第4話 警察へ

 騒ぎを聞きつけた駅員が到着し駅事務所に行こうと言ったが、暴れて逃げる可能性があるので断った。

 その後複数の警察官が現れたため詳しく事情を説明すると、女の子は被害者、俺は逮捕者として警察署に行かなければならないと説明を受けた。

 警察官が犯人に手錠を掛けたところで俺は犯人を引き渡し、犯人とは違うパトカーで女の子と一緒に警察署に向かった。



 パトカーなんて普段乗らないし、警察官が2人乗っていて今回の件について質問攻めにされたため、女の子とは全く会話出来ずに警察署に着き、生活安全課と出入口に書かれた部屋に案内され、それぞれ取調室に入れられた。

 俺は学校に遅刻する旨を電話しようと思ったが、すぐに男の刑事さんが部屋に入って来た。


「やぁ、お手柄だったね。

 君に怪我は無いかい?

 犯人の手にビニール袋を被せるなんて、よく知ってたね。

 何処でそんな知識を覚えたの?」


「怪我はありません。

 …ビニール袋の件は、テレビでやってましたので。」


「そうなんだ、怪我が無くて良かった。

 これから現行犯人逮捕手続書という書類を作ったり、実況見分調書という書類を作るために当時の様子を再現しながら写真を撮ったりと色々協力して欲しいんだけど。」


「あの、その前に学校に遅刻するって電話をしたいのですが。」 


「あぁ、それはコチラからさせてもらうよ。

 事情が事情だからね、本人からより警察から連絡した方が信憑性が高いでしょ? 

 それじゃ、この紙に住所や名前や生年月日や電話番号、学校名なんかを書いてくれるかな。」


 それから事細かに起こった事全てを説明したり、警察官が犯人役をやって、犯人をどうやって捕まえたかを写真を撮られながら説明したりと午前中いっぱいが潰れた。


「では今日はこれで終わりだけど、もしまた聞きたい事が出来たりしたら連絡するからヨロシクね。

 午後は学校に行くんだろう?

 パトカーで送らせるよ。」 


「えーっ…いいですよ、何か悪い事したみたいじゃないですか、目立つのイヤだし。」


「犯人の家を特定する意味で家を確認しに行く事はあるけど、本当に悪い事をした人はパトカーで送ってもらえないよ。

 それにパトカーに乗って行けば、一緒に行く警察官には先生に改めて事情を説明させるけど、どうする?」


 …そして俺はパトカーで学校に送ってもらった。

 被害者の女の子は既に帰ったそうで、挨拶も出来なかった。

 

 

 学校にパトカーで乗り付けたところ、丁度休み時間で校舎のアチコチの窓から生徒達がコチラをガン見しては騒いでいる様だった。

 だからイヤだったんだよ…でも警察官から先生に説明はして欲しかったし…仕方ないな。



 校内に入り職員室で俺の担任の斉藤先生と警察官を引き合わせた後、暫く廊下で待っていると、職員室から出て来た警察官は俺に手を上げて挨拶した後帰って行った。


「おい、犯罪者。パトカーで連れて来られたそうだな、今頃はクラス中、いや学校中で有る事無い事噂されてるぞ、ザマー見ろ。

 昨日私をからかった罰だ。」


「…からかった?

 …あー、可愛いって言った事ですか?

 別にウソは付いてませんけど。」


「なっ…何だと!?

 あれは本気だったと?

 …ふむ…ナルホド、私はまだまだイケるのかもしれん…。」


「それより先生はちゃんと警察官から事情は聞いてたんですか?

 俺は犯罪者じゃ無いですよ?

 おーい、先生ー。」


 …駄目だ、この人は色々と残念な人だ。

 先生は何故かアヒル口の練習を窓ガラスに向かってしていて返事がない。

 …斉藤先生だと心配だから、遅刻扱いになっていないか他の先生に確認しよっと。


 俺はそれから職員室に入り、他の先生と話をしてから自分の教室に入ったら、クラスメイトから一斉に白い目で見られたため、

 

「俺は犯罪者じゃ無い!」


と一言だけ言って自席に座った。

 だって葉月と石川以外、殆ど喋った事の無い人達なんだもの。

 これで石川と葉月が居なくなったら、ぼっち確定だな…と思っていたら、石川がニヤニヤしながら、


「おい、何をして捕まったんだよ、痴漢か?」


とほざいて来たので、


「ザケんな!捕まえた方だよ!

 じゃないとこんな早くに釈放されるワキゃねーだろ!」


と言い返したが、ふと違和感を感じて周りを見渡すと皆が聞き耳を立てていた様で、一瞬しーんと静まり返っていた。

 何かクラスメイトの俺を見る目が和らいだ気がする。


「ほーぅ…すると痴漢された女の子はきっと可愛かったんだろうなぁ、お前が助けたくらいだから。」


「オマっ…俺が可愛く無かったら助けないみたいな言い方するな! 

 俺はどんな人でも助けるぞ、見縊みくびるんじゃねー!」


「ふーん。で?

 可愛かったのか?」


「メッチャ美人さんだった。」


「やっぱりかよwww」


「たっ…たまたま痴漢されてるの見かけたんだよ、俺いつもあの時間の電車乗らないし。

 初めて見た子だよ、名前も知らない。」


「なんだなんだ、折角助けたのに名前も連絡先も聞いて無いのかよ、勿体無い。」


「しょうがねーだろ、警察から質問攻めされて、話す機会すら無くパトカーで学校に送って来られたんだから!」


「あーぁ、勿体無えなぁ。

 残念だったな、片倉。」


「まぁ、人の出逢いなんてそんなモンだろ。

 必然だったらまた逢う事もあるだろうさ。」


「お前、その歳で枯れてんなぁ。

 俺だったら又同じ時間の電車に乗って絶対に連絡先ゲットするけど。」


「えーっ、いいよ、そんなの下心満載だろ。

 それに俺もう混雑してる電車に乗りたく無いし。 

 それより俺が居なかった間の授業のノート写させてくれ。」


「お前、髪型とか服装はだらしないのに、性格は真面目かっ!」


 そこで葉月が廊下から教室に入って来て、真っ直ぐコチラに向かって来るのが見えた。


「ちょっと楓、何やらかしたの、痴漢!?」


「…俺って、オマエ等からはそういう風にしか見られて無いんかい!」


 俺はガックリと項垂うなだれた。

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