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自分が何者かを知っている相手といるのは気が楽だ。ここ数百年のあいだ、そうした機会は絶えてなかった。
五人か十一人、ときにはそれ以上の人間を前に、ひと口も手をつけていない八皿を食べたように思わせるのは、結構な労力なのだ。酒がメインの席でなら、飲んでいようがいまいがお構いなしなのだが――目的がべつということも往々にしてあるし。
私は文字どおり
もうひとつ、帰路、ティーポットの中でうたた寝するヤマネのような、彼の姿がちらと目に入ったときにおぼえたのは、一瞬、全身が
アームレストに頬杖をついて、何事か沈思黙考しているように
ビールの数本程度でそれほど酔ったとも思えないが、法衣の
吸血鬼は人狼ほどには鼻がきかないが、昔よく嗅いだ香の匂いに混じって、香水ではないかすかな匂いが立ちのぼる。
マクファーソン神父はめずらしく体臭の薄いほうだが、これはそれに加えて、闇の世界の住人が非常にそそられる
そんな相手がすぐ手の届く
タルクィニウスが美しくも貞淑なルクレツィアに抱いたそれは、たいていの男――キリスト教の教父たちも含めてだ――なら理解と共感を示すはずだ。聖アントニウスが激怒した原因でもあるが、それは相手のせいではなく彼自身の問題だということに、聖者はついに思い至らなかったらしい。
その正体を知っていたので、私は聖句を唱える代わりに、アジア市場の株価の推移と
彼の姿が司祭館へ消えてから、思わず笑い出さずにはいられなかった。私はウォーレン・バフェットより気の長いほうだと思っていたが、自己認識を改めるべきなのかもしれない。
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