未定。

魅花。

第一章 出会い

「今日で一学期は終わりだ。明日から夏休みに入る。羽目を外しすぎないように気を付けるように。いいな」


 担任がそういい終わると、学級委員が『気を付け、礼』と言う。

 明日から夏休み。

 そのため、急いで帰って遊ぼうとしている人や、『明日からみんな休みなのに俺は部活あるわ』と嘆いてる人、放課後の教室で喋っている人などがいる。

 俺も早く帰って家でゆっくりしようかな。

 学校指定の鞄に教科書を入れる。

 鞄を持ってみると、ほとんどの科目の教科書を入れたせいか重い。

 もう少し教科書を教室のロッカーに置いてから帰ろうかな。

 特に勉強をするわけじゃないし。

 そう思いながら、鞄をもう一度机の上に置く。


陽翔はるとー。早く帰ろうぜ」

「うおっ。りくか」


 急に喋りかけられたため、少し驚いてしまった。

 どの教科書を持って帰るか悩んでいたため陸がいたことに気づかなかった。


「もしかして、今ビックリしたん?」

「してないわ」

「ふーん。ツンデレか?」

「どこにツンデレ要素があったんだよ」


 笑いながら突っ込む。


「そういえば、陽翔。もう一つビックリする事があるぜ。実は俺、彼女できたんだよね」

「おー。とうとう陸に彼女ができたのか。おめでとう」

「あれ、思ったより驚かなかった?まあ、いいや。ありがとう。でも、陽翔はイケメンだからなー。俺みたいに苦労しなくても彼女できるよ」

「イケメンじゃないよ。あと、恋愛とかあまり興味ないんだよな」

「そうなんだ?高校生なんだし、青春しようぜ」

「俺は充分、青春してるつもりだよ」

「そうかー?」


 陸とは小学校の時からの付き合いで、夏祭りやクリスマスなどのイベントは一緒に過ごしてきた親友みたいな仲だ。

 時々、喧嘩をするけどすぐに仲直りになれる。

 しかし、陸にも彼女ができてしまった。

 おめでたい事だが、陸と一緒にいる楽しい時間が少なくなってしまう。

 まあ、仕方ないか。

 俺も彼女まではいかないと思うけど、出会い探してみるか。


「おーい、陽翔。ボーっとしてどうしたんだ?」

「いや、陸と一緒に遊べる時間が少なくなるなーって」


 一瞬、陸がキョトンとした顔をした。

 そして、何を言うかと思ったら大爆笑された。


「あー面白い。陽翔おもしろすぎ。そんなこと考えてたのか」


 そういうと、また笑いに耐えきれなくなったのか笑い始める。


「もう、笑うなよ。あんな事言った俺が馬鹿だったわ」

「あー、怒んなって。陽翔にも時々、構ってやるからさ」

「俺はお前の子どもじゃないぞ」


 そんな会話をしながら、顔を見合わせて笑う。

 やっぱり陸と喋る時間は楽しいな。


「あ、そうだ。俺も暇なときに使ってるんだけど。えーっと、ちょっと待って」


 そういうと、陸がポケットからスマホを取り出した。

 そして、アプリストアを開き、『暇人掲示板』とかかれたアプリを俺に見せてきた。


「この暇人掲示板っていうアプリ面白いから入れてみなよ」

「俺を暇人扱いしてるのか」

「違うわ。リアルタイムで暇な人同士で、チャットしたり、通話したり、ゲームしたりするアプリなんだけど俺と遊べない日とかに使ってみればって思っただけ」

「なんで、わざわざ俺に?」

「悲しそうに『陸と一緒に遊べなくなる』みたいな事言ってたから、教えてた」

「もう、その話はおしまいだろ?別に悲しくないからな!」

「ツンデレ?」

「ツンデレじゃないわ!」


 笑いながら、『ツンデレじゃない』と否定する。

 教科書を数冊もって、教室の後ろにあるロッカーの方に向かう。


「陽翔」

「ん?」

「あまり言いたくないけど、実は、俺、このアプリで彼女できたんだよね」


 今の言葉には、さすがに驚いた。

 陸は、だれがどう見ても陽キャだ。

 友達も多く、バイトもしているためネットで彼女を作ったとは思わなかった。


「流石に、今のは驚いたね?」

「まあ、な。陸のことだからバイト先とかで彼女作ったのかと思ってたよ」

「バイト先にも、かわいい女子高生とかいるけど、みんな彼氏持ちなんだよね」

「あー、そういうことか」

「そうそう。時々、『見てみてー』って言われてリア充の写真を見せつけてくるから見返すために彼女作った」

「そんな理由で、ふつうは彼女作らないぞ」

「嘘だわ。チャットしてたら趣味とかが合って仲良くなった。そこから発展していった」

「へぇ~。青春じゃん」


 そんな会話をしながら、ロッカーに教科書を置く。

 そして、鞄を持って陸と二人で教室を出る。


 *


「お姉ちゃん、ただいま」

「陽翔、おかえり~」


 今は、両親が結婚記念で一週間、海外旅行に行っている。

 そのため、お姉ちゃんと二人しか家にいない。


「陽翔、お風呂とごはんどっちにする?」

「んー。どっちにしよう」


 さっぱりした後にご飯にするか、ご飯を食べた後にゆっくりお風呂にするか。

 迷う。


「陽翔の優柔不断は、まだ健在なんだね」

「うるさいぞ。お風呂でいいよ」

「りょうかーい」


 そういうと、お姉ちゃんは風呂場に行って、掃除を始めた。

 俺も自分の部屋に戻るか。階段を上って、自分の部屋に入る。

 そのまま、ベッドの上にダイブ。鞄を開けて、スマホを取り出す。


「えーっと、何しようかな」


 陸は、彼女と一緒に少し離れたところで開催されている夏祭りに行くらしい。

 俺も陸と行きたかったが、さすがに二人のプライベート空間にいるのは気がひける。

 そういえば、陸が勧めてくれたアプリがあった。

 アプリストアを開いて『暇人掲示板』と検索する。


「これか」


 暇人掲示板をタップして、インストールを押す。

 インストールが終わり、『開く』を押す。

 アプリを開くと、ニックネームや年齢、趣味などを記入する画面が出てくる。


「ニックネーム何にしようか」


 ゲームをするときとは別の名前にしたい。

 んー。陽翔の陽でいいか。

 漢字だと読みにくそうだから、カタカナにしよう。

 記入し終わると、今、暇だと思われる人が並んでいる。

 通話相手を募集している人や一緒にゲームする人を募集している人、通話ができないからチャット機能で会話相手を探している人などいろんな人がいる。

 下にスクロールしていくと、数秒前表記が数分前表記に変わっていく。

 上に行けば行くほど、直近のモノになるらしい。


「んー。誰と話そうかな」


 まあ、ここは運任せにしようかな。

 一旦、アプリを落とし、ブラウザを開く。

『ルーレット』と検索して、1から20まで記入する。

 ルーレットを回す。


『14』


「14だから、上から14番目の人と話すか」


 ルーレットを回し終わったら、『暇人掲示板』をもう一度開く。

 そして、一番直近のモノから順番に数える。

 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14。


『暇です。通話ができないので、チャットがしたいです。』


 この人か。

 プロフィールに行き、『話す』と書かれたボタンを押す。

 すると、よく見るチャット画面に移動した。

 とりあえず、挨拶でもするか。


『チャット失礼します!よろしくお願いします!』

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