第170話 混乱する


<アマテラス>


アマテラスが突然立ち上がる。

ウズメがビクッとして後ずさった。

「ア、アマテラス様、いかがなされましたか?」

「あやつめ・・いきなり我が地にやってくるとは、いい度胸ではないか。 しかもあの人種族に目を付けるとは・・急がねばならんな」

アマテラスがスタスタと歩いて行く。

「ア、アマテラス様、お待ちを」

「ウズメ、お主は留守番じゃ!」

アマテラスはそれだけを告げると、急ぎ足で部屋を出ていった。


<ハヤト>


俺の目の前に髪が光っているのかと思われるような、金髪の美女が立っていた。

その顔立ちは幼くもあり、妖艶でもある。

言葉にできない美しさだ。

ただ、俺の勘が言う。

ヤバイと。

俺は黙って女の人を見つめていた。


その金髪の美女は微笑みながら俺に近づいて来る。

「ふむ・・人種族の新しいタイプ・・アマテラス系統か」

アマテラス?

何言ってるんだ?

俺の思考をよそに、金髪の美女が片手を伸ばしてくる。

真っ白な細い腕だ。

そっと俺の顎に指先を当てると、スススッと頬を撫で、頭の上に手を置いた。

・・・

「なるほどな・・お主、ドラコニアンと出会ったのか。 ならば新たな種として自由は得ているわけか」

金髪美女が勝手にしゃべっている。


「そこまでだ、イコル」

金髪美女の後ろから声が飛んできた。

どこかで聞いたことのある声だ。

イコルと呼ばれた金髪美女が微笑みながら振り返る。

「これはこれは、引きこもりのハイエルフではないか」

「は? 何を言っておる。 別に引きこもってなどおらぬ。 いったい何をしに来たのだ」


俺は混乱しているのだろう。

金髪美女の後ろには、白い髪の美人がいた。

それにハイエルフって・・ゲームか小説じゃね?

!!

って、確かに耳が明らかに人と違う。

「ん? こりゃ、ハヤトよ、何が人と違うじゃ、当たり前ではないか」

ハイエルフと呼ばれた美女が俺の名前を呼ぶ。

??

余計に訳がわからない。

何で俺の名を?

それよりもハイエルフ?

・・

俺の思考回路は停止する。

ベスタさんも反応しないし。


「イコル、何しに来た」

「いやいや、人種の新しいタイプを見に来たのだ」

「お主の所でも進化しておろうが」

「フフフ・・あれはダメだな。 レプティリアンの系統だ。 臭いな」

「お主なぁ・・だからと言って、いきなり我のところに来るとは・・連絡くらいは寄越せ」

「おぉ、それはすまぬな・・それよりもこの人種だが・・気を失っておらんか?」

イコルが俺の方を見る。


意識は失っていないが、俺は状況が全く理解できないでいた。

「ふむ・・意識はあるようだがな・・どれ」

ハイエルフの美人が俺の傍に来る。

パン!

いきなり俺の頬を平手打ちだ。

「ハッ! って、いったい何? それに結構痛いし・・」

俺は頬に片手を当てている。

「ハヤトよ、戻ってきたか?」

「戻って・・って、ど、どうして俺・・いや、私の名前を知っているのですか? それに俺の・・私の思考を読みとっていたような・・う~ん・・」

「ふむ・・どうやらまだ混乱しているようだな。 もう一発・・」

ハイエルフの美女が片手を挙げる。

「い、いや、待ってくれ。 俺は正気を保っている。 それよりも今のこの状況がわからないんだ」

俺はもう言葉に注意を払うのはやめた。

「うむ、それならば良い」

ハイエルフはうなずく。

ん?

この声って・・どこかで聞いたことあるんだよな・・どこだっけ?

俺が頭の中で考えていると、即座に返答が来た。


「ハヤトよ、ワシはアマテラスじゃ」

!!

「はぁ~? アマテラス・・いや、アマテラス様って、あのアマテラス様ですか? 俺を拉致した」

ドゴン!

俺の頭に重い一撃が飛んできた。

「誰が拉致じゃ。 謁見と言え」

「う~・・痛い」

俺は頭を抱える。

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