第151話 旅出
こちらから出した、図書館での調査、及び重要書籍の筆写に関しては、問題なく許可の返事が集まってきているが、一国だけ少し、趣の違う返事がやってきていた。
「聖女様、御自らご依頼にこられたし」
要は直接、頼みに来いという訳だ。
「それはどこなのかしら?」
報告に訪れたラクシンにユリシスは問い掛ける。
「ランド王国でございます、お姫様」
ラクシンもランサやロボにならって、ユリシスをそう呼ぶ。何でも呼んでいて心地が良いらしい。ユリシスに呼ばれ方にこだわりはない。名前で呼ばれても平気なくらいだ。
「お姉さまのところね。どうしましょうか? 来いというのなら行かない訳には行かないわね」
ランド王国にはユリシスの長姉であるネスターが嫁いでいる。久しぶりに顔も見たいし、部屋の中で閉じこもって政務ばかりの日々にも刺激が欲しい。
ただ、来いと言われたから行くでは理由として少し弱い。
「ラクシン、何かこじつけはできないかしら?」
ラクシンにはどうやら腹案があったようで、即座に応えが返ってくる。
「まだ多くの国々に司書を送り出しておりません。姫様が帯同して各国に赴くというのはいかがでしょうか?」
いい案だ。聖女が直接赴く理由としては申し分ない。ランド王国との件は別に公にする必要はないのだから、聖女自らが丁重に依頼に来たという体裁は礼にも叶うだろう。もちろん、各国全てを回れる訳では無い。そうすると年単位の時間が必要になってくる。街道の本道に沿った国には直接赴くが、そこから枝分かれするようになっている国々には親書を携えて、司書を送り込めば問題はないだろう。場合によっては、出向いてくる国もある可能性もある。もちろん丁重に対応するつもりだ。
「問題があるとすれば、ちょっと時間がかかるぐらいかしらね。でもその案でいきましょうか。早速にも準備を」
蔵書の管理と整理をごく少数の司書に任せるのは問題ない。作業自体はそれほど難しいものではないのだから、一般の市民を整理のために一時的に雇えば済む。その間は、ごく一部の者に限って閲覧を許可する形ととればいい。一時閉館という訳だ。司書を総動員してでも、他国に送り出した方が上策だ。司書たちにとってもきっと良い経験になるはずだ。
「司書長に命令を。人選を急がせて。送り出す国のピックアップはラクシン、お願い。旅程はランサと相談してね。最終目的地はランド王国になるわ」
レビッタントとアリトリオにも了解を取らなければならない。それは直接伝えれば問題ない。政務に関しては、ユリシスが離れてもそう大きな齟齬が出ないように図らってもらう。
転がり出せば話しは早い。
ユリシス自身の動きも鈍重ではない。もちろん姉に会えるという喜びも大きい。気になるのはなぜ呼びつけるかだ。呼びつけたのは長姉のネスターではないだろう。ただ妹に会いたいから、理由を作ったとは思えない。何からの話しがあるとすれば、ネスターの夫であり、国王であるパントラムの意思である可能性は高い。先日訪れた時に、ちょっとした調査を依頼した。
その問題はすでに解決はしているが、魔王に関する内容だった。あの時は魔王に関する童話程度の情報しか得られなかった。何かしら追加調査が行われているのかもしれない。
こちらでもラクシンに命じて、魔王の調査を続けているが、進展はあまりない。大陸のほぼ中央にある、聖サクレル市国にとって、西側にある魔人たちの大陸への関心が薄い。
大陸と大陸の中間にはブリストルという名の島があり、魔人と人間が同居している。その人間の大陸側にある一番近い街カイレアはランド王国に属している。もしかしらた、そちらからの情報も得られるかもしれないという期待がユリシスにはある。
「先方に到着の大まかな日程を伝えるように。もちろん、返事は諾と伝えて頂戴」
【拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。聖女系の小説嫌いじゃない、先がちょっとだけでも気になっちゃったという方、ゆっくりペースでも気にならないという読者の皆様、★評価とフォローを頂戴できればありがたいです。感想もお待ちしています。作品の参考にさせていただきます】
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