人生に疲れたおじさんが、世界に絶望した少女と逃避行する物語。
より正確には、高校生の少女から「私を誘拐して」とお願いされてしまうところから始まる、現代もののドラマです。
なかなかとんでもない状況なのですけれど、なおすごいのはやっぱり「それをわりと即決で実行してしまう主人公(おじさん)」。
この、「それほどまでに追い詰められていた」感。
仕事でボロボロに破壊された男性の、その限界っぷりが読んでいてとても素敵(と言っては悪いのですけれど)でした。
ある種の黄金パターンというか、「疲れた社会人男性が女子高生を拾う」という定番または王道のお話なのですけれど、個人的に好きなのはとても話の早いところ。
物語開始時点で既に面識があるどころか、過去に結構深い関係まで結んでいたりして、でも高校生であることは知らなかった、という状態。
つまり「平素の、本来の彼女」とは初対面のような形になって、ちゃんと「物語の始まり」としてのドラマ性がありながらも、しかし最短でふたりの関係性が成立するという、この話の早さと飲み込みやすさがとても好きです。
もちろんその先、期待されるであろうものもしっかり詰まっています。
いろいろつらかったり大変だったりする中で、人生について考えたり語ったりして、そして最後には前向きになる物語。
王道というか、望むものをきっちり提供してくれるお話でした。