第133話 6階層


「さて・・次の6階層が例の魔物との遭遇場所なんだ・・」

ジョーが次の階層への入り口で立ち止まる。

「マイヒーロー・・」

サラがジョーの背中に軽く手を当てる。

「うむ・・大丈夫だ。 今回は人数も多くないし、それぞれが高レベルだ。 最悪の場合、退避ができるだろう」

ジョーは顔を引き締める。

「ミスタームラカミ、ミス日置、マリア・・6階層に到達した瞬間に攻撃を受けるかもしれない。 気をつけてくれ」

ジョーの言葉に俺たちはうなずく。

ジョーを先頭に俺たちは6階層へ向かう。


ガキン!!

6階層に到着した瞬間に、俺たちの方へ矢が飛んできた。

ジョーの目の前に迫るが、動く気配がない。

俺がすかさず前に出て、その矢を手で払っていた。


「ハッ! な、なんだ? ミスタームラカミ・・君がその矢を落としたのかね」

「は、はい・・ちょうど見えたので遠慮なく・・って、余計なことでしたか?」

「い、いや・・ありがとう。 僕は気付かなかった、というより少し反応が遅れてしまった・・すまない」

「いえ、無事でしたら、できるものが対処すればいいのですよ」

俺はそう答えつつ、ベスタと会話していた。


「ベスタさん、あの魔物がケンタウルスかな?」

『はい、間違いありません。 ハヤト様の敵ではありませんね』

「いや、あのね・・いきなり戦闘狂みたいな発言しないでくれる?」

『ですが、あのジョーという戦士では無理だと思われます』

「ベスタさん、はっきり言うよね」

『もちろんです』

「ただなぁ・・俺のレベルが知られるのは・・ちょっとね」

『ハヤト様、格下といえども油断してはいけません。 とにかく勝ってから理由を考えましょう』

「・・・」

ベスタさんはポジティブシンキングのようだ。

確かに、勝たなければ意味がない。

俺がベスタと会話している間に、ジョーはサラとマリアたちと顔を見合わせていた。


「サラ・・どう思うかね?」

「はい、かなり危険な感じを受けますね」

「ジョー、私の銃撃もどれほど効果があるかわからないわ」

「確かにな・・だが、ミスタームラカミが矢を弾いたぞ」

ジョーの返答にサラが反応する。

「はい、彼には何らかの防御スキルが備わっているのかもしれません。 期待はできると思います」

「確かに・・相手の攻撃をかわせるのは大きなアドバンテージになるな」

ジョーとサラの会話を聞きながらマリアは考える。

「あのムラカミという男・・この階層に入った時には私の後ろにいたはず。 それが気づいたらジョーの前にいて、矢を弾いていた。 私も反応できなかったし、ムラカミが移動したのもわからなかった。 いったいどんなスキルを持っているのかしら? ただ、今はこの前の魔物をどうにかしなければならない」


<日置視点>


6階層に入った瞬間に矢が飛んで来ていた。

私たちよりも先に魔物に捕捉されてしまったのね。

私のナビさんは教えてくれていたけど、村上さんもそうだったのかしら?

私が動くよりも先に動いていたし・・。

アメリカの人たちは反応できなかったようね。

大丈夫かしら?

そんなことよりもあの魔物・・レベルは私よりも上らしいけど、ナビさんは安心していいという。

村上さんの相手ではないらしい。

って、あの人、いったいどれほどの強さなの?

とにかく、今は私などが邪魔しないようにしないと。


<ケンタウルス視点>


ケンタウルスがつがえていた弓矢をおろす。

ふむ・・外したか。 

この階層に到達する瞬間を狙えば簡単だと思ったが、少しばかり知恵があるようだ。

・・

ん?

あの男は・・!!

ケンタウルスが後ろ脚で土を蹴る。

「我が右腕を奪った男ではないか! ちょうどいい・・向こうからわざわざ殺されにやってきたか。 これで心置きなくメディカルマシーンで回復できるだろう。 最初から全力で始末する」


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