第120話……リーゼンフェルトの脅迫

『目標、進路前方惑星!』

『エネルギー充填100%……』

『……エネルギー充填180%!』


『惑星破壊砲、発射!!!』


――ズシャアァァァ


 惑星破壊砲から放たれる閃光と共に、帝国主星バルバロッサが砕け散る。

 周辺宙域を航行していた宇宙船を、多数巻き込んで……。


『諸君! 我々は友邦以外に容赦はしない! 敵対するものは、このような悪夢を見るだろう!』


 最後に、高らかに笑うリーゼンフェルト上級大将が現れ、映像が終わる……。



――この映像はカリバーン帝国全土に何度も流された。

 逆らう星系には、同じような目に合わせることを示唆した、強迫じみた政治的な宣伝だった。



 しかし、この政治的宣伝により、帝国のほとんどの星系がリーゼンフェルト上級大将の属する旧帝国派に臣従することになった。


 当時、バルバロッサにいたはずの皇帝パウリーネの行方が分からなかったのも大きい。

 新帝国政権の主要スタッフも行方不明だった。


 この事件により皇帝パウリーネ派の星系は、辺境自治星系国家と蛮王様のエールパ星系だけとなった……。




☆★☆★☆


――標準歴元年四月。


 クレーメンス公爵元帥は、パウリーネの弟であるアルフォンスを擁し、再びカリバーン帝国の主となった。


『辺境に巣食うヴェロヴェマは逆賊である!』


 ……帝国全土への公共放送で、私は逆賊扱いされた。

 まぁ、先日に彼らと戦っていたのでやむを得ない事情ではあるが。


――PIPIPI

 アラームが鳴る。


 (。´・ω・)ん? 

 ……何だろう?


【警告】……栄養不足です! ゲームのやりすぎにご注意下さい。



 私は急いで、この世界からログアウトしたのだった……。




☆★☆★☆


 流石は製薬メーカーが作ったVRカプセル。

 体調が悪くなると、連絡が来るのだ。


 私は地球がある世界に戻り、コンビニ弁当を2つ平らげた後、カップ麺を啜った。

 お腹がとても減っていたのである。


 体重もいくらか減っている。

 運動もしなくては……。



――ピンポーン

 来客だ。

 ……誰だろう?


 ドアを開けると、来客は兄だった。



「おう、カズヤ!」

「あ、兄ちゃん、どうしたの?」


「小池勝議員が寝込んだらしいんだ、何か知ってるか!?」


 ……あ、バルバロッサのあるツエルベルク星系に送ったのを思い出す。

 被害に巻き込まれたのかな?



「……えっとね、実は、……」


 ……兄に最近の事情を説明した。

 小池勝議員が帝国首都に外交交渉に行ったであろうことと、首都星が惑星破壊砲で吹っ飛ばされたことも……。



「……ふむう、カズヤも大変なんだな」

「え? でもね、もうすぐS級提督になれるんだ!」


「S級? 人殺しの職にS級なんてあるのか?」

「……あ」


 ……青天の霹靂だった。

 確かに、人の犠牲の上に立つ人間にS級とかA級とかあるのかと聞かれれば、多分答えはNOだ……。



「いや、すまん、カズヤは頑張ってるもんな」

「ううん、兄ちゃんが言っている方が正しいと思う……」


「だけど、カズヤは段々と向こうの住人になっていくなぁ……」

「そうかな?」


「向こうの世界の話をしている方が生き生きしてるぞ!」



 ……なにはともあれ、兄と久しぶりに話をしたのが嬉しかった。




☆★☆★☆


「ぺっ」


 捕虜になった兵に、唾を吐きかけられる。

 私は降伏した第九惑星地上軍の指揮官を引見していた。



「このクソ巨人野郎!」

「今回だけのことで、勝ったと思うなよ!」


 ……とても降伏した態度とは思えないが、人族以外を正当化できない政治思想が彼等にはあった。

 思想は自由であり、正義はその人たちの立場の数だけあった。

 私達がネズミや虫にも、社会保障や人権を与えるかと言えばNOなのだし……。



「きびきび歩くポコ!」


「こ、このタヌキ……、チクショウ!!」


 タヌキ砲術長が捕虜の手続きを素早く裁く。


 彼等第九軍の捕虜はなんと5万名以上。

 食べさせていくだけでも大変だった……。




――PIPIPI

 長距離通信が入る。

 メインモニターを開くと蛮王様だった。



「お~い! こっちへ守備部隊はいつ来るんだ!?」


「……あ、はい、スイマセン!」


 ……帝国領に孤立したエールパ星系を見捨てるわけにはいかない。

 しかも、蛮王様には消しきれない恩もある。

 当然、守備部隊は派遣するつもりだ。


 しかし、カリバーン帝国の過半を手にしたリーゼンフェルト上級大将の率いる戦力を考えれば、我々は劣勢だった。

 しかも、相手には新兵器の惑星破壊砲がある。


 もし、惑星の地下に立て籠もって戦えば、惑星ごと吹っ飛ばされることが予想された。


 ……今までの防衛戦術は通用しない。

 かなりの思案のしどころであった。




「エンジン始動!」

「全エネルギーを推進力へ!」


「高速航行モード、了解!」



 とりあえずハンニバルは、急いで蛮王様のいる惑星リーリヤに向かった。

 大型の旗艦らしき船が来れば、惑星リーリヤの民衆を安心させる効果も狙ったのだった。




☆★☆★☆


【DATE】


艦名・ハンニバル

艦種・装甲戦艦

全長・800m

艦艇形式・双胴型航空戦艦

乗員・180名(士官20名・下士官以下160名)


主砲・50.8cm連装高出力ガンマ線ビーム収束砲塔*10基

副砲・20.3cm連装電磁砲塔*16基


高射角重粒子単装ガトリンク砲*108基

3連装対空レーザーバルカン砲*84機


ミサイル・108セル多目的VLS*48基

電磁カタパルト*二基


搭載機・常用48機、補用6機

及び、小型揚陸艦4隻


特殊砲・マイクロ・クエーサー単装砲*一基


防御・重力シールド及び、電磁障壁発生装置

主機・エルゴエンジン*4基


その他・内蔵型ドック

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