第14話 彼女の手料理③

 買って来た食材を一旦ダイニングのテーブルの上に置き、彼女を家の直近にある自動販売機まで案内する。

 家に飲み物を用意していないから、好きな物を選んでもらった。

 針生は無糖の冷たい紅茶を選んだ様だ、俺も無糖の紅茶は好きなので、同じものを買った。

 


 リビングのソファーで2人して紅茶を飲みながら少し休憩する。


「今日作るのはね、オムライスと具沢山野菜スープとカレーだよ。

 カレーは作った事あるって言ってたけど、お昼にオムライスとスープを作った後にカレーを作って帰るから、夜ご飯として食べてね。」


「そんなに作ってくれるんだ…ありがとう。

 でも、オムライスって玉子で包む時難しいんじゃ…?」


「大丈夫、簡単な作り方を教えるから。

 材料さえあれば、直ぐにまた作れる様になるよ。

 じゃあ、始めようか。」


 彼女はキッチンで鍋やフライパン等の調理器具、家にある調味料や食材を確認すると、まず米を研ぎ始めた。

 炊飯器の早炊きスイッチを押して米を炊くと、次はニンジン、タマネギ、キャベツ、ウインナー、ハムを切っていく。

 そして鍋にオリーブオイルを入れてニンジン、タマネギ、ウインナーを炒め、そこに野菜ジュースを入れる。


「その後にキャベツ、コンソメ、塩を入れて煮て、味を確かめてお仕舞い。

 ねっ、簡単でしょ?」


「うん、確かに…俺でも出来そうだ。」


 独りでもまた作れる様に、メモを取っておく。


「じゃ、次はオムライスね。」


 まずは卵をボールに割り入れて水を少量入れ、混ぜる。

 少量の水を混ぜると玉子がフワフワになるらしい。

 次にフライパンでバターを溶かしながら、先程切ったハムを入れて炒める。

 その後炊けたご飯を投入、塩胡椒をして炒め、ご飯をフライパンの端に寄せる。

 寄せて空いた場所にケチャップを入れて少し煮ると酸味が飛ぶので、それからフライパンの中でご飯とケチャップを炒め合わせる。

 出来たケチャップライスは一旦皿に出し、改めてフライパンでバターを溶かす。

 卵をフライパンに入れて混ぜながら半熟になるまで焼き、フライパンいっぱいに半熟玉子焼きを作ってから一旦火を止める。

 別にしていたケチャップライスをフライパンの中にある半熟玉子焼きの上に盛り、後で包める様に玉子焼きのフチにケチャップライスを乗せない余白部分を残しておく。

 改めて火を着け、玉子焼きがフライパンを揺すってズラせる様になったら、平らな所に敷いたラップの上にフライパンの中身をスライドさせて出す。

 ラップの上下を引き寄せて摘みまとめ、左右の部分をネジネジと捻って飴玉の包み紙の様にし、オムライスの形を手で直接整える。

 皿の上に玉子焼きの面が上になる様にオムライスをひっくり返して載せる。


「ラップを解いて剥がして、綺麗な形のオムライスが完成!」


 俺は思わず彼女に拍手をした。


「凄いね、もっと難しいと思ってたけど、俺でも簡単に出来そうな気がする。」


「じゃあ、もう1つを直ぐに作るね。」


 彼女はもう1つオムライスをあっという間に作ると、出来立てのオムライスにケチャップで『♡』を書いて、恥ずかしそうに俺の前に差し出した。


「ハイ、美味しくなぁれと思って作ったけど、萌え萌えキュンとかはやらないよ。」


 彼女の顔は真っ赤だ。

 俺も多分真っ赤だと思う。


「よくそんな事知ってるね、でも嬉しいよ、ありがとう。

 さあ、食べようか。」


 2人で食器やスープを用意して席に着くと、俺は彼女がさっき作ったもう1つのオムライスに、ケチャップで『LOVE』と書いて彼女の前に置いた。


「…お返し。」


 俺達は2人とも自爆して、再度2人で真っ赤になりながら、


「「いっ…いただきます。」」


と暫く黙々と食事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る