いとなみ-3
しばらく石畳みの道を歩くと、木造のログハウスが見えて来た。ここからヨーロッパの建物が並ぶエリアだった。
次第に石造りやレンガ作りの建物に移り、文明開花の音がしたような感じがした。しかし…
カンナ「ねえ陸唯、ここロンドンやエディンバラ、パリより綺麗じゃない?」
陸唯「確かにな、もっとゴミとか落ちてたぜ。」
祐希「そうなの?パリとかパーペキに綺麗だと思ってたのに」
どうやら、日本人の職人気質な所がよく現れているようにイギリスから来たグラバー姉妹は感じたという。
このエリアには、国内外の人気なお店が軒を連ねているスイーツ激戦区でもあった。特に、キラ=フォベンというお店が最近人気なようだ。
光音「梅がや餅美味しかった、次は洋のお菓子食べよう!」
光隆「一走りしたからお腹空いたよ」
陸唯「お前ら俺たちが長野のブースとか行ってた時どこ行ってたんだよ」
光隆・光音「中央公園でジョギング」
陸唯「お前らなぁ…」
興一「注文するけど何が良い?」
光音「ピーチタルト食べたいです。母さんや家族と食べた味だから…」
興一「光隆は?」
光隆「うーん、じゃあ光音と同じで」
祐希「ちょい待ち、桃の旬はあともう少し先なのでは?」
興一「良い質問ですねぇ」
掛瑠「(池○さんの真似やめろ)」
興一「敷島第1メガフロートにある最強の設備、全季節対応作物育成システム農園で育てられた桃を使っているんだ。この季節でもうスイカも出せれるんだ!」
光隆「科学の力って、すげー‼️」
光音「海護財団、そんな事まで?」
…………
……
光隆「モーモタル!モーモタル!」
光音「モーモタル!モーモタル!」
祐希「掛けちゃんやるよ、モーモタル!」
掛瑠「流石に恥ずか…モーモタル!」
陸唯「即堕ち2コマやめろや」
興一「まあまあ、それよりも陸唯のも美味しそうだね」
カンナ「いっつも誕生日ケーキはチーズケーキだもんね、陸唯。」
チョウナ「メロンパフェェェェイ‼️」
一同「いただきまーす!」
光隆「うまい!」
光音「これが、モモタル…これが」
光隆「でもさ、光音。俺モーモタル1年中食べれるって言われてもさ、それ季節の楽しみが無くなる感じになっちゃうんじゃねえかって思うんだ。」
光音「…花鳥風月、光隆はこう言うの全力で楽しむタイプだよね。私もそういう風流なの、すごく良いと思うよ。」
興一「(そういう風に考えるのか…僕もまだ、真のノブレスオブリージュには到達していなかったと言えるな。)」
??「人のニーズは其々なのだ興一」
興一「え?」
弓張政一「サボりか?ここは俺の行きつけでもあるんだが」
弓張政一、弓張家107代当主。今は当主は名乗っていても実質実権は都姫に譲っており、この敷島で余生を過ごしているようだ。
政一「ニーズは人其々だが利益を最大にする戦略を立てねばならん、その一つに地域や季節限定のデザートなどを置くのもまた良いだろう。万人受けなど狙っていたら、幾ら弓張重工と言えど海護財団と言えど音を上げるのだ。」
興一「経営論…全てをカバーできないなら、一体どうすれば?」
政一「お前の1番苦手な事だ、自分一人で背負い過ぎるなよ。」
カンナ「弓張家再興の祖、生ける伝説か…」
光音「そんなすごい人だったの?」
カンナ「貴女が知らないなんて思わなかった」
光音「弓張家と交流があったって言っても、親の仕事付き合いってだけだった。でも何か都姫さんはボールペンくれて、今も使ってる。」
祐希「あんま内情探る様な事言うのはよした方がいい気がするよ、」
光隆「早く食べないとケーキ食べるぞ?」
三人「食べるから待って」
陸唯「仲良いなぁお前ら」
掛瑠「調べた所政一さんは弓張重工の最盛期を作り出し、この敷島の街を作り海護財団設立に貢献した存在のようです。」
光隆「はえー、都姫さんからも聞いたけど凄いんだなやっぱり。」
………
興一の一族、弓張家の凄さを政一の存在から認識した一同は店から出てエリアサマルカンドに到着する。ここはイスラム文化のエリアの中でも、トルコ・中央アジア系だけでなくインドの様な様式もこのエリアには存在する。
陸唯「うわぁすげぇ!」
光隆「町中カレーの匂いがする!」
興一「このエリアサマルカンドは、中央アジアから西アジア、そしてインドの文化や工芸品、建築様式を残す為に建てられ…ってちょっと待ってよ!」
興一が解説を終えないうちに、一同は散開してしまっていた。
カンナ「光音、これ見て!」
光音「ええ!?」
チョウナ「そこで光音が目にしたものとは…」
沢山の煌びやかな宝石、かつてのシルクロードの街が現代に蘇ったかの様なこの街ではなるべく当時の様な売り方で売られるようになっている。
光音「凄い綺麗なイヤリング…」
カンナ「母さんが付けてたピアスより高そう」
祐希「流石に貴族のお召し物より高い訳…あれチョウナ居ない」
チョウナ「わぁ凄い、チヌが居ますわ!」
この好奇心旺盛腕白ミリオタお嬢が…と言われそうな感じで好奇心が色々な方向に向かっていた。
光隆「ふぇ、ふぬがふふんは?(え、チヌが居るのか?)」
そこにチヌに反応した光隆がカレーを食べながらやって来た。だが彼らの目の前に居たのは小型の潜水艇だった。
光隆「潜水艇か?あれ」
チョウナ「mod2040式潜水艇、通常チヌ。海護財団版まるゆと言われている存在ですわ。」
光隆「ほはえいろいろひっへんは、はへふひはいひ(お前色々知ってるな、掛瑠みたいに)」
陸唯「おいおい、せめて口に入れてるもの飲み込んでから話せよ…」
各々満喫した所で興一は、第四フロートに繋がる橋の近くで合流をかけた様だ。いの一番に到着したのは掛瑠だった。
興一「どうだい、この街は」
掛瑠「いい感じの紅茶とコーヒー豆をゲットしました」
興一「よかったじゃないか、でも君は好きなものを買わなかったのか?」
掛瑠「良いんです、特にほしいものなんてありませんでした。」
興一「なるほど、お茶やコーヒーを淹れてみたいんだな、焙煎やドリップするのを父さんから借りないとだね。」
掛瑠「…はい」
興一は、掛瑠の心の奥底の得体の知れない何かを垣間見たように少し狼狽えた。しかし興一は強引な話を変えた。悟られない様に、そんなものは杞憂だと自分を誤魔化す様に。
そこに光隆達がやって来た。
光隆「お待たせ!」
興一「どうだった?」
光音「かなり新鮮だった」
興一「そうかそうか」
陸唯「所でこの橋の先、第4フロートはどんな特徴があるんですか?」
興一「それは…」
興一は言葉を濁しながらも、その全長200mの跳ね橋をトコトコと歩いてゆく。
そして、対岸の橋を眺望できる展望台へと登るとベンチに座る。
興一「この町は普通の町なんだ。みんながただ日々の日常を過ごす、そんな町だ。海護財団が守ってるのは、単にあの様な文化だけではない。」
興一からは、まさに歴戦の武士(もののふ)の雰囲気が漂っていた。
掛瑠「かつての防人や武士の時代からそうでした。武士、とりわけ国衆は土地を守る事と人を守ることはイコールでしたね。」
興一「そうさ、かつては主君の権威でそれを守れていたから忠義を尽くす事が土地や人を守ることにつながった。」
光隆「駄目だ、さっぱり分からん」
興一「光隆、君は何を守りたい?何のために戦う?」
光隆「俺には、まだ考えられない」
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