第141話……ヴェロヴェマ元帥 VS 大要塞リヴァイアサン

「マイクロ・クエーサー砲発射用意!」

「目標、シェリオ伯爵が乗る旗艦のみ! 収束して狙え!」


「了解!」


「現在、エネルギー充填率24.2%」


「それだけあれば十分だ!」

「発射せよ!」


「はっ!」


「……3」

「……2」

「……1」


「発射!」


――ズズズゥゥゥ


 解き放たれた膨大なガンマ線の収束光軸が、シェリオ伯爵が座乗する戦艦を、背後から突き刺さる。

 一瞬で装甲板を吹き飛ばし、機関部などバイタルエリアに貫通、連鎖爆発を起こし、すぐに光球を解き放って轟沈した。



「敵艦撃沈確認!」

「よし、よくやった!」



「残りの敵艦は、降伏の意向のようです!」

「許可してやれ!」


「はっ!」


 ハンニバルは地球への航路まで、単艦で強行軍してきた。

 新型エルゴ機関AAA-1型をフル稼働して、連鎖跳躍を繰り返してきたのだ。


 艦隊で動く速度の5~6倍の速度は出たと思う。

 敵が驚いたことは想像に難くなかった……。



「エンジンが燃えるクマ~!?」

「機関部へ消火班を急いで派遣してポコ!」


「了解!」


 ハンニバル側にも、機関部にかなりの負担があったのは事実だったが……。

 戦いには勝ったが、ハンニバルも機関部から煙をだしていた。




☆★☆★☆


(……戦闘2時間後)



「提督、あれをご覧ください!」


「お?」

「惑星破壊砲ポコね!」


 砲術長がいうとおり、クレーメンス達が持っていた惑星破壊砲は、シェリオ伯爵が地球の近くまで運んでいたようだった。

 2kmの長砲身砲の艦長も、私に降伏を打診してきていた。

 ……もちろん受諾する。



「何に使うつもりだったポコね?」


……それは怖くて、想像したくない。



「しかし、敵はもう惑星破壊砲を持っていないのではありませんか?」

「あ、そうか!?」


 ……副官殿に言われて、はっと気づく。

 情報筋に寄れば、惑星破壊砲の製造は二基。

 一基は以前にハンニバルが破壊していたのだ。


 ひょっとして、クレーメンス側は、もう惑星破壊砲を持っていない?



 ……これは戦略的に凄く大切なことだった。


 クーデター以後、さして戦力を持っていないクレーメンス側が多数の星系を支配していたのは、この砲の影響だったのだ。

 惑星を安易に残骸にできるこの砲の威力の前には、有人惑星の為政者が歯向かえないのは自明の理だったのだ……。



「このことは、すぐにパウリーネ様にお伝えしろ!」

「わかりましたわ!」


 副官殿をとおして、セイレーンの首都星に情報を送る。


 この情報が元で、クレーメンス側に与していた諸星系は、次々にパウリーネ様側に鞍替えしていった。

 たかが兵器かもしれないが、戦略兵器が政治情勢に与える影響は、とても大きかったと考えられる証左でもあった。


 ……こうして、我々の前線は、敵首都星であるアルバトロスの近くまで前進することとなった。




☆★☆★☆


「元帥閣下! 是非我々もお味方に加えてください!」


「承知した、是非よろしく願いしたい!」


 地方星系の私兵や、星系防衛隊を糾合していった我々は、600隻を超える大艦隊となっていた。


 目の前に立ちはだかるのは、旧帝都アルバトロスを守護する大要塞リヴァイアサンだった。

 これを陥落させねば、クレーメンス派を倒すことは出来ないのだ。


 ……皆、大要塞を前に、緊張感が走った。



「敵要塞に降伏の意思なし!」


「しかたない、攻撃を開始する!」

「両翼のミサイル艦艇を前進させろ!」


「了解!」


 私はこの時までに、100隻を超えるような艦隊を指揮したことは無い。

 常にハンニバルは前線に立ち続け、敵をなぎ倒していったのだ。


 ……しかし、



「元帥閣下が敵前に出ることはありませぬ!」

「後方で我らの戦いを督戦してくだされ!」


「……あそう?」


 という感じで、主に最近にこちら側に降った地方星系の軍人たちに宥めすかされ、後方でぼんやりする羽目になっていた……。



「後方の空母から艦載機を繰り出せ!」

「了解!」


「第一攻撃隊発艦!」


 ……勇ましい通信は入って来るが、出番がない。

 安全なところで艦載機を発艦させる空母の更に後ろにハンニバルはいたのだ……。



「暇ポコね~」

「しーですわ!」


「ごめんポコ」


 退屈すぎて、副官殿におこられる砲術長殿。

 私も先ほどから、あくびを3つもかみ殺していたのだ。




「ヴェロヴェマ元帥殿! 遅れての参陣、申し訳ありませぬ!」


「いえいえ、お味方はいくらあっても足りませんよ」


 ……優勢な方には次々と戦力が集う。


 リヴァイアサン要塞に攻撃を開始したのちも、こちら側に味方することに決めた有力者がドシドシと集まってきた。



 ……しかし、


「旦那様! 補給物資が足りなくなりますぞ!」

「ああ、そっちの問題が出たか……」


 ヨハンさんに言われ、前線の部隊に対して、物資が足らなくなり始めたことに気づく。

 我々の戦力は僅か数日で、約5倍以上にも膨らんでいたのだ。


 ……このことは逆に、後方の補給線には、5倍の負担がかかることをしていたのだった。




「敵襲!」

「後方の輸送艦がやられました!」


 ……げげげ、



 戦いは一筋縄にはいかなかった……。

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