第170話 混乱する
<アマテラス>
アマテラスが突然立ち上がる。
ウズメがビクッとして後ずさった。
「ア、アマテラス様、いかがなされましたか?」
「あやつめ・・いきなり我が地にやってくるとは、いい度胸ではないか。 しかもあの人種族に目を付けるとは・・急がねばならんな」
アマテラスがスタスタと歩いて行く。
「ア、アマテラス様、お待ちを」
「ウズメ、お主は留守番じゃ!」
アマテラスはそれだけを告げると、急ぎ足で部屋を出ていった。
◇
<ハヤト>
俺の目の前に髪が光っているのかと思われるような、金髪の美女が立っていた。
その顔立ちは幼くもあり、妖艶でもある。
言葉にできない美しさだ。
ただ、俺の勘が言う。
ヤバイと。
俺は黙って女の人を見つめていた。
その金髪の美女は微笑みながら俺に近づいて来る。
「ふむ・・人種族の新しいタイプ・・アマテラス系統か」
アマテラス?
何言ってるんだ?
俺の思考をよそに、金髪の美女が片手を伸ばしてくる。
真っ白な細い腕だ。
そっと俺の顎に指先を当てると、スススッと頬を撫で、頭の上に手を置いた。
・・・
「なるほどな・・お主、ドラコニアンと出会ったのか。 ならば新たな種として自由は得ているわけか」
金髪美女が勝手にしゃべっている。
「そこまでだ、イコル」
金髪美女の後ろから声が飛んできた。
どこかで聞いたことのある声だ。
イコルと呼ばれた金髪美女が微笑みながら振り返る。
「これはこれは、引きこもりのハイエルフではないか」
「は? 何を言っておる。 別に引きこもってなどおらぬ。 いったい何をしに来たのだ」
俺は混乱しているのだろう。
金髪美女の後ろには、白い髪の美人がいた。
それにハイエルフって・・ゲームか小説じゃね?
!!
って、確かに耳が明らかに人と違う。
「ん? こりゃ、ハヤトよ、何が人と違うじゃ、当たり前ではないか」
ハイエルフと呼ばれた美女が俺の名前を呼ぶ。
??
余計に訳がわからない。
何で俺の名を?
それよりもハイエルフ?
・・
俺の思考回路は停止する。
ベスタさんも反応しないし。
「イコル、何しに来た」
「いやいや、人種の新しいタイプを見に来たのだ」
「お主の所でも進化しておろうが」
「フフフ・・あれはダメだな。 レプティリアンの系統だ。 臭いな」
「お主なぁ・・だからと言って、いきなり我のところに来るとは・・連絡くらいは寄越せ」
「おぉ、それはすまぬな・・それよりもこの人種だが・・気を失っておらんか?」
イコルが俺の方を見る。
意識は失っていないが、俺は状況が全く理解できないでいた。
「ふむ・・意識はあるようだがな・・どれ」
ハイエルフの美人が俺の傍に来る。
パン!
いきなり俺の頬を平手打ちだ。
「ハッ! って、いったい何? それに結構痛いし・・」
俺は頬に片手を当てている。
「ハヤトよ、戻ってきたか?」
「戻って・・って、ど、どうして俺・・いや、私の名前を知っているのですか? それに俺の・・私の思考を読みとっていたような・・う~ん・・」
「ふむ・・どうやらまだ混乱しているようだな。 もう一発・・」
ハイエルフの美女が片手を挙げる。
「い、いや、待ってくれ。 俺は正気を保っている。 それよりも今のこの状況がわからないんだ」
俺はもう言葉に注意を払うのはやめた。
「うむ、それならば良い」
ハイエルフはうなずく。
ん?
この声って・・どこかで聞いたことあるんだよな・・どこだっけ?
俺が頭の中で考えていると、即座に返答が来た。
「ハヤトよ、ワシはアマテラスじゃ」
!!
「はぁ~? アマテラス・・いや、アマテラス様って、あのアマテラス様ですか? 俺を拉致した」
ドゴン!
俺の頭に重い一撃が飛んできた。
「誰が拉致じゃ。 謁見と言え」
「う~・・痛い」
俺は頭を抱える。
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