第118話……クリームヒルトの憂鬱(※)

 今日の副官殿は私の膝の上。


 ……彼女の銀色のサラサラした頭髪を優しくなでる。



――彼女は悩んでいたのだ。


 帝国人民としての人口に、彼女たちバイオノイドやアンドロイドの人数は含まれない。

 しかし、人口10人に対し、アンドロイドは召使いなどに2人いると言われている。


 軍の兵としても存在するが、下士官になるまでは人数に入れてもらえない。

 惑星地上軍の中で存在するアンドロイドは2割と言われている。

 その中でも危険な機雷除去などの担当に回されるのだ……。



 ……そして、彼女の妹が本日戦死した。


 同期生産されたバイオノイド100体の内、今も健在なのはたった1体のみだった。

 一体とは、彼女のみになったということである。


 ……それだけ過酷な扱われかたをされる運命だったのだ。

 それゆえ、彼女はアンドロイドが平和に暮らせる自治領の拡充に勤しんでいるのだ。



「……もっと貯金をせねばなりませんわね!」


 彼女は涙を拭く。


「これを使っていいよ」


 そんな彼女に、私はへそくり用の通帳を差し出した。

 それは、いざという時の為にためていたものだ。


「え!?」

「クリームヒルトさんのお陰で、私は今や不肖にも大将閣下になることができた。それくらいお安いものだよ……」


「……う、うれしい」


「……え?」


「はずかしいから、二度は言えませんよ」


 少し涙が流れる彼女の頬は、いつもより桜色だった気がした……。


 彼女の頭を撫でる。

 その日の私は、とても幸せだったと記憶している……。


 ……窓の外の銀河は今日も奇麗だった。




☆★☆★☆


 今日は久々に地球でのアパートで起きる。

 もはやどこが我が家なのか分からない現状だ。


 郵便受けを漁り、やかんでお湯を沸かす。

 シャワーを浴びた後。PCをつけて、自分の情報を見る。



【DATE】


名前・ヴェロヴェマ


提督レベル・AAA級【UP】

称号・アンドロイドたちの英雄【NEW】


特定スキル・羅針眼

A級スキル・魔眼

S級スキル・邪眼


乗艦・装甲戦艦ハンニバル

階級・大将

爵位・子爵

領地・衛星アトラス、衛星ガイア、惑星ベル、準惑星ツーリア


艦隊戦スキル・A+【UP】

艦載機戦スキル・A【UP】

白兵戦スキルC

内政スキル・AA【UP】

艦船設計スキル・S【UP】



…………。

……。



 ……!? アンドロイド達の英雄ってなんだ??



 その後、海鮮を買ってきた一人鍋をつつき、奮発して買った吟醸酒を熱燗にした。

 贅沢なんだけど、一人だとなんだかおいしくないね……。




ピンポーン


 ……こんな時間に誰だろう!?

 ドアを開けると、小池勝議員の登場だった……。



「君ぃ! 帝国に反乱を起こすとはどういう了見だね?」

「N国民として恥ずかしくないのかね!?」


 いきなり部屋に上がり込み、まくし立てられる。



「いえいえ、私は悪くないんですよ!」

「なんだと!? 説明したまえ!」


 小池勝議員にどちらが帝国の正統政府かという説明を行う。

 リーゼンフェルト帝国たちの方が反逆者だと。

 ついでに、私もそこそこの地位に就いたことを話した。



「……本当かね? 君!?」


「本当だと思いますが?」


 議員は懐疑的な雰囲気だった。

 まあ、目の前の小僧が、宇宙艦隊のNO3だと聞いて素直に信じる人もいなさそうだが……。


 その後、議員はクリームヒルトさんに電話して、納得したようだった。

 ……むしろ、私に聞く必要なんてないよね (´・ω・`)



 議員は少し改まった感で、



「……でだな、帝国軍はいつ地球を解放してくれるのかね?」


「えと、当面予定はありません」


「馬鹿な!」


 議員は怒るが、もはやアルデンヌ星系が我が帝国領ではないのだ。

 ルドミラ教国の支配下であることを説明する。



「早く取り返えさんか!」


 大声で怒られる。

 流石に腹が立ったので、



「私ではなく、リーゼンフェルト提督に頼まれてはいかがでしょう?」


「そうだな、そうする! 君のような若造に頼んだ私が悪かった!」

「失礼するよ!」


 議員は秘書を連れて、怒って帰っていった……。

 秘書さんはちゃんと今回も一万円をこっそり置いていってくれた。


 ……うん、よくできた秘書さんだな。苦労してそうだ。




☆★☆★☆


「悪かった! この通りだ!」


 数日後、玄関に小池勝議員が登場してくるなり、謝られた。



「まぁまぁ」


 玄関で大声を出されても困るので、なだめる。

 どうやら、リーゼンフェルト提督と話して揉めたらしかった……。


 彼等はアルデンヌ星系どころではないだろう。

 ましてや地球のことなど、どうでもいいに違いない。



「……出来たら、帝国の要人を紹介してもらえないだろうか?」


 そう言い、私のズボンのポケットに沢山の一万円札をねじ込んできた。


 ……こ、これが政治の力か!?



 お金の力に負けたわけではないが、後日にゲームの世界で、議員のアバターを再びツエルベルク星系までハンニバルで送っておいてあげた。


 ……あとの交渉は自力で頼むぞ。




 頂いた一万円で、地球のほうのステーキハウスに、生れてはじめて行ってみた。

 結果はおいしゅうございました……。


 ……その後、ゲームの世界でも、みんなをつれてステーキハウスに行ったのだった。

 やっぱり、みんなと食べる方が美味しいね。

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