第14話……サーベイ商会船団
――レーベン宙域。
「艦長! レーダーに巨大質量捕捉!」
中型商船6隻を護衛する重巡洋艦ハンブルクの艦橋にて、オペレーターが叫ぶ。
「小惑星か? 方位は?」
「左前方より急速接近中。金属反応はありますが、シールド反応はありません」
艦長の男性は、額の汗をぬぐい一瞬思案した後、断を下す。
「やむを得ん、主砲にて迎撃せよ!」
「待ってください、艦長!」
副官らしき女性が、艦長を制止する。
「ここは中立宇宙空間ですよ!? 相手は重力シールドも張っていませんし……」
「ではどうせよというのか? ぶつかってしまうぞ!?」
ここレーベン宙域は、カリバーン帝国とグングニル共和国との緩衝地帯で、中立協定がなされた宇宙空間だった。中立協定区域においては、シールドを張っていない相手に対して先制攻撃を行ってはいけない決まりがあった。もし金属体が有人船であったなら攻撃はできない。
ハンブルクの艦長は髭をさすりながら再び思案し、つむっていた眼を見開いた。
「かまわん破壊せよ、証拠を残さねば問題になるまい! 跡形も残すなよ」
「了解! 一番砲塔、二番砲塔、自動偏差射撃開始!」
輸送艦六隻を護衛する重巡洋艦ハンブルクは、未知の金属体に次々に主砲塔からレーザービーム砲を浴びせた。
未知の金属体にレーザービームが次々に命中し、金属体表面が衝撃で引き裂かれ、熱で融解し蒸発していった。
……が、しかし、その金属体のすべてが宇宙の藻屑に至る前に、重巡洋艦ハンブルクの左舷前方に突き刺さった。
凄まじい衝撃が走り、ハンブルクは電子戦装備やシールド発生装置が故障する大損害を受けた。
その後、どこからともなく大量のミサイル群が飛来し、ハンブルクと輸送船6隻は大破炎上した。
――その6時間後。
グングニル共和国国境警備艇が駆け付けたころには、輸送船ごと強奪された後だった。
☆★☆★☆
「上手く行ったポコね~♪」
「流石は旦那様~♪」
皆が褒めてくれる。
……というか少し違うな。二人とも鹵獲の輸送船を美味しそうに眺めていた。
私はお愛想だけかと、少し拗ねる。
今回の作戦では、我が衛星アトラスで大量に産出されるミスリル粗鋼をハンニバルの前部に大量にくっつけていた。もう前が見えないくらいに。
もともとハンニバルの筐体は頑丈だったこともあり、計算上は重力シールドなしで相手の砲撃に耐えられる計算ではあったが、かなりのヒヤヒヤモノだった。
正直もう二度とやりたくない……。
レーダーを使ってしまうと相手に早期警戒されるので、敵の重巡洋艦ハンブルクを私の【美味しいリンゴを見分ける眼力】で捕捉し、肉眼のみで航行し激突させた訳だ。
艦をぶつけた後は、敵の詳細な位置を後方の小惑星帯で待つマルガレーテ嬢の【オムライス】に知らせ、対艦ミサイルの雨を降らせて貰ったという訳だ。
敵乗員を捕縛し、七隻全部を強奪に至った。
実はこの輸送船団、マルガレーテ嬢の政敵であるサーベイ商会のもの。
しかし、恨みがあるからと正面切って襲うと、国家間の戦争になる可能性があった。
よってわざわざ事前に情報を詳細に調べ、綿密な作戦を立て、一週間も前からこの中立区域で息をひそめていたのだ。
正直なところ、相手がこなかったらと、心配になり始めたところの遭遇戦だった。
しかし戦利品は大きかった。我々の小世帯に輸送艦六隻の積み荷は過分だと思う。蛮王様にも一隻分を情報代の分け前として渡そう。
……きっと重巡洋艦も修理したら使えそうだよね。せこくてゴメン (ノ∀`)
その後、マルガレーテ嬢からビデオ通信が入った。
少しは喜んでくれるかな……。
今回は彼女の為の作戦でもあるしね。
「司令! 貴方にツイテきてよかったわ❤」
再びの爆弾発言に、タヌキ軍曹殿とクリームヒルトさんの視線が痛かった……。
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