ルールブレイカー
ボケ猫
第1話 創られた世界(序)
誰かが言った。
この世界はシミュレーション仮説だと。
誰かの考えた、いわばゲームの中のような世界。
現実と呼ばれる世界における、
疑ってもどうすることもできない。
俺もそれには同意だ。
何故って?
その仮説を調べていた時に、誰かが書いていた内容に衝撃を受けたからだ。
物理現象・・時速60キロの車から、前方に80キロの速度で何かを投げると、その投げられた物体は観測者からは時速140キロに見える。(空気抵抗などは考えない)
これは納得できることだ。
だが、光のことだ。
この速度は不変という。
つまり、光の速度で移動していて、前方に光の速度で何かを発射しても、その発射されたものは元の光の速度と同じという。
・・・
おかしいじゃないか!
それが疑問だったが・・解消し、納得した。
処理限界。
つまり、この世界を管理している、スーパーAI、神様とでも言えばいいのか、それらの処理限界速度が光ということだろう。
そう考えれば、宇宙の現象も理解不能なものがあるのは、人類の知恵の不足か、処理限界速度以上のものか、判明するはずだ。
それに、人の意識が現実世界に影響を及ぼしているということも実証されていた。
だが、それがどうした?
わかったところで、この世界からは出られない。
ならば余計なことは考えても仕方がない。
諦めるしかない。
この諦めるのは大事なことだろう。
◇
わかっている。
お金は稼ぐものじゃない。
人が感動した対価として移動するエネルギー。
美味しいものを食べた感動をお金で支払う。
面白いもの素晴らしいものを見て、その対価にお金を支払う。
わかっているんだ。
サラリーマンは自分の労働時間を提供してお金をもらう。
労働者階級に属している。
だが、それを望んだか?
わからない。
知らないうちにそうなっていた。
そういう価値観をいつの間にか植え付けられていた。
『頑張って、汗水流して働きなさい。 そうすればお金が稼げる』
違うだろ!
そういった当たり前と言われること・・わかっている。
そして、それがどうしようもないということもわかっている。
全部とまではいかないが、わかっているんだ。
・・・
そんなことを考えながら眠りにつく毎日。
アラフォーにもなって妙な夢見て、いつかは自分も・・なんて思っているが、その機会は死ぬまで訪れることはないんじゃないかとも思える。
わからないが、わかっている。
30歳の時、とある大きな組織を退職してから、その当時の給与を超える生活をしたことがない。
日本という国は、一度転ぶと起き上がることが許されない社会らしい。
だからといって、社会を恨むのは筋違いだ。
当時、ロクに行く先も決めずに組織を離れた自分の選択が甘い。
わかっている。
未練などではない。
ただ、このままで一生を終えるのかと思うと、何だか寂しい感じがするだけだ。
そんなモヤモヤした、自分の力だけでは解決できないことを考えながら今日も過ぎていく。
・・・
ピーン!
・・・
「ん? メールか?」
ちょうど眠りに入ろうとする境だったろうか。
俺は片手で携帯を探す。
えっと・・ここら辺りに置いたはずだが・・
・・あった。
携帯画面をタッチして・・うわ、眩しぃ!
・・・
なになに・・?
は?
このメール・・いったい何だ?
眠気が少し吹き飛ぶ。
妙なメールだ。
迷惑メールかと思ったが、既に受信箱で開かれていた。
『あなたは、この世界のルールから外れる決定がなされました。 以後、成長しながら残りの人生をお楽しみください』
あなたの世界の神と呼ばれるものより。
・・・
アホか。
完全にアウトメールだろ!
だが、既に開かれた状態で受信箱にある。
いつの間に開いたんだ、このメール。
それよりも詐欺まがいの連絡とか来るのか?
ウイルスとか入ってないよな?
・・・
・・
俺の頭で考えられる不安事項が浮かぶが、考えても対処の仕様がない。
そして、メールをスクロールしていくと、これまた妙な選択肢が見えて来た。
『この事項を了承し、決定しますか? Yes or はい』
・・・
この自称神様と称しているメールの送信者・・やばい奴決定だ。
とはいえ、どうして受信箱に入っていたのか。
それに開かれているし・・。
ん・・え?
!!
送り先アドレスが・・ない!
いったいどういうことだ?
俺は妙な感覚に悩まされながらも携帯の画面を見続けている。
・・・
う~ん・・意味がわからん。
理解できない。
それに選択肢・・拒否権など存在しない。
英語と日本語、どちらかを選ぶことによって、妙なサイトに飛ばされるのか?
それに・・さっきから削除しているのだが、できない。
これって、やはりウイルスに感染したのか?
そう思って違うメールを削除してみると・・できる。
違うようだ。
だがこのメール・・不気味だ。
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