第11話

 ほんの一瞬の出来事。気付けば俺は地面に横たわっていた。


 どうして、なんて考えた時には遅かった。


「──ぅ……あ、あぁぁぁっ!?」


 全身に激痛が流れて悶える。叫びたくても上手く声を出せない。目をジッと閉じて痛みに耐えようとするが、容赦のない痛みで思考が纏まらなかった。


 何も分からない。体も思うように動く気配がなく全身が熱い。


 こんな痛み、これまでに経験したこともなかった。


 痛みに堪えながらも必死に目を開ける。そこで目にした光景に俺は痛みすら忘れた。


 俺の隣で未来みらいが倒れていた。頭から血を流し、明るい未来を映していた青い瞳は暗く、生気を感じさせない。


 嘘だろ、おい……未来みらい


 なんとか手を伸ばす。しかし伸ばした先に当たる未来みらいの腕は酷く冷えていた。


「うわぁぁあぁぁああ!!」


 思わず跳ね起きる。冬だと言うのに全身汗をかいていて気持ち悪い。


 夢だったことに安堵する。しかしこれが『予知夢』だと気付き頭を抱えた。


 そんなことあるのだろうか。こんなのただの夢で本当は起きないなんてこと……。


 否定したいのに、否定できない。お泊り会の件で『夢のまま』の状況が生まれないのは分かったが、『夢の出来事』が起きると知った。


 つまり今回の『予知夢』での予言は俺と未来みらいの死。


 カレンダーを見る。今日は12月20日のテスト返却日。翌日に終業式が行われ4日後にはデートがある。


 その日のデートを中止、いや今日と明日も休むか? でも未来みらいにはなんて言えばいい?


 馬鹿正直に『ここ1週間以内に死ぬから、外出しないでくれ』なんて言えるわけがない。


 しかし他に理由が思い付かない。どうすれば、どうすればいいんだ……。




 結局何も思い浮かばず今日は登校することにした。仮病で休んだ結果、未来みらいだけが死んでしまったなんて洒落にならないからな。


 駅まで迎えに行くべきか? それとも家から……は現実的に不可能か。


 時間には十分余裕があるので通学路から外れて駅に向かう。


 周囲に注意を向けながら歩いていくと未来みらいを見つけた。


「あ、トモ君! なんでこの道にいるの?」


 未来みらいが生きている。その事実に涙が零れそうになるが、グッと堪えた。


未来みらいを迎えに行こうと思ってな。一緒に登校しないか?」

「もちろんだよ! それじゃあ早く行こ!」


 腕を引かれ通学路に戻る。そのままいつものように歩き、話し、笑いあった。


 こんな俺たちが死ぬだなんて信じられない。でも今までの『予知夢』は見事に当たった。なら外にいる間、俺は最大限警戒していないと。


 どれだけ楽しくても気を緩めることは許されない。俺が未来みらいを守らないといけないから。

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