第175話 電話


ふぅ・・妙に疲れたな。

俺は無事帰宅。


まず風呂に入った。

とにかく湯船に浸かって気分的に落ち着きたい。

・・・

風呂上がりに、冷やしていた白湯を飲む。

「ぷはぁ・・さっぱりした」

サイクロプスも疲れたが、人と接する方が余計に疲れる。


さて、今後のことだな。

まさかアマテラス様がハイエルフだったとは。

ということは、日本の歴史って最初から知っているのか?

それよりもリアルに何千年も生きているのかな?

・・・

聞くわけにもいくまい。

また、ヴァンパイアって何?

そんな存在がいたなんて・・いや、爬虫類が存在したのだから不思議ではないが、容量オーバーだな。


俺が白湯を飲みながらあれやこれやと考えていると、携帯が鳴っていた。

お、誰だ?

日置さん?

ギルマスじゃなく、ヤマトちゃんか・・何の用だろう?

俺は取りあえず電話に出る。


「はい、村上です」

「あ、こ、こんばんは、日置大和へきやまとです。 こ、この間はお世話になりました」

日置さんがうわずった声で話している。

「いえいえ、こちらこそお世話になりました。 いったいどうしたの?」

「は、はい・・あの・・村上さんのお暇な時間ってありますか?」

お暇な時間って・・年中暇と言えば暇だし、忙しいといえば忙しい。

「うん、結構暇だよ」

「そうですか・・よかった。 もしですね、よろしければ一度私の家にお越しになられませんか?」

「え?」

「い、いえ・・わ、私のおじい様が、村上さんと一度会いたいと申しておりまして・・お伺いしてもいいのですが、お邪魔するよりもお越しいただいた方が良いかと思った次第で・・」

日置さんが焦った口調で話していた。


でも、いったい何で日置さんのおじいさんが俺なんかに用があるんだ?

「あ、あの・・私のおじい様ですが、段議員とお知り合いなのですよ。 それで興味を持ったのかもしれません」

俺は日置さんの説明で納得。

なるほどな・・段のじいさんと知り合いなら、大した狸だろう。

とはいえ、会わない理由もないし。

「うん、わかったよ。 日置さんの都合に合わせるから、また日が決まったら教えてくれる?」

「は、はい。 ありがとうございます。 よろしくお願いします。 では、失礼します・・おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

俺は携帯を置く。


段議員の知り合いか・・曲者くせものだろうな。

いったい俺なんかを見て、何が知りたいのだろう?

俺のスキルは見えるはずもないし、レベルもわかるはずもない。

アマテラス様などとの接触も知られているはずもないだろうし・・ほんとになんだろうな?


<日置大和>


ヤマトは携帯をテーブルに置くと、大きく息を吐いた。

「はぁ・・緊張したぁ。 男の人に電話するなんてめったにないし、まだドキドキしてる。 村上さん、私のことを変な女だと思ったかな? あ~・・考えただけで恥ずかしい」

ヤマトは枕に顔をうずめてベッドの上で寝転がる。

「おじい様もおじい様よ。 どうして村上さんに会いたいのかしら? そりゃアメリカではものすごい活躍したし、かっこよかったけど・・きゃ~、私ったら何考えてるのかしら。 あ、段さんの知り合いだから、段さんから余計なことを吹き込まれたかもしれないわね。 来た時には、私も同席させてもらわなきゃ」

ヤマトはベッドの上でゴロゴロと転がっていた。


<坂口恭二>


坂口団長は休暇を取り、群馬に帰省していた。

「お兄ちゃん、今日も行くの?」

「うん、その為に帰ってきたんだから」

「全くもう・・お母さんも何か言ってやって!」

母親は笑いながらうなずく。

「まぁいいじゃない。 無事な顔を見られたし、前よりも元気になってるようだしね」

「全く・・お母さんは甘いんだから」

恭二は妹の頭を撫でると、行ってきますと言って出て行った。


「せっかくお兄ちゃん帰ってきたのに・・もっとゆっくりとしてればいいのに」

「まぁ、あの子なりに考えているのよ。 ただボォーッとできないんでしょ」

「それはわかってるけど・・」


<△△神社>


恭二は地元の小さな神社を訪れていた。

アストレアに聞いていたダンジョンだ。


「アストレア、本当にこの神社なのかい?」

『はい、間違いありません。 ハヤト様のナビ、ベスタとの共有で、その基準を満たしております』

「なるほど・・尾行も巻いたし、遠慮なく入れるね」

『ほんとに大丈夫ですか、キョウジ様』

「うん、これくらい挑戦しないと、村上さんに追いつけないよ。 それに僕ももっと自分を極めたい」

『わかりました。 ですが、本当に危険な時は撤退を優先します』

「了解だ。 それでこそ我が相棒だよ」

『ありがとうございます。 では、あのやしろのところへ向かってください。 ひずみがございます』

アストレアの指示通りにキョウジは動く。

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