルじゃない由奈子がいるから調子狂

 うな。

 あいつ、二面性あるのかな。

 

 ま、いいか。

 

 それにしてもこの猫かわいいな。

 

 うちの先住人とも仲良くしろよ。

 子猫の頭をナデナデした。

 

 

 次の日、やっぱり学校でうるさくギャハハ

 と笑い合うギャルども。

 

 オレはいつものようにじっと座っていた。

 

 …あー、はらぺこ。

 

 

 そして下校。

 

 歩くのだりーけどご馳走が家で待っている。

 

 あー、やっと唐揚げパラダイスの時間‼︎

 さっさと帰って唐揚げ、唐揚げっと。

 …思ってたらまた由奈子。

 

 …今度はなんなんだよ。

 と思ったらいきなり由奈子ってやつがオレ

 に向かってきた。

 

「あのっ、昨日は猫ちゃんありがとう‼︎これ、

 猫ちゃんにどうぞ‼︎じゃ‼︎」

 と、あっという間に行ってしまった。

 

 …やっぱりギャル語じゃなかったな。

 見た目はバリバリのギャルだけど…

 ってか、学校で渡してくれればよかったの

 に。

 

 でも、どうやらあの由奈子って人は何か…

 何か理由があってギャルになりきってるの

 かもしれないな。

 

 

 それにしても律儀だな。

 わざわざ自分の猫じゃないのにこんなにど

 っさりと。

 

 ま、悪いやつじゃなさそうだな。

 

 

 続く。

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