第13話

 クリスマスイヴがやってきた。俺は予定より十分以上早く集合場所に着く。そこは今日のデート場所、遊園地だ。


 入口で時間を潰しているとこちらに走ってくる足音が聞こえてきた。


「ごめんおまたせー!」

「いや、俺もついさっき来たところ」


 時間を見ればまだ集合時間の八分前。未来みらいも結構早めに来てくれたんだな。


「うー……デートの時はいっつもトモ君が私を待ってるよね。たまには私が先に着いて待ちたいよ」

「そうか、じゃあ今度はギリギリに来た方がいいのか?」

「それはなんか違う。トモ君はいつも通りでいいの」

「そういうものか」

「そういうものなんだよ。だから、もう行こ」

「そうだな」


 予め買っておいたチケットを未来みらいに渡して受付へ向かう。


 これは明人あきとに言われたことの一つ。今日みたいなクリスマスイヴというイベントだとチケットが買えない場合もあるので事前に買っておくこと。


 実際、今は売り切れてるらしいので本当に助かった。


 無事に入場し事前に話していたジェットコースターの列に並ぶ。この後は……


 未来みらいに、いや未来みらいの服に目を向ける。


 デートするなら確実に未来みらいの服を褒めること。


 これも明人あきとに言われたことだ。確かに未来みらいの服は気合を入れているように感じた。


 モコモコしていて暖かそうな白いアウターにチェック柄の黒いロングスカート。今までのデートで一度も見たことのない服だ。


「今日の服って新しく買ったのか? 凄く似合ってるよ」

「ほんと? 実は今日のデートのために友達と買ってきたんだ。……トモ君はこういう服が好き?」


 自分の服を確認するように見ながら聞いてくる。


未来みらいの私服って毎回似合ってるからそれだけが好きとは言えないなぁ。俺ファッションとか分からないし」

「あはは、トモ君らしいね。でも今日のトモ君のファッションもカッコイイよ」

「ならよかった。明人あきとに色々とアドバイスしてもらいながら買ったんだ。彼女は可愛いのに彼氏がかっこ悪いっておかしいだろ?」

「あはは、気にしすぎだよ」


 未来みらいが俺の顔を見つめると頬を赤らめる。


「トモ君は顔だってかっこいいんだからさ」

「そ、そうか……」


 俺が恥ずかしくなり顔を逸らした。いつもは俺が褒め、未来みらいが照れて終わりなのに今日はカウンターを食らうとは。


 ほんと、案外恥ずかしいなこれ。傍から見ればバカップルみたいだ。


 しかし辺りを見渡しても男女のペアばかり。彼らも楽しそうに話し合ったり幸せそうに笑いあったりと周りを気にする様子がない。


 ……なら俺たちもいいか。


 順番がやってきて俺と未来みらいはジェットコースターの最前列に乗りこむ。静かに車体は進みだし空へ向かってゆっくりと上り始めた。


「なぁ未来みらい

「ん、なぁに?」


 手を繋ぐと未来みらいが震えていた。ジェットコースターへ誘ったのは未来みらいだがやっぱり高いところは怖いのだろうか。


 そんな未来みらいを安心させるべく俺は笑顔で言った。


「今日は目一杯楽しもうな」

「――うん!」


 そして頂上へ達し、一気に加速する。


 もちろん俺たちは誰の目も気にせず思い切り叫ぶのだ。

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