第144話……帝国再統一!!
「敵要塞へ降下せよ!」
「「「了解!」」」
私は二足歩行可変型機種の艦載機二機を引き連れ、要塞地表部へと向かう。
愛機である重雷撃機ケルベロスも、二足歩行機動歩兵に姿を変える。
……機動歩兵。
この世界にて装輪戦車と並ぶ地上における決戦兵器である。
全高15mにもなる装甲を施されたパワードスーツの一種だった。
「散開!」
リヴァイアサン要塞地表の4割は岩石で、6割は金属だった。
私はその岩石部に降り立った。
岩石部は起伏があり、遮蔽遺物も多く、隠蔽率が高かったため有利に戦えるからだ。
……いつの時代の戦いも、最後は地上戦となる。
いわば人類宿命の戦いであった……。
「前方に装輪戦車、多数!」
「擲弾筒用意!」
我々を見つけた要塞側も、すぐさま戦車を繰り出してきた。
土煙をもうもうと上げてこちらに迫りくる。
――ドドドォォォン
後方からやってきた通常の歩兵隊が、迫撃砲で支援してくれた。
それに合わせて、私も重粒子ガトリンク砲等で攻撃に転じる。
……しかし、敵砲火が激しく、前進が難しい。
「こちらケルベロス、F-998地点へ支援砲火を要請する!」
「こちらハンニバル、了解!」
遥か彼方の装甲戦艦と、上空の艦載機からの支援射撃により、敵装輪戦車が消し飛ぶ。
「前進だ!」
「「「了解!」」」
我々は岩肌の窪地から飛び出て、急いで前進。
2時間にわたる激しい砲火ののち、敵地上部隊の壊滅と飛行場の占領に成功した。
「こちらケルベロス、P-9地点の飛行場を制圧した。この地点へ惑星揚陸艦を着陸されたし!」
「了解だ! アニキ待ってろ!」
アルベルトの声が聞こえる。
これより先の要塞内部の戦いは、ドラグニル陸戦隊を始めとした荒くれ者の白兵戦部隊の独壇場だ。
私の出番はない。
「これより地表の残敵を掃討する! 続け!」
ケルベロスと僚機2機は重雷撃機へと可変し、飛び立つ。
他の戦線で戦っている地上部隊を支援するためだ。
――更に4時間後。
地表部では目立った抵抗は減っていく。
大要塞攻略戦は最終段階へと入っていった……。
☆★☆★☆
「おかえりなさいですわ!」
「おかえりポコ!」
「ただいま!」
ハンニバルへと帰った私は、装甲服を脱ぎ捨て、幕僚たちから報告を聞く。
「ほぼ全ての地域で我が方が優勢! 要塞占領は時間の問題ですわ!」
「地下通路の戦いも優勢ポコ!」
「そうか、良かった!」
この戦いは、味方の艦隊の総攻撃が起因となり、戦局は大きくこちら側へと転がりこんだ形となっていた。
……あとは惑星地上軍の仕事だ。
私は提督席に深く座って、少し休んだ。
ちなみに、ハンニバルに提督席なんてものはない。
艦長席にA4の紙に『提督席』とマジックで書いてあるものを貼り付けているのだ。
次の設計で、椅子を新設してもいいかもしれないね……。
――4時間後。
「敵、要塞司令官リーゼンフェルト提督より、降伏の意思ありとのことです!」
「お繋ぎしろ!」
「了解!」
……戦いは決した。
リヴァイアサン要塞の周りには無数の艦艇の残骸が散らばり、この要塞の手ごわさを顕著に顕していた。
空間に大量に飽和したエネルギーが、あちらこちらでプラズマの様相を見せていた。
☆★☆★☆
大要塞リヴァイアサンを落とされたクレーメンス派に、もはや抵抗する牙城は無く、全面降伏の形となった。
幽閉されていたパウルス元帥とアーベライン伯爵も助け出された。
降伏した皇帝クレーメンスとリーゼンフェルト提督は、政治的身分を中級貴族等に格下げされた後に、惑星セイレーンへと移住することとなった。
――標準歴3年5月。
ここにカリバーン帝国は、皇帝パウリーネのもとに再統一を果たした。
首都星セイレーンは辺境地であることから、首都星は近日中にアルバトロス星系へと遷都となる。
民衆の歓喜の声が、皇帝パウリーネを讃えた。
長きにわたった帝国内の内乱の終焉だった。
――その10日後。
戦勝式典が帝都アルバトロスで行われた。
私はこの式典に出席。
内乱収束の功績により、国家元帥に昇進。
爵位も伯爵となった。
「朕は、そちに感謝しておるぞ!」
「有難き幸せ!」
日増しに美しくおなりのパウリーネ様から、大きな勲章を授かる。
――その翌日。
私は退役した。
自分の領地である、ラム星系に引き籠ることにしたのだ。
「……本当にこれでよいのかね?」
パウルス元帥に問われる。
「構いません、しばらく戦いもないでしょうし……」
「……そうか、又、君の出番がないようにしないといかんな!」
私は退役し、中将待遇でカリバーン帝国宇宙軍の顧問就任となることになった。
いわゆる嘱託社員であった。
……これでシャルンホルスト退役中将と同じような待遇となったわけだ。
伯爵としての私有戦力、若しくはラム星系艦隊として、装甲戦艦ハンニバルといくらかの艦艇は私の指揮下として残ることを許された。
グングニル共和国もルドミラ教国も、今は傷つき、カリバーン帝国に攻め寄せる力はない。
平和な時代になれば、軍は再び派閥争いだ。
……私は無用な派閥争いを避け、この機に色々な地域へ旅立ってみたくなったのだ……。
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